海外で保管されていた最良のマスターで甦るロイ・オービソンのエモーションが詰まった天下の名盤

 ロイ・オービソン作品では、1987年9月、ロサンゼルスのアンバサダーホテルで開催された「Black & White Night」ライヴBDを、音楽映像作品の音のリファレンスとして大いに活用している。驚異的に音が良いからだ。本SACDもたいへん優秀な音だ。

 ロイ・オービソンは1936年4月テキサス州で生まれ、1988年に没したアメリカを代表するロック・シンガー。日本では1990年公開のリチャード・ギアとジュリア・ロバーツ共演の大ヒットロマンチック・コメディ『プリティ・ウーマン』の主題歌にもなった「おお、プリティ・ウーマン」(1964年、全米・全英チャートで1位)で知られる。同曲から、最後のジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ジェフ・リン、ロイ・オービソンのトラヴェリング・ウィルベリーズの「Handle With Care」まで26曲も収録されている。音源は、海外で保管されていた最良のデジタルマスター。巨匠、鈴木浩二氏のリマスタリングにより本SACDが完成した。

『アルティメット・コレクション/ロイ・オービソン』
SACD/CDハイブリッド盤

(ソニー・ミュージックダイレクト/ステレオサウンド SSVS-006)¥4,584 税込

[収録曲]
1.おお、プリティ・ウーマン
2.アイ・ドローヴ・オール・ナイト
3.ユー・ゴット・イット
4.クライング
5.オンリー・ザ・ロンリー
6.イン・ドリームス
7.ラヴ・ハーツ
8.クローデット
9.ブルー・バイユー
10.ドリーム・ベイビー
11.ウォーク・オン
12.フォーリング
13.ランニング・スケアード
14.カリフォルニア・ブルー
15.リア
16.ミーン・ウーマン・ブルース
17.クロウリング・バック
18.ライド・アウェイ
19.トゥー・スーン・トゥ・ノウ
20.シーズ・ア・ミステリー・トゥ・ミー
21.ブルー・エンジェル
22.イッツ・オーヴァー
23.ウービー・ドゥービー
24.ハートブレイク・ラジオ
25.もう一人じゃない
26.ハンドル・ウィズ・ケア

●マスタリングエンジニア:鈴木浩二(ソニー・ミュージックスタジオ)
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 第1曲の「おお、プリティ・ウーマン」を詳細に分析しよう。まず冒頭から刮目。ドラムスの1拍ずつの強烈な叩きが一小節を貫徹し、次の小節から尖鋭なギターがE7のアルペジォを8小節まで6回強奏、次にロイ・オービソンが艶艶したストレートな声質で、♪Pretty Woman Waking Down The Street〜♪と、歌い始める。このシークエンスには、SACDならではの新鮮な驚きがいくつもあった。冒頭のドラムスのスネアとバスドラムの同時叩きでは、スネア底面のスナッピーの振動と衝撃が細やかに捉えられ、その一瞬の響きが音場に轟く。ギター音の太さ、キレも感動的だ。

 特に素晴らしいのが中間部ミドルエイトの冒頭、1分9秒からの♪Pretty woman, stop a while〜♪の本人のダブルトラックによる3度ハモリ。その美しさはまさに艶×2だ。1分48秒の♪Come to me, baby, be mine tonight〜♪のサブドミナントマイナー(4度のコード音を短調にする)Dmの哀愁に、本人の二重歌唱が加わるハイエモーション。SACDならではの情緒感が濃い。これ以外にも佳曲は数多い。天下の名盤がSACDで甦ったのは、嬉しい。