戦後80周年平和祈念映画『ハオト』が、いよいよ8月8日(金)より公開となる。太平洋戦争末期、軍が統括するとある病院を舞台に、戦争という人の狂気を加速させてしまう外の世界と、ある意味平穏な状態の院内とのコントラストを鮮明に描いた作品となる。監督は、俳優、脚本家、映画監督、プロデューサーなど多彩な顔を持つ丈が務め、氏が得意とするコミカルシーンも織り交ぜながら映像化している。ここでは、前作に続いての丈監督作への出演となる倉野尾成美(AKB48)にインタビュー。演じた“真関智世”の役作りから現場での思い出、AKB48メンバーとしての今後の抱負までを聞いた。
――出演おめでとうございます。まずは、出演が決まった経緯を教えてください。
よろしくお願いします。丈監督の一つ前の作品『いちばん逢いたいひと』に主演で出演させていただいた際に、次の作品もぜひお願いしたい、という感じで監督から直々にオファーをいただきました。
――本作は、キャストも前作以上に豪華ですし、大作ですね。
そうなんですよ! 前作は初主演ということで、すごい緊張の中で撮影していたのですが、本作はもう、共演者のみなさんがとんでもないというか(笑)、すごい方々に囲まれているので、自分に務まるかなっていう不安も大きかったです。
題材としても、戦時中を舞台にしていることもあって、大変だろうなっていう先入感もあり、台本を一回読んだだけではなかなか理解も進まなくて、ドキドキしていたんです。けど、実際に現場に入ってみると、あっこういう意味なのかってどんどん分かるようになりました。
――監督からは、あらかじめ作品や役どころの説明はありましたか?
当初は“出てもらいたい”という感じで特に詳しい説明はなかったのですが、“なる(倉野尾)にはぴったりだと思う”って仰ってくださいました。その後、正式に出演が決まって、いろいろな資料が送られてきたという形です。
――本作でも、倉野尾さんの役どころでは、コミカルさを感じるシーンが多かったです。
前作でもコミカルなシーンがすごく多かったのですが、本作でも多かったです! 監督ご自身がとても明るい方なので、そのお人柄が作品にも出ているなとすごく感じました。
監督からは、張り詰めた戦時中という物語の中でも、私の出ているシーンは、ちょっと抜け感があるというか、見ていて休まる部分になると思うから、明るく分かりやすく演じてもらいたい、と言われていたので、それを表現できるように頑張りました。
――前作では初主演ということもあり、監督とは念入りに相談をされていましたが、本作ではいかがでしたか?
実は、前作とは違って本作では本読みがなく、そのまま現場入りだったので、クランクインは、すごくドキドキした気持ちで迎えました。
――読み合わせがなかった。
はい、もう初めて過ぎて、大丈夫なのかなってすごく不安でした。
――すると、台本を読んで自分が作ってきた役を、そこで初めて披露するわけですね。
そうなんです。だから、最初は大丈夫かな? 大丈夫かな? って思いながら演じていました。
――登場シーンから、少しオドオドした、ちょっと気の弱そうな女の子っていう感じを受けました。
真関ちゃんは、高島礼子さん演じる婦長にすごい憧れがあって、自分もそうなりたいと思っている子で、とにかく一所懸命に、ひた向きに、追っかけて頑張っているんです。けど、実力はまだまだで……。そういう役柄だと感じたので、まずは(婦長に近づくために)形から入ろうと思って(笑)、所作を真似てみる、というところは意識していました。
同時に、真関ちゃんは、気持ちや感情がはっきりと出るタイプなので、不安だったら不安な様子になり、どうしようって思ったらどうしようってドタバタしてしまうというように、いつもフルパワーで生きている。結構、活力に溢れている子だと思ったので、その表現は意識していました。
――前作では、役の感情の起伏の表現がたいへんだと仰っていましたが、本作では、最初から具えていたものが漏れ出すような感じなのでしょうか。
そうですね。だから、役柄としては難しいというよりかは、分かりやすい感じでしたし、監督からも、ベタにやっていいよと言ってもらっていたので、分かりやすく演じました。
――実際に撮影が始まって、監督から何か(役作りについての)指示はありましたか?
基本、私の作った通りでOKをいただきましたけど、たまに“もっと元気にやっていいよ”とか、“もっとわちゃわちゃしていいよ”などの指示をいただいたので、その点を意識しながらお芝居をしていました。
――少しネタバレしますが、原田龍二さん演じる水越にぞっこんなのが、映像(芝居)からダイレクトに伝わってきました。
ありがとうございます、そうなんですよ! 特に桜の木の下のシーンでは、もっとたくさんの案があって、いろいろと試していたんですけど、監督から“もっと分かりやすく口をとんがらせてみようか”って指示をいただいたので、口をとんがらせて待っていたんです。もっとやっていいよって言われたのですが、あまりに恥ずかしすぎて……。結果的に映像の通りになりました。あれが限界です(笑)。
――その後、ある任務を任されますが、そこではドタバタせずに、キビキビとしていました。
リスペクトしている婦長のように、ちゃんとやります、しっかりできます、というところを出してみました。ある意味、真関ちゃんの成長を感じられるシーンになっています。
――少し戻りますけど、現場に入って、セットで撮影を重ねていく中で、ご自身の中での変化などはありましたか?
台本を読んで、作品の世界観は理解していましたけど、やはり実際にそういう景色というか、視覚的にそう感じる空間があることで、(役に)すごく入りやすかったと感じています。
撮影現場は、長野にあるいまは使われてない小学校で、私が入った時にはもう、撮影も半ばを過ぎたぐらいだったので、(当時の)雰囲気がすごく出来ていたというか、雰囲気がありすぎて、急にその時代に戻ったかのような感覚になりました。
――廃校というと、何か出そうですね(笑)。
本当に、雰囲気がありすぎて怖いぐらいでした。撮影は初夏の頃でしたけど、少しひんやりしていましたし……。
――何かが出そうな雰囲気はありましたけど(笑)、施設の中ではみなさん平穏に暮らしていました。
そうですよね、中の世界と外の世界では180°違っていて、張り詰めたシーンもありましたけど、中はすごく平和に見えるので、その意味で私の登場シーンは、ゆったりした雰囲気の中、楽しもうと思いながらお芝居ができたので、気が楽でした。
――終盤には、緊迫感のあるシーンもありました。
基本的に(現場では)いつもドキドキしているんですけど(笑)、そこは緊張感も高まって、よりドキドキしていました。
施設の中は平和な描き方をしていて、温かさとか、楽しさ、わちゃわちゃしたシーンの思い出がいっぱいあるから、(外の世界では)本当に戦争が起こっているのかなと感じてしまいますけど、緊張感のあるシーンが入ることで、戦争中であることや、戦争の辛い部分もきちんと描かれている、感じられるようになっていると思いました。悲しいというか辛いシーンではありますけど、だからこそ、平和の描写がすごく温かく感じられると思いました。
――そうした状況を経て、真関は終盤には驚く行動に出ます。
台本を読んだ時にはびっくりしましたけど、そこに至るまでの経緯もきちんと描かれていたので、だからこそ、一所懸命にやろうと思いました。平和の儚さもありますけど、真関ちゃんはその時代を懸命に生きていたのだし、彼女の行動によって他の役の心の中にいろいろな感情が生まれたと思うので、要のシーンになったと感じています。
――今回は、AKB48を卒業されたばかりの村山彩希さんと共演しています。ある意味、極限状態の中での共演はいかがでしたか。
撮影前は、もうすぐ映画が始まるねって、2人して怯えていました(笑)。撮影は2年前の初夏の頃にしていて、当時は同じチームで、一緒にいる機会も多かったので、一緒に頑張ろうねって励まし合いながら、クランクインを迎えました。
――最後に、月並みな質問ですが、作品の見どころや今後の活動の抱負をお願いします。
はい、まず作品については、観てくださる人それぞれに、何か持ち帰るもの、感じるものがあるんじゃないかと思うくらい、メッセージ性の強い作品になっているので、過去には日本も戦争していたということを想像しながら、味わっていただきたいです。そして、平和の尊さや、今ある平和のありがたみをこの作品を通して感じていただきたいと思います。ぜひ、私のコミカルな部分にも注目してください。
個人としては、お芝居の経験がまだまだ少ないので、毎回、不安を覚えたり、これで良かったのかなって反省することばかりなので、もっとできるようになりたいですし、これからも(お芝居に)挑戦していきたいです。
AKB48としては、今年は20周年記念として、これから新しいシングルも出ますし、夏は全国ツアーをしたり、12月には武道館6公演をやらせてもらうことも決まっているので、このあとも周年イヤーを全力で盛り上げていって、来年以降のAKB48に繋げていきたいです。ジャンプアップの1年にできるように、頑張ります。
映画『ハオト』
2025年8月8日(金)~ 池袋シネマ・ロサほかにて全国順次公開
<キャスト>
原田龍二 長谷川朝晴
木之元亮 倉野尾成美 村山彩希 三浦浩一 二瓶鮫一 植松洋 マイケル富岡 金城大和 バーンズ勇気
石田隼 清水一光 栩野幸知 好野雅彦 大原誠弍 河原健二 宗林咲智 丈 崔哲浩(友情出演)
片岡鶴太郎(特別出演) 高島礼子
<スタッフ>
監督・脚本・プロデューサー:丈
アソシエイトプロデューサー:植松洋 とめぞう 撮影:松岡寛 照明:山口峰寛 録音:廣木邦人 装飾:村井重樹 ガンエフェクト:栩野幸知 編集:木村誠 ヘアメイク:佐藤ひろえ 助監督:丸岡健 記録:高橋久美子 アシスタントプロデューサー:大原誠弍 音楽:高橋哲也 衣装協力:東京衣裳 配給:渋谷プロダクション 製作:JOE Company
2025/日本語/STEREO/アメリカンビスタ/117min
(C)JOE Company
●倉野尾成美 (Narumi Kuranoo)(真関智世 役)プロフィール
2000年11月8日生まれ。熊本県出身。
2014年からAKB48チーム8の熊本県代表メンバーとして活動。2017年、映画『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』で映画初出演。2024年よりAKB48グループ4代目総監督となる。2023年に、主演作『いちばん逢いたいひと』、及び『ガールズドライブ』が公開された。