KEF JAPANから、同ブランド初となるサウンドバー「XIO」(¥330,000、税込)が発表された。5.1.2のイマーシブオーディオ再生が可能なワンバータイプで、本日から予約受付を開始、発売は7月17日を予定している。

 XIOは「ジオ」と読み、14番目のギリシャ文字である「Ξ(クシー)」と、左右対称の形状にインスピレーションを受けている。「Ξ」は、物理学や数学などの分野で使用されており、サイエンスやテクノロジーを想起させるネーミングの方向性に基づいているという。発音のしやすさに考慮し、末尾に「O」を加えてXIOとなったそうだ。

サウンドンバーの「XIO」。本体カラーはSilver Gray(写真)とSlate Blackの2色

 KEF JAPAN コマーシャルディレクターの福島真澄さんによると、KEFは、“ハイフィデリティの民生化” “ハイファイサウンドをより多くの方に” というブランド哲学を持っているという。その思いを受け継ぎつつ、近年はパッシブスピーカーに加えて、ワイヤレスHiFiスピーカーも充実させている。今回は、そこにサウンドバーが加わったわけだ。

 福島さんは、「弊社のワイヤレススピーカーは、ここ数年たいへんご好評いただいています。それもあり、ユーザーさんからはサウンドバーが欲しいという要望もありました。当然製品への期待値も高いと思われますので、XIOはそれに応えるハイスペックモデルとして開発されました。弊社代表取締役社長のグレース・ローも、“XIOはバーの中にKEFの技術を凝縮したハイファイシステムです” と話していました」と製品発売の狙いを語ってくれた。

 最近はテレビの大画面化が進んでおり、55〜65インチが中心になってきている。XIOの本体はW1210×H70×D165mm、重さ10.5kgなので、55インチ以上の薄型ディスプレイとの組み合わせに最適な大きさと言えるだろう。

XIOの内部構成。赤い矢印のついている6つがUni-Q MXドライバーとのこと

 そのXIOは、上記の通り5.1.2対応のサウンドバーで、合計12基のユニットを搭載する。このうち6基は新開発のUni-Q MXドライバーで、その他に低域用のP185LFドライバーが4基、サラウンド再生用のフルレンジドライバーを本体両サイドに2基搭載する。

 XIOで特徴的なのは、6基のUni−Q MXが本体正面と天板にそれぞれ3基ずつ搭載されている点だ。ラックに乗せて設置した場合は本体正面の3基のUni-Q MXがL/C/R、天板両脇がトップL/Rとして動作する。壁掛け設置をした場合は天板が正面を向くことになり、結果として天板側のUni-Q MXがL/C/Rとして、正面側の2基がトップL/Rとして動作する(どちらの設置の場合も残りの1基は動作しない)。なお設置状態はセンサーが検出し、自動的にスピーカーの動作切り替えを行ってくれる。

上がTVラックなどに乗せて設置した場合で、下は壁掛けイメージ。この2種類の置き方を内蔵センサーが検知し、スピーカーの駆動方法を自動的に切り替え得てくれる

 これらのユニットは、ハイファイサウンドを実現するべく新開発されている。Uni-Q MXはこれまでのUni-Qドライバーの中でも最小サイズ(Bluetoohスピーカー『MUO』に搭載されたものと同じ口径50mm)で、ドーム型ツイーターとウーファーを同心円状に配置した同軸型という構成はこれまで同様だ。

 ウーファー用のP185LFドライバーは5×18cmのトラック型で、エッジ部部には「KC62」「KC92」などで使われているP-Flex(折り紙からインスパイアされたプリーツデザイン)を採用。4インチウーファーと同等の低音を再現できるそうだ。

 さらにP185LFはVECO(Velocity Control Technology)も搭載している。これは、内部された専用電子回路が、モーションセンサーで検知した速度と理想速度を比較し、その差を最小限に抑制するもの。これにより歪みが減少し、クリアーで深みのある低音を再現できるとのことだ。

本体の両サイドには50mmフルレンジスピーカーが搭載されており、ここからサラウンド音声を放射、壁の反射を利用して包囲感を演出する。付属リモコンでストリーミング再生などの操作も可能とのこと

 サラウンドのフォーマットとしてはドルビーアトモス、DTS:Xのデコードが可能で、さらに360 Reality Audioの再生にも対応している。また再生時には「Default」「Music」「Movie」「Night」「Dialogue」「Direct」の6つのモードが選択可能。Directを選ぶと入力された信号のフォーマットのまま、その他はアップミックス処理等を加えて5.1.2で再生するとのことだ。その際はXIO専用に開発されたDSPアルゴリズムのMIE(Music Integrity Engine)for Cinemaも使われている。

 なおXIOにはオートセットアップ機能としてIPT(Intelligent Placement Technology)も搭載されている。製品の周囲の壁や家具などを検知し、設置環境の音響特性を解析、その結果をもとにEQ(イコライザー)調整を行い、最適な音響出力を実現してくれるもので、測定はXIOの内臓マイクを使用する。

 接続端子はHDMI(eARC)、光デジタル入力、LAN、USB Type-Cが各1系統、さらにサブウーファー出力(RCA)を備えている。

接続端子はeARC対応HDMIと光デジタル、LAN端子など。サブウーファー出力も搭載済み

 ストリーミング再生用には、独自のW2ワイヤレスプラットフォームを内蔵した。Spotify、Apple Music、TIDAL、Deezerなどが楽しめる他、最大384kHz/24ビットのハイレゾ信号も再生可能とのことだ。

 本体カラーはSilver GrayとSlate Blackの2色展開で、スピーカー部は防水性ファブリックでカバー、天板はアルミ製トップカバーがあしらわれている。

 また先述のようにXIOにはサブウーファー出力も搭載されており、別売のサブウーファーと組み合わせることで、より迫力のあるサラウンド体験が実現できる。基本的には有線接続となるが、今回XIOとサブウーファーをワイヤレス接続できるRXレシーバー「KW2 RX」(¥25,300、税込)も同時発売された。

サブウーファー用のワイヤレスRXレシーバー「KW2 RX」

 KW2 RXはW37×H72×D31mmというサイズで、KEF製サブウーファーの拡張ポートに取り付けるだけで、低域信号が無線伝送(2.4GHz、48kHz/24ビット)される。さらに複数のサブウーファーの同時接続も可能なので、もっと低音を響かせたいという場合も問題ないだろう。さらにKW2 RXには3.5mmアナログ/光コネクター出力も搭載されているので、他社製サブウーファーとの組み合わせも可能だ(USB-Cで電源を供給する)。

 新製品説明会で、65インチテレビと組み合わせた音を体験させてもらった。Silver Gray仕上げを横幅150cmほどのTVラックに乗せたが、デザインがシンプルということもあってとても収まりがいい。

 ドルビーアトモスのデモディスクから「Amaze」を再生した。トップスピーカーのUni-Q MXやサラウンド用のフルレンジスピーカーは天井や壁面の反射を使って音場を創生しているとかで、試聴位置の両サイドくらいまで音が広がってくる。上空で響く雷鳴や雨音も、それなりの高さ感を備えている。

eARC対応の65インチテレビと組み合わせて、デモディスクやUHDブルーレイを試聴

 UHDブルーレイ『トップガン マーヴェリック』では冒頭の「デンジャー・ゾーン」が勢いたっぷりに響いてきた。後半の空中戦でもF-14や第5世代戦闘機の移動感、スピード感などで作品世界に引き込んでくれる。こちらはサブウーファーのKC62をワイヤードで接続していたが、低域の勢い、迫力も充分だ。

 続いてKW2 RXを使って、サブウーファーをワイヤレス接続した音も体験させてもらった。同じくKC62を使ったが、あり/なしの設定はアプリから簡単に可能で、IPTによる自動音声補正機能の設定も自動的に反映してくれる。

 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でサブウーファーのあり/なしを聴き比べた。ボンドとマドレーヌがDB5で逃走するシーンでは、KC62を加えることで、ボンドの声に厚みがついてくる。さらに防弾ガラスに当たる銃弾の音に厚みが出るし、DB5のエンジン音も力強さが増して、サラウンドとしての音の密度が上がっている。教会の鐘の音も濁りが減ってクリアーに響いてきた。

KEF Connectアプリから再生モードの切替も可能。初期設置時に部屋の広さや床からの高さ、サブウーファーの有無などを設定することで、最適なパラメーターに調整してくれる

 これなら、65インチ以上の画面サイズでも充分な迫力が楽しめるのは間違いない。最近は床置き単焦点プロジェクターや小型プロジェクターも増えており、100インチサイズも手軽に楽しめる。XIOはこれらの製品と組み合わせても充分なサラウンドを楽しめるはずだ(もちろんサブウーファーはあったほうがいい)。

 またKEFでは、既発売のワイヤレススピーカーをXIOのリアスピーカーとして追加することも検討しているようだ。例えば「LSX II LT」を普段はデスクトップ用として使い、週末はリビングに移動してサラウンドスピーカーとして活用するイメージだ。設定はアプリから行う予定で、実現の暁には本格サラウンド環境が簡単に構築できることになる。

 XIOを核に、サブウーファーとリアスピーカーを追加することで本格イマーシブサラウンドを、しかもKEFのサウンドクォリティで実現できる。そのスタートとなり得る “身近なハイフィデリティ・シアターシステム” として、ライフスタイルと音のクォリティにこだわる方はぜひ一度XIOを体験していただきたい。

 7月17日(木)の発売に先駆け、myKEF会員限定で、「XIO」を公式オンラインストアもしくは東京・南青山のKEF Music Gallery TOKYOで購入できるサービスをスタートした。同時に、KEF Music Gallery TokyoではXIOの試聴体験もスタートしている。XIOのサウンドが気になる方は、以下の関連リンクから申し込んでいただきたい。