ヤマハから、サウンドバー「SR-X90A」がリリースされた。SR-X40Aから約2年ぶりの新製品で、3.1.2構成を採用（ワイヤレスサブウーファーが付属）。ドルビーアトモスやDTS:X、AURO-3D（世界初）、AACに対応し、本体のみでイマーシブサラウンドの再生も可能だ。市場想定価格39万円前後で、9月下旬の発売を予定している。
SR-X90Aを、EQUALSの壁寄せスタンドに設置したところ。サブウーファーはワイヤレス接続なので、リビングでもすっきりした設置が可能
同社では今回SR-X90Aを発売する理由として、ホームシアターでのコンテンツの変化に対応することを挙げている。近年はサウンドバーでも、ドルビーアトモスなどのイマーシブコンテンツや音楽ストリーミングサービスが再生されることが増えており、これらに対して顧客満足度の高い製品をラインナップしようという狙いだ。
そのためには、現在の環境を最大限に活かした音質の実現が必要と考え、サウンドバーで実現できる音質の限界に挑戦したそうだ。音質に配慮したパーツを厳選しており、本体サイズも横幅118cmと大型テレビとの組み合わせを想定した仕様になっている。
SR-X90Aに搭載された技術は大きく4つ。その第一として、同社製AVアンプに搭載されている「SURROUND:AI」をサウンドバーとして初搭載している。SURROUND:AIは入力信号をAIが分析して、場面に応じたサラウンドモードを自動的に切り替えてくれるもので、サラウンドファンの間でも人気の高い機能だ。
ヤマハAVアンプユーザーにも好評の「SURROUND:AI」をサウンドバーとして初搭載した
第二が「Height Beam Speakers」の採用となる。こちらはYSP技術を受け継いだもので、本体天面左右に各6基、合計12基の28mmハイトビームスピーカーを搭載することで、天井での音の反射を利用して高さ方向の空間再現性を向上させている。
6基のハイトビームスピーカーは、デジタル・サウンド・プロジェクター技術を使って、隣接したスピーカーのタイミングをずらして再生することでビーム状の音に角度をつけ、より豊かな包囲感も実現している。専用アプリ「MusicCast Controller」から、ハイトビームスピーカーの音量レベルと角度の調整が可能だ。
なおフロントL/C/Rチャンネルには25mmドーム型ツイーターと新開発の50✕108mmアイシェイプ・オーバル・スピーカー（フルレンジ）を使っている。フロント3chにこれらのスピーカーユニットを採用したのは、ビームスピーカーでは定位感や指向性の再現は得意だが、音圧感が得にくく迫力のある音を再現するには通常のスピーカーユニットの方が適しているという判断からだったそうだ。
本体天面左右に各6基のハイトビームスピーカーを搭載。それぞれのスピーカーのタイミングを調整し、高さ方向の再現性も追求した
結果として、フロントL/Rにはツイーター＆フルレンジによる2ウェイ2スピーカーを、センターチャンネルはツイーター＆フルレンジ✕2の2ウェイ3スピーカーを搭載している。センターを3スピーカー構成としたのは左右の対称性を取るためで、L/C/Rスピーカーのインピーダンスに関しても整合性を取っているそうだ。
なお新開発されたアイシェイプ・オーバル・スピーカーは、名称の通り人の瞳のような形状のユニットで、一般的なトラック型に比べてエッジのシェイプが滑らかなので、スピーカーの振動が自然になり、音圧・音質の理想的なバランスを実現できるそうだ。その形状は、サウンドバー本体の高さを抑えるためにも一役買っている。
第三の特徴は、サブウーファーに搭載された独自技術「Symmetrical Flare Port」だ。付属サブウーファーは17cmウーファーを搭載したバスレフ型で、ポートは本体下側を向けて配置している。さらにそのポートの両端（開口部）を2枚の板で挟むことで空気の流れをコントロールし、ポートノイズを20dB低減させている。
他にもマルチバンドリミッターも搭載済で、瞬発的な強い信号にも対応、自然で迫力のある低音再現が可能という。なおサブウーファーとサウンドバーは、無線帯域を使ったワイヤレス接続（独自方式）が使われている。
サウンドバー本体はW1180✕H70✕D140mmと、テレビ手前に置いても画面を邪魔しないサイズを実現。剛性の高いメタルフレームを使い、大型インシュレーターを採用するなど、振動への作対策も施している
最後のポイントは、音質とデザイン性を両立した剛性の高い筐体デザインだろう。本体は1.6mm厚のメタルフレーム（正面は除く）で、さらに樹脂製の大型インシュレーターを組み合わせることでキャビネットの振動を抑制し、スピーカーユニットの能力を最大限に引き出している。
その他には、ヤマハ独自の「MusicCast」の搭載により、Amazon MusicやQobuzなどの様々なストリーミングサービスが楽しめる。AirPlayやミラキャストにも対応済だ。192kHz/24ビットの配信コンテンツにも出荷時から対応する予定とのことだ。
接続端子はeARC対応HDMI端子とHDMI入力、光デジタル入力、LAN端子をそれぞれ1系統搭載している。
接続端子は背面に装備。eARC対応HDMI端子の他にもう1系統HDMI入力を備えているので、プレーヤーなどの拡張も容易だ。なおHDMI端子は8K/60pや4K/120p信号には非対応とのこと
SR-X90Aは先のOTOTEN2025でも参考展示されており、既にその音を体験したという方もいらっしゃるだろう。編集部でも試作機のパフォーマンスを体験させてもらった。
ヤマハとしては、SR-X90Aでハイファイも楽しめる音質を目指しているようで、配信での森山直太朗（2.1ch再生）では声の再現が自然で、低音もダブつかずにクリーンな印象があった。バッハ「ゴルトベルク変奏曲」ではピアノの指使いまで明瞭に再現され、純度の高い演奏を楽しめる。細かい情報まできちんと再現してくれる、真面目な音作りがなされている。
映画ソフト『TENET テネット』では、冒頭のコンサートホール襲撃の臨場感、緊迫感がしっかり再現され、「SURREOUND:AI」の効果も充分。その後のシーンでも、電車の移動感、会話のニュアンス再現が巧みで、これなら様々なコンテンツを没入感たっぷりで楽しめるだろう。