スタジオジブリ作品の名場面を立体造形物で紹介する「ジブリの立体造型物展」が、5月27日(火)〜9月23日(祝)の期間、東京・天王洲の寺田倉庫B&C HALL/E HALLで開催されている。
“海を渡った熱風。” をコンセプトに、スタジオジブリ作品が世界中で愛されるようになった背景、ジブリ作品を愛してくれたパートナーが、長い時間をかけてそれぞれの国や地域に届けるべく尽力してくれたかを紹介しながら、立体造形物で各作品をよりリアルに感じてもらおうというものだろう。
左から、株式会社スタジオジブリ代表取締役社長・日本テレビ放送網株式会社代表取締役社長執行役員の福田博之氏、伊原 弘氏、小泉孝太郎氏
そして27日のオープン直前に、本イベントの「開会セレモニー&プレス内覧会」が行われた。冒頭、株式会社スタジオジブリ代表取締役社長・日本テレビ放送網株式会社代表取締役社長執行役員の福田博之氏から、本企画についての解説が行われた。
福田氏によると、スタジオジブリ作品も、かつては日本国外での公開は思うようにいかなかった時代もあったそうだ。しかし世界の国々・地域にジブリ作品を愛し、作品を届けることに努力を重ねてくれる人たちもいたそうだ。同社作品が現在、世界中に届いているのは、それらの人々の尽力によるものです、とのことだった。
もともと2003年に「ジブリがいっぱい立体造型物展」が東京都現在美術館で開催され、そこから様々な展示会が行われてきた。今回はその原点ともいえる立体造形展を22 年ぶりに開催することができたそうで、「私もひじょうに喜びを感じております」と福田氏も話していた。
伊原 弘さんが手掛けた、『紅の豚』のサボイアS-21。本当に美しい仕上がりです © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
また今回の展示の目玉のひとつである『紅の豚』で主人公のポルコ・ロッソが乗る飛行艇 サボイアS-21について、「昨日、宮﨑 駿監督が自ら操縦席に乗り込み、また機体を眺めて美しいですねと感想を話していたということを聞き、皆様にもご期待いただけるのではないかと思っております」と紹介してくれた。
続いてそのサボイアS-21の製作を担当した伊原 弘氏が登壇した。伊原さんは様々な作品でミニチュア造形を手掛けてきた特撮界のエキスパートで、スタジオジブリ作品の『巨神兵東京に現わる』でもミニチュアを担当している。
伊原氏によると、今回のサボイアS-21には“木製”というテーマがあったそうだ。そこについて調べていくうちに100年以上前に木を使って綺麗なカーブを作る手法があったことを発見し、「100年前の人がやったんだったら僕らも挑戦しないわけにいかないなと思いまして。かなり難しかったんですけども、やっとできたかなという感じです」と話していた。
また宮﨑監督がサボイアS-21を見に来た時のことを聞かれると、「美しいですねって、小さな声でおっしゃったんです。自分がトライしてきたことがまちがいなかったと思いました」との返事だった。
会場の入口に置かれた『崖の上のポニョ』の立体造型物 © 2008 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDHDMT
最後に特別ゲストとして俳優の小泉孝太郎氏が登場。小泉氏は自身がMCを務める日本テレビの番組でサボイアS-21の制作中の様子も取材したことがあるとかで、「3月上旬にお邪魔させていただいた時は、機体に取りかかっている段階でした。色もついていませんし、両翼もなかったのですが、その段階からなんて美しいんだろうと完成が待ち遠しくてワクワクしたので、今日この場に立ち会うことができて嬉しいです」とコメントしていた。
さらに「一番驚いたのが、サボイアS-21の設計図は伊原さんの頭の中にしかないんですよ。それを工房のスタッフ皆さんが阿吽の呼吸で感じ取るわけですね。そんなプロフェッショナルの領域というものを見せてもらったのは、本当に驚きました」と、製作陣のスキルの高さにも感動した様子だった。
さらに展示内容について、「お子さんよりも、お父さんお母さんの方がどっぷりとはまってしまうような魅力が詰まっていますので、家族連れはもちろん、ジブリファン、伊原さんのファンの皆さんに足を運んでいただきたいなと思います」と話してくれた。
そんな「ジブリの立体造型物展」の主な展示物は以下の通り。小泉さんの言葉の通り、大人が見ても引き込まれる完成度を持っているものばかりで、さらに展示物の周りにも細かな気配りもされていて、作品に詳しい人ほど夢中になれることは間違いない。(取材・文・撮影:泉 哲也)
お土産コーナーには、精巧なサボイアS-21も並んでいます © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
「ジブリの立体造型物展」開催概要
●日程:2025年5月27日(火)〜9月23日(祝)9:30〜20:00(最終入場19:00)
●会場:天王洲・寺田倉庫 B&C HALL/E HALL
●主催:日本テレビ、博報堂、ローソンチケット、ディスクガレージ、第一通信社、TOKYO FM
●協賛:寺田倉庫
●協賛:日本航空、月刊モデルグラフィックス
●特別協賛:スタジオジブリ
●チケット(日時指定予約制、すべて税込)
・通常チケット:一般¥1,900、中・高校生¥1,600、小学生¥1,200
・特典付きチケット:一般¥2,900、中・高校生¥2,600、小学生¥2,200
(C) 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
『となりのトトロ』でトトロが寝ていた木のウロを再現。メイちゃんも一緒にお昼寝中 © 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
『もののけ姫』のモロの君が来場者を見下ろしている © 1997 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, ND
『耳をすませば』から、電車に乗って移動中 ©1995 Aoi Hiiragi, Shueisha/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NH
『平成狸合戦ぽんぽこ』の万福寺もリアルに再現されている © 1994 Isao Takahata/Studio Ghibli, NH
『千と千尋の神隠し』から、油屋に戻る千尋の様子 © 2001 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDDTM
『天空の城ラピュタ』は、奥行きを生かした立体像が目を惹きます © 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
同じく『天空の城ラピュタ』から、シータの救出シーン。正面と裏側から鑑賞可能 © 1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
『ハウルの動く城』は、実際に立体造形物が動いている © 2004 Diana Wynne Jones/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli,NDDMT
サボイアS-21を後ろから見てみた。本体下側の曲線も綺麗です © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
サボイアS-21の隣には、作品中にも登場したフィオの仕事部屋も再現 © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
ピッコローのハンガーには、食事のテーブルや作業工具も並んでいる © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
こちらはミニチュアで再現されたハンガーとサボイアS-21。チェックをするフィオの姿もあり © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
ホテルアドリアーノの上空を飛ぶサボイアS-21の様子も再現。ちゃんとジーナの姿も再現されています © 1992 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NN
短編『空想の空とぶ機械達』も特別上映
宮﨑 駿監督がかつて三鷹の森ジブリ美術館の企画展示用に制作した短編アニメーション映画『空想の空とぶ機械達』(2002年)も特別上映される。大空にあこがれた人々が空想した“空とぶ機械達”を描いている。
●上映時間:6分●原作・脚本・監督・ナレーション:宮﨑 駿●作画監督:米林宏昌●美術監督:武重洋二●音楽:久石 譲●制作:スタジオジブリ