ヤマハから、ヘッドホンの新製品が2モデル発表された。オーバーイヤータイプの開放型と密閉型で、それぞれの型番、価格、発売日は以下の通り。
●開放型ヘッドホン:YH-4000 ¥426,800(税込、10月23日発売)
●密閉型ヘッドホン:YH-C3000 ¥305,800(税込、10月30日発売)
開放型ヘッドホン「YH-4000」
ヤマハは2022年末に、独自の平面駆動型オルソダイナミックドライバーを搭載したフラッグシップヘッドホン「YH-5000SE」を発売、その音質のよさとデザイン、装着感が話題を集めた。実際に国内外のオーディオ誌が主催する様々な賞を獲得している。今回の新製品は、その評判を受けて、より多くのユーザーニーズに応えるためのラインナップとなっている。
まず開放型モデルのYH-4000は、YH-5000SEの技術を継承し、「長く、時間を忘れて音楽の熱量に没入する」ことを目指したモデルだ。オルソダイナミックドライバーを搭載し、新たな音楽体験を提供する製品となっている。
オルソダイナミックドライバー自体はYH-5000SEとほぼ同様の仕様で、新規開発されたフィルターやイヤーパッドを組み合わせることで、より温かみのあるサウンドと情熱的で没入感のある体験を提供するそうだ。
フィルターとは、ドライバーの背圧を本体の外側に逃がすための開口部に取り付けられるもので、YH-5000SEでは平畳折のステンレス製が使われていたが、今回はPETメッシュフィルターとなっている。このフィルターはYH-4000で目指した音に最適な通気量を実現するために、目の細かさの異なる複数の候補から試聴を繰り返して選ばれたそうだ。
またサウンドチューニングの一貫として、ハウジング内の吸音材も削除、さらにオルソダイナミックドライバーについてもドライバー内の吸音素材がカットされている。
YH-4000には新開発されたイヤーパッドが付属している。筐体サイズは上位モデルYH-5000SEと同じで、イヤーパッドの互換性もあり
音色としては、YH-5000SEが全帯域でフラットな再現を目指していたのに対し、YH-4000ではノリの良さを意識して中域の密度感、実体感や低域の量感、パンチに重きをおいたチューンを施しているそうだ。ポップスやロック、ヴォーカル曲をメインで聴くというユーザーには、YH-4000の音作りが好まれるのかもしれない。ヤマハの担当者はYH-5000SEは “精密な音”、YH-4000は “親密な音” と表現していた。
ヘッドホンの筐体もYH-5000SEと共通で、二重構造のヘッドバンドや無段階スライダーも継承、約320gという軽さを実現している。これにより、YH-5000SEで好評だった装着性も受け継いでいる。本体カラーは黒と白、銀を貴重にしたシンプルな仕上げになっている。
もうひとつ、ヘッドホンで重要なイヤーパッド「HEP-5000LS」(単売時の価格は¥27,500、税込、10月23日発売)もYH-4000用に新開発された。耳に当たる正面部分にベロア素材、外周部に柔軟性の高いレザーを使うことで、装着時のウォーム感と音の解像感を両立したという。また全面にパンチング加工を施して、広がりのある音場を獲得している。
なおEHP-5000LSはYH-5000SEにも取り付け可能で、単品販売も予定しているとのことだ。同様にYH-5000SE用に販売されている「HEP-5000LE」(レザー素材)と「HEP-5000SU」(スエード)はYH-4000でも使えるので、イヤーパッドによる音の違いを楽しむのもいいだろう。
密閉型ヘッドホンの「YH-C3000」
密閉型のYH-C3000は、約10年間に渡って研究開発を続けてきた新しい振動板を採用したダイナミックドライバーを搭載、楽器メーカーであるヤマハならではの要素を持ったヘッドホンとして開発されている。
その新開発振動板には、ザイロン化繊混抄紙を使った三重構造素材が使われている。具体的には高剛性のザイロン配合層で軽量発泡層をサンドイッチしており、硬さと適度な内部損失、軽さを備えた振動板を実現した。
新開発振動板を搭載したドライバーは、アルモダイナミックドライバーと名付けられた。アルモとはArmonia(ギリシア神話の調和を司る女神)から名付けられており、帯域のスムーズなつながり、開放感と密度感の両立を実現できたとのことだ。
もちろん密閉型なのでドライバーを格納するエンクロージャーも重要で、ここにはヤマハらしくピアノにも使われているブナ材、中でも音の立ち上がりを良さや解像感に優れるドイツ産のブナが選ばれた。さらに約70年に渡って木材加工を手掛けてきた子会社で選定、加工を施している。その加工(木材からの削り出し)では自然な曲面を再現するのが難しいようで、熟練した職人によって実現されている。
なお両モデルとも、付属ケーブルは2.0m銀コートOFCアンバランスケーブルで3.5mmコネクタータイプ。6.3mm変換アダプターも同梱されているので、様々な再生機器と組み合わせ可能だ
YH-4000用のイヤーパッド(左)とYH−5000SE用のレザータイプ(右)
新製品説明会で両モデルの音を確認することができた。
まずYH-4000では、開放型らしい心地いいサウンドが確認できる。女性ヴォーカルののびやかさが心地良いし、楽器の配置もしっかり再現されている。クラシック楽曲などではもう少し低音感が欲しい気もするが、サウンドバランスとして不満はない。ディテイル再現に優れた音を楽しむことができる。
密閉型のYH-C3000は、一聴して音の情報量が多い。音場もクリーンで、キレがいいい。高域の伸びも自然で、ピアノのタッチも目に見えるようだ。女性ヴォーカルではノラ・ジョーンズの声のささやくようなニュアンスがリアル。落ち着いて音に集中できるまとまりと言えるだろう。
ヤマハが送り出すヘッドホン2モデルは、それぞれ異なる味わいを持ったモデルなのは間違いない。自分の好きな音楽ジャンルやリスニングスタイルに応じて選び分ける、そんなアイテムとして注目を集めるだろう。