KEFジャパンは、表参道のKEF Music Gallery TOKYOでストリーミングサービスのQobuzとのコラボイベントを開催した。同店では2023年12月のオープン以来様々なイベントを開催しており、通算27 回目を迎えたという。今回のイベントはその中でも一番人気で、募集から2日で満席になるほどだったそうだ。

 そのイベントで解説を務めたのは、お馴染みの麻倉怜士さん。ご自宅でQobuzを楽しんでいるという麻倉さんが、KEFのスピーカーを中心にしたシステムでその楽しさ、快適さを紹介してくれるというものだ。もちろんオーディオファンが気になる音質についてもじっくり確認できる内容になっていた。

イベント開始前から多くの参加者が詰めかけ、準備された席もあっという間に埋まっていた

 まず、Qobuz国内統括マネージャーの祐成秀信さんから、同社のサービス内容について紹介が行われた。冒頭祐成さんは、「長らくお待たせしてしまったんですが、昨年の10月に日本でローンチすることができました。おかげさまで、現在順調に会員数も増えています。これから、皆様に長く愛されるサービスにしていきたいと考えております」と挨拶をしてくれた。

 そこからQobuzの歴史や配信サービスの内容について紹介された。なおQobuzという名称は、カザフスタンで使われていた「コブズ」という楽器に由来するとのことで、サービス誕生時から音楽へのこだわりがあったことが明かされている。

 日本では定額制ストリーミングとダウンロードのふたつのサービスを展開しており、ストリーミングにはユーザー数が異なるコースが準備されている。加えて同社サイトには「マガジン」というオリジナルサービスも準備され、ここでは世界中のスタッフが選んだお薦めコンテンツが紹介されている。そこから注目曲をダイレクトに再生できるなど、楽曲へのリーチのしやすさも大きなメリットだろう。

 ストリーミングサービスの場合、プレイリストも重要な機能になってくる。Qobuzでもプレイリストを準備し、ジャンル、アーティスト、ハイレゾなどひじょうに多くの種類がラインナップされている。今回のイベントに向けて麻倉さんもプレイリストを作成し(全50曲)、試聴はその中からピックアップして行われている。

麻倉さんの今回のイベント用プレイリスト
https://open.qobuz.com/playlist/29341232

 それらを再生するシステムは、麻倉さんが「今日は世界最高のシステムを持ってきました」と語る厳選された機器が準備されていた。

 ひとつはKEFのアクティブスピーカー「LS60 Wireless」で、今回は「Lotus Edition」がセットされている。もうひとつのシステムは、ネットワークプレーヤー/プリアンプにはリン「KLIMAX DSM/3」を、パワーアンプは「KLIMAX SOLO」を使って、KEFのスピーカー「Reference 5 Meta」をドライブしている。

 それらについての解説が行われた後、試聴がスタート。まずLS60 Wireless Lotus Editionで、ダイレクトにQobuzを再生した。LS60 WirelessシリーズはUSB DACやパワーアンプなどの電子回路を内蔵したアクティブスピーカーで、ストリーミングサービスの再生にも対応している。つまり、本機だけでQobuzが楽しめることになる。

「LS60 Wireless Lotus Edition」(内側)と「Reference 5 Meta」(外側)の2種類のスピーカーを使用。L/Rスピーカーの間に置かれているのがパワーアンプのリン「KLIMAX SOLO」

 「最初にかけるのは、やっぱり誰でも知っている曲がいいでしょう」と言って麻倉さんが選んだのは、ノラ・ジョーンズの「Come Away With Me」。さらにヒラリー・ハーンによるバッハ「ヴァイオリン協奏曲第2番」も再生された。

 「いかがですか、本当にいい音ですよね。これがネットの向こうから届いているなんて信じられますか? 本当に凄い時代になったと思います」という麻倉さんの言葉に、来場者も自然にうなずいていた。

 そこからリンのシステムを使った試聴に移る。なおこのシステムでは、オーディオケーブルにはコード製が、ハブにはイングリッシュエレクトロニクスの「8Switch」が使われていた。これらも麻倉さんが日頃の試聴を通じてお薦めモデルを選んだとのことで「8Switchを入れることで外部ネットワークからのノイズがカットでき、配信の音質がワンランクアップします」とのことだった。

 まずはUAレコードの楽曲から情家みえ「チーク・トゥ・チーク」、小川理子「Lady Be Good」が選ばれた。

 「情家さんの音源は2017年に録音したんですが、今でも高音質で楽しんでいただけるのではないでしょうか。なお今年の8月頃に情家さんのヴォーカル集第二弾も発売予定ですので、楽しみにお待ち下さい。小川さんの『Lady Be Good』も、ピアノだけでなく、ドラムやギターがとてもセクシーで、クォリティが高い。スタジオモニターよりもいい音で再現できていると思います」と麻倉さんが解説してくれた。

ネットワークプレーヤー/プリアンプとして、リン」KLIMAX DSM/3」(右側ラック中段)を使用

 続いてクラシック楽曲から、モーツァルト「ハフナー」、「ジュピター」や、ロサンゼルス・フィルハーのチャイコフスキー「バレエ《くるみ割り人形》」も再生された。

 麻倉さんは、「最初のふたつは音像をしっかり楽しめる演奏で、《くるみ割り人形》はディズニーホールでのライブで音場再現が素敵です。この奥行き感まできちんと表現できるのはQobuzならではです」と、演奏による楽しみ方の違いまで紹介してくれた。

 さらにポップスでは、マイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」、ユーミン「中央フリーウェイ」という、来場者全員がよく知っている曲も選ばれていた。

 「『ビリー・ジーン』の楽器が重なっていく様子、『中央フリーウェイ』での名人芸の伴奏がいいですよね。ハイレゾになるとそういった演奏の機微までわかります」(麻倉さん)。

 さらに麻倉さんが愛する松田聖子の楽曲から「瞳はダイアモンド」も再生された。ここで麻倉さんは、「聖子さんのしゃくり上げる歌い方もいいんですが、何と言ってもこの曲のパーカッションとベース、ドラムスの素晴らしさと言ったらないですよ。やはり80年代のスタジオミュージシャンは凄い」と思い入れたっぷりに解説してくれた。

今回のイベントを盛り上げた皆さん。左からQobuz国内統括マネージャーの祐成秀信さん、アンダンテラルゴ(株)代表取締役社長の鈴木喜裕さん、麻倉さん、KEF JAPAN コマーシャルディレクターの福島真澄さん、(株)リンジャパン 代表取締役の山口伸一さん

 さらに麻倉さんはマウリツィオ・ポリーニによるショパン「ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53《英雄》」を再生しながら、「この曲は最初、どこのホールで演奏しているのかわからなかったんです。でもネットワーク環境を整えていったら、ノイズに埋もれていた響きがでてきたんです。そこで、これってムジークフェラインザールじゃないの、と思って調べてみたらやっぱりそうだった。それくらいネットワーク再生ではノイズ対策は重要です」と、オーディオ機器の使いこなしにも言及してくれた。

 そこからエリック・クラプトンとジェフ・ベックによる「ムーン・リバー」や、竹内まりあ「恋愛ラプソディ」、久石 譲「Town with an Ocean View」、アリス=紗良・オット「フィールド:ノクターン 第1番 変ホ長調」といった名曲群も再生され、来場者も夢中になって聴き惚れていた。

 そして最後に選ばれたのは、ジョン・ウィリアムズとベルリン・フィルによる「レイダース・マーチ」と、ユジャ・ワン「パガニーニ狂詩曲」の2曲。

 「今日は沢山の曲を聴いていただきました。本当にポップスも素晴らしいし、オーケストラもいい。何と言っても、音楽が作られたままの品質で再生できるのがいいですね。しかもQobuzなら、コンテンツがどんどん追加されるから新しい曲にも出会える。私もこれから色々な媒体でお薦め曲を発信していきますので、ぜひ皆さんもQobuzでオーディオを楽しんでください」という麻倉さんのコメントで、2時間近い試聴会は終了になった。