アメリカのケーブルブランド、AudioQuest(オーディオクエスト)は、今年創業45周年を迎える。それを記念し、日本での輸入販売を手掛けるディーアンドエムホールディングスでは、改めてオーディオクエスト製品についての説明会を開催した。
オーディオクエストは、現在もCEOとチーフデザイナーを務めるウィリアム(ビル)・ロウ氏が1980年に創業したブランドだ。1970年代後半は、オーディオケーブルを変えることで音が変化すると言われ始めた時代で、ビル氏はこの頃から自作スピーカーケーブルを製造・販売し始めたそうだ。
オーディオクエスト CEO・チーフデザイナーを務めるウィリアム(ビル)・ロウ氏
そのケーブルが評判となり、1980年にオーディオクエスト社が誕生した。当時は、20ドルで買える製品なのに、音に感動できる貴重なケーブルとして、40以上の販売店で取り扱われていたという。
ちなみにビル氏はこの頃のイベントで長さの違うケーブルの試聴を行ったそうで、その時の体験から被膜の硬いケーブルの方が音がいいことを発見、以後ケーブルの機械的安定性も重視した製品造りを行っている。
翌年同社はCESに出展、そこから欧州や日本でも製品の取り扱いがスタートする。そして2003年には日本マランツがオーディオクエスト製品の取り扱いを開始している。
当時の決定についてD&Mシニアサウンドマネージャーの澤田龍一氏は、「当時ビルさんは、音が良くなるケーブルはない、ケーブルは必要悪だと明言したんです。また弊社へのデモでは、エントリーからミドルクラスの製品を使用していたんです。どんな製品であれ、トップモデルは理想を追求できますが、ミドルクラスはコストの関係などから取捨選択を行う必要があり、そこにエンジニアの思いが出るものです。ビル氏のそんな姿勢を見て、これなら信用できると思いました」と話していた。
アナログ音声ケーブル
その後、ケーブルのエージングの概念を変える「DBS」(ダイエレクトリックバイアスシステム)を2004年に、さらに2008年には電波環境の変化(高周波ノイズ)に対応したノイズ消散システム「NDS」などの独自技術を開発するなど、オーディオクエストは常に時代の要請に応えるケーブルを送り出してきている。
オーディオクエストの製品は現在世界74ヵ国で発売されているとかで、オーディオ愛好家はもちろん、スピーカーなどの製造現場でも高い評価を集めている。実際にBowers & WilkinsのSouthwater Research & Engineeringスタジオや日本のD&Mホールディングスのマランツ、デノン試聴室でもリファレンスとして採用されている。
その点についてマランツ・サウンドマスターの尾形好宣氏は「オーディオクエストのケーブルは癖がない点がいいですね。実際の試聴では銅線を使ったミドルクラスから選ぶことも多いんです」と語り、デノンサウンドマスターの山内慎一氏は「価格帯に関わらず、フォーカス、奥行の表現が共通しているのが特長です。製品開発時のチューニングにも適していると感じています」と採用の理由を話してくれた。
HDMIケーブル
さてオーディオクエストでは、これまでも “Boom BoxDemo” と呼ばれる体験試聴を実施してきたそうだ。音の違いがわかるには高価なオーディオシステムが必要だという認識を払拭し、あえて安価なシステムで音の違いを体験することで、オーディオシステムに於けるケーブルの価値を理解してもらおうというものだ。
今回の説明会では、デノンのネットワークCDレシーバー「RCD-N12」とダリのスピーカー「OBERON1」というシンプルな組み合わせでマイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」を再生、オーディオクエストの「Rocket11」「Rocket88」「Robin Hood-ZERO」といった具合に線材の太さや構造の異なるケーブルでどんな風に印象が変わるかを確認させてもらった。
市販のケーブルからRocket11に交換すると、元気のいい、ワンランク上のサウンド感に変化する。そこからRocket88にグレードアップすると、音質的には同じ方向ながら、情報量と抜け感の変化が顕著に聴き取れる。最後にRobin Hood-ZEROでは、女声の艶やかさ、肉声感をまさに体感できる品質で楽しむことができた。
これらのケーブルを使って、音に違いがでてくるかを確認した
デノンのネットワークCDレシーバー「RCD-N12」とダリのスピーカー「OBERON1」
続いてデノン視聴室に移動し、サウンドバー「DHT-S218」とパナソニック「DP-UB9000」の組み合わせで、両機の間をつなぐHDMIケーブルで音が変化するかを体験させてもらった(DHT-S218はピュアモードにセットし、UHDプレーヤーからリニアPCM 2chで伝送)。
UHDブルーレイ『グレイテスト・ショーマン』を再生してもらうと、ここでも市販のHDMIケーブル、オーディオクエスト「CINAMON」「Dragon」の順番で音の違いが確認できた。
市販ケーブルでは、精一杯頑張って低域の迫力を出している印象もあったが、CINAMONでは音全体にゆとりがでてきて、安心して聴いていることができた。さらにDragon48ではピアノやドラムといった楽器の表現も自然で、音に力が増し、ヴォーカルに込められた悲しみも漂ってくる。
左が「CINAMON」で、右が「Dragon」
UHDブルーレイプレーヤーからサウンドバーの「DHT-S218」に音声信号を入力するHDMIケーブルを交換した
ケーブルで音が変わるかについては、色々な意見があるのは確かだろう。しかし実際にこれらのお手頃価格帯の製品で比較してみても、音質は確実に変化していることが体験できた。もちろん機器との価格バランスも重要なので、それを踏まえてお気に入りモデルをケーブルでグレードアップしてみてはいかがだろう。
なおおオーディオクエスト製品については、7月1日から価格改定やラインナップの整理も予定されている。それについては別途お知らせしたい。