太平洋戦争末期の東京郊外にある精神病院を舞台に、病院内との対比で外界の狂気を問うテーマを、シリアスなだけでなく、ユーモアとサスペンスとファンタジー要素も織り交ぜで描いた創作舞台の映画化『ハオト』。戦後80周年を迎える8月の公開を前に、完成披露舞台挨拶を下記の通り開催されました。

 丈監督には、本作に込めた想いや、それぞれのキャスティング理由、戦争や軍を批判し精神病扱いをされた元エリート海軍兵・水越役の原田龍二と看護師・真関役の倉野尾成美には、閉鎖的なシチュエーションでの胸キュンシーンについて、6月15日にAKB48を卒業したばかりの村山彩希には、2年前に撮影した本作の公開にあたり、当時を振り返っていただきました。
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 冒頭の挨拶で、村山彩希が、「先月AKB48を卒業して、肩書きがなくなってしまいました、村山彩希です」と「人生初」ということを明かした舞台挨拶。

 監督、脚本、プロデューサー、笠谷真司役の丈は、「丈は戦争というテーマについて、「戦争はクリエイターとして必ず通らなくてはいけないテーマだと思って、考えておりました。世界中どこかで必ず戦争をやっているので、『塀の中と外どちらが狂気か』っていうテーマから始まり、太平洋戦争末期の精神病院をモチーフに、創作しました。小学生の頃、ホームレスの方で、軍服を着て片足がなかったり、片手がなかった人がお金を乞う姿を何度も見て、その時から、戦争というものを非常に意識していました。なかなか手を出したくても出せなかったテーマだけれども、思い切って向き合いました」と満を辞しての作品だと熱く語り、最初に20年前、下北沢の本多劇場で舞台として上演したんですけれど、僕の友人である高嶋政伸くんが見に来てくださって、『丈さん、これ映画になるよ』って言ったんですよ。その一言で、映画化をすごく意識しました」と公開を前にして、感無量の様子。

 水越役に原田龍二をキャスティングした理由を聞かれ、「イメージにぴったりだったんです。ちゃらんぽらんな部分もあったり、二枚前の部分もあったり、水越は多面性が必要でした」と説明。原田は、「精神病棟に収容されている精神病患者なんですけど、健常者にしか見えないんです」と、“戦争や軍を批判し精神病扱いをされた”元エリート海軍兵役について説明した。

 看護師の真関役に倉野尾成美をキャスティングした理由について丈は、「2作目の『いちばん逢いたいひと』の時に、あまり知られていけれど華がある原石みたいな子を探そうと思っていたんです」と出会いを説明。倉野尾は真関役について、「看護師役で、自分的には、初めて実年齢より上の役柄で、すごい俳優さんばかりだったので、緊張もあって、怯えながらクランクインしました。温かい空気の中、一生懸命に真関ちゃんを演じられたんじゃないかなと思います」と話した。

 21世紀の未来の男性と交信していると伝書鳩を飛ばし続けている藍役に村山をキャスティングした理由を聞かれ、監督は、「なるちゃんに(前作『いちばん逢いたいひと』に)出てもらって、僕の中でAKB48は信用印なんです。その中から、抜擢させていただきたいと思って。ぽわーんとした雰囲気の人を探していたんです」と話すと、会場からは笑いが。村山が、「初めて言われました。しっかりしてるって言われます!」と断言すると、また会場から笑いが漏れ、監督は、「やっぱりピッタリだった。自分には見る目があると嬉しかった」とキャスティングに自信を見せた。

 村山は、「お芝居はちょっとだけ苦手意識があったんですが、見事丈さんに捕まえていただきました。監督に会うたびに『キーパーソンだよ』と言われて、そんな役を私がやっていいのかなと私も不安があったままクランクインしたんですけれど、現場で先輩方が作ってくれる雰囲気がすごくて、知らぬ間にその役になり切れていた自分もいました」と話した。

 村山は、「伝書鳩を肌身離さず持っている役だったんですが、鳩と実際接したのは3日間くらい。ずっと鳥籠は持っているけれど、粘土で作られた鳥を見て微笑んでいました」と映画の裏側を暴露した。

 戦時中の設定なので、村山は、ノーメイク風。「普段アイドルをやっている時のメイク時間は1時間なんですけど、今回は5分くらい。それが気にならないくらい、むしろそうでないと役になりきれなかったので、見た目から入ることも大事だなと勉強させていただきました」と話した。

 原田と倉野尾は、去年の4月も桜のシーンの撮影があったそう。「胸キュンドキドキでした。そういうシーンが初めてだったので、台本を読んで『できるかな』と一番不安になったのがそのシーンです」と告白。原田は、「すごく綺麗だった」と桜の季節に追撮した甲斐を感じていた。

 今回の映画で役者として1番心掛けたことや難しかったことを聞かれ、原田は、「とある方が、面白い口調で話すんですね。真似したくなる口調だったので、真似しすぎないようにするのが難しかったです。『あの方があんなことやるんだ』っていう中毒性がありました」と意味深な発言。

 倉野尾は、「自分と似てるなと思うくらい、なんでも全力で向き合う役柄だったので、近しい部分を感じました。感情を出しているシーンが多く、楽しい時は楽しんだし、切ない時は切なかったし、って色んな感情になったので、感情をすごく意識して、視線に気をつけて、お芝居しました」と振り返った。

 村山は、「作って現場に入ると、それ以外ができなくなってしまうんだなというのを感じて、言われたことに対して対応する力だったりとか、実際に怖いシーンとかが起きた時に、どういうふうに怖いのかという想像力を掻きたてるのがすごく難しかったところでもありましたし、一番学びでした」と俳優としての学びを語った。

 最後のメッセージとして、原田は、「丈さんが丈熱BARというYouTubeをやっていて、そこで話した(https://youtu.be/CsuoyfMVrmM)ので、ぜひ見てください」と告知。

 村山は、「あるシーンで、私の私物のバッグが出てきます。それはどこでしょう? 楽しんでください」とクイズを出題。

 倉野尾は、「どのキャラクターでもいいので、色んな視点で見ていただけたらと思います」と、2度3度と本作を楽しめる方法をアピールして、舞台挨拶は終了した。

映画『ハオト』

2025年8月8日(金)~池袋シネマ・ロサ ほかにて全国順次公開

【あらすじ】
初夏のある日、警察署に90歳を超えた一人の老人が甥っ子の刑事宛に訪れ、「人を殺した」と告白。老人は、太平洋戦争末期の特殊施設の話を始める。
そこは、原爆開発を手掛ける博士や戦況を100%予知する男がいる、特殊機密施設。
海軍の将校・蓬が、ハワイ生まれの日系人である米国の諜報員・津田を二重スパイとして雇い、施設に連れてくる。蓬は、ソ連に仲介してもらい、和平交渉を進めようと、日系ソ連人のソ連大使と陸軍将校の森本を施設に招こうと画策。方や米国は、津田の存在を怪しみ、同じく日系ハワイ人の田中を送り込む。
蓬の親友である水越は、何を思って軍を辞めたのか。
藍が未来に放つ白い伝書鳩は、はたして何を伝えるのか。

<キャスト>
原田龍二  長谷川朝晴
木之元亮 倉野尾成美 村山彩希 三浦浩一 二瓶鮫一 植松洋 マイケル富岡 金城大和 バーンズ勇気 石田隼 清水一光 栩野幸知 好野雅彦 大原誠弍 河原健二 宗林咲智 丈 崔哲浩(友情出演)
片岡鶴太郎(特別出演)  高島礼子

<スタッフ>
監督・脚本・プロデューサー:丈
アソシエイトプロデューサー:植松洋 とめぞう 撮影:松岡寛 照明:山口峰寛 録音:廣木邦人 装飾:村井重樹 ガンエフェクト:栩野幸知 編集:木村誠 ヘアメイク:佐藤ひろえ 助監督:丸岡健 記録:高橋久美子 アシスタントプロデューサー:大原誠弍 音楽:高橋哲也 衣装協力:東京衣裳 配給 渋谷プロダクション 製作 JOE Company
2025/日本語/STEREO/アメリカンビスタ/117min
(C) JOE Company

公式サイト
http://haoto-movie.com/

YouTube
https://youtu.be/frPE_qidNXw