昨2024年はスロバキアへ取材に行った。真空管アンプを製造するスロバキアのメーカーを訪問した。2023年には、パリとアテネにあるオーディオメーカーを取材で訪問した。

 80年代と90年代にはとてもよく旅をしていた。訪問先は主にアメリカで次がヨーロッパだった。80年代の始めのアメリカではのちに大きく成長するHi-Endオーディオの台頭を目撃したのだった。アメリカはサンフランシスコをゲートウエイ(出入り口)にしたので、一泊しただけも合計すると、サンフランシスコには29回行っている。

ハイフィデリティ・ミュージックストリーマー/プリアンプ:エバーソロ DMP-A10
¥825,000(税込)※2025年3月31日まではキャンペーン価格¥770,000(税込)で販売

●内部メモリー:4GDDR4+64GeMMC
●DACチップ:ES9039 PRO
●オーディオプロセッサー:XMOS XU316
●オペアンプチップ:OPA1612
●SSD:M.2NVME 3.0 2280サポート(最大4Tバイト2枚まで。SSDは同梱されていません)
●接続端子:HDMI(ARC)、デジタル入力✕4(同軸✕2、光✕2)、USB Type-B、デジタル出力✕2(同軸、光)、USB Type-A、アナログ入力✕3(XLR、RCA✕2)、アナログ出力✕2(XLR、RCA)、サブウーファー出力✕2、USB3.0✕2、SFP、RJ-45(10/100/1000Mbps)
●対応ハイレゾ信号:最大DSD512、PCM 768kHz/32ビット
●対応ミュージックサービス:Tidal、Qobuz、Highresaudio、AmazonMusic、Deezer、Radio Paradise、TuneIn Radio、Apple Music、KKBOX、WebDAV、UPnP
●ストリーミング:Roon Ready、Squeezelite、DLNA、TidalConnect、他
●寸法/質量:W430✕H117✕D310mm /12.5kg
※WiFi機能及びBluetooth機能は使えません

背面端子にはアナログ、デジタルの入出力端子を豊富に搭載する。出力端子は排他式なので、どれを使うかはアプリの「EversoloControl」から設定しておくこと

 かつてはアメリカとヨーロッパばっかり、行っていた。

 そして昨年スロバキアからの帰り途、これから行くのは、中国と韓国になるかなあ、と思っていた。

 この2〜3年ばかり、インターネットでデジタルオーディオ関連新製品の海外情報を閲覧すると、ミュージックストリーマー(ネットワークプレーヤー)ばかりだ。その製造元の国籍は、中国と韓国とが多いから、近い将来の海外取材先は、中国と韓国になるのかなあ、と結構本気で思っていたのだった。

 Eversolo Audio Technology社 (エバーソロ・オーディオ=Eversolo Audio)は、中国の深センで稼働している。経済特区として急激に成長した深センは、ハイテク産業に満ちていて、電子部品や電子機器メーカーがどっさりとある。中国のシリコンバレーとも例えられる。当然、人材も豊富であろう。

 エバーソロ・オーディオを運営する親会社のZidooTechnology社(ジドゥ=Zidoo)は、OEM/ODMプロジェクトのため60名以上のR&D(研究開発)チームを有するそうだ。その60名の内の30名以上が8年間の技術経験があるという。

 ジドゥ社は、ジドゥとエバーソロのふたつのブランドを運営し、ジドゥはAV関係の製品、エバーソロはオーディオ関係の製品をそれぞれ担当しているようだ。製品の輸出先は世界で50ヵ国以上になるそうだ。

傅さんのオーディオルームにDMP-A10を持ち込み、愛用システムにつないでNASに保存した音源や配信の音質をチェックしていただいた

 ミュージックストリーマー(ネットワークプレーヤー)を開発/製品化するためには、ハードウェアとソフトウェアの両面でコンピューターのエキスパートたちが必要だ。加えて多数のプログラマーが必要だ。深センというハイテク都市がまさにジドゥ社の仕事を支えていることになるだろう。

 エバーソロは2014年に創業した若いブランドでありながら、4モデルのミュージックストリーマー製品があり、昨2024年に初めて日本のオーディオマーケットに上陸した。昨年までは「DMP-A8」という33万円(税抜)の製品がトップだったが、今回、最上級機の「DMP-A10」(3月31日までのキャンペーン価格70万円、税抜)が加わった。DMP-A10はシャーシがアルミニウムのダイキャスト製なので、自重が鉄板プレスシャーシ製のDMP-A8が4.98㎏に対して、DMP-A10は12.5㎏になっている。

 エバーソロのミュージックストリーマーは機能が豊富でてんこ盛りだ。

 XLRバランスとRCAシングルエンドの両方のアナログ出力を備えていることから、当然D/Aコンバーターを内蔵しているし、アナログ入力とデジタル入力を切り換えるセレクター機構と音量調整機構を搭載しているので、プリアンプ機能付きということになる。

 DMP-A10では初めて、ネットワーク接続にSFPポートを搭載したのでモジュラーを挿入して光接続が出来るようになる。また、日本ではあまり人気がないが、海外のオーディオマーケットでは人気があるサブウーファーへの出力が、3D(モノーラル)と2ch(ステレオ)で装備されている。

実際の音を測定し、最適な補正を行う「ルーム音響補正テクノロジー」も搭載

DMP-A10には、測定用マイクセット「EM-01」(マイクとUSBケーブル、スタンドのセット)が付属する。これをDMP-A10につないでアプリから機能を起動させることで部屋の特性を判別し、最適な補正を行ってくれる

今回は試聴位置に測定用のマイクを設置している。イコライザー値は補正後にマニュアルで調整でき、複数のモードを保存できる。なお最新のファームウェアアップデートで弟機の「DMP-A8」でもこの機能が使えるようになっており、そのために「EM-01」の単品発売もスタートした(¥22,000、税込)

 さらに、DMP-A10では初めてルーム音響補正テクノロジー(ルームコレクション)が加わった。日本仕様のDMP-A10には別売で2万円する測定用マイクロフォンが付属しており、マイクをリスニングポジションに立ててLとRのスピーカーからサイン波のスイープ信号音を発生させて測定する。

 フロントパネル中央にある6.5インチサイズのLCDタッチスクリーンは各種の表示切り替えが出来る。針表示式パワーメーターにもなるのだ。もうさまざまな機能がてんこ盛りであり、ラーメンで言うならば、全部乗せである。

 てんこ盛りの多機能を誇るが、基本的な構成も抜かりがない。多機能な回路の信号がオーディオ回路へ飛び込まないようにするために、ノイズの干渉を避ける物理的な絶縁がされているという。クロックは44.1kHz系列と48kHz系列とのふたつの系列を持つOCXOを使い、ジッターレベルを50fsに抑えているそうだ。回路全体は、2台のリニア電源に支えられている。

 なお、本体底面に2台の4TバイトSSDが音楽ストレージとして収納出来る。つまり、DMP-A10を1台とアクティブスピーカー(パワーアンプ内蔵スピーカー)が1セットあれば、オーディオシステムが出来上がるのだ。

DMP-A10は背面にSSDメモリー増設用のスロットを2基備えており、それぞれに最大4Tバイト、合計8Tバイトのストレージを追加できる。ここにデータを保存すれば、NASなどをつながなくても音楽を楽しめる

付属のリモコンも質感のいい仕上がりだ

 エバーソロDMP-A10がわたしのオーディオの部屋に持ち込まれた。

 わたしのオーディオの部屋ではネットワーク環境を慎重に整備してある。エバーソロ製品を動作させるために、独自の動作アプリ「Eversolo Control」があり、AppleストアからダウンロードしてiPadに入れた。「Eversolo Control」はDMP-A10の設定に使い(やり易かった)、音楽再生は「Roon」で行った。わたしのオーディオの部屋のRoonCoreは Nucleus Rev.Bを使用している。

 リスニングポイントにマイクロフォンを立て、音場補正機能で測定したが、スピーカーのB&W「ノーチラス」はよく低音が伸びているし、スピーカーから出た音の反射は基本的に調整してあるので、伝達周波数特性は綺麗であったから音場補正機能は動作させなかった。

 フロントパネルの右端にあるボリュウムノブは「−100」を最小としてグルグルと回転する。内蔵の音量調整を使ってDMP-A10のアナログバランス出力をパワーアンプに直結すると、とてもキメ細かく音量調整出来ることがわかる。

DMP-A10はRoonReady対応モデル。今回の取材でも比較試聴の結果、Roonアプリから音楽再生を行っている

 明瞭で屈託のない、くっきり・はっきりとしたフレッシュな鳴りっぷりだ。音場を広々と空気感たっぷりに展開させるタイプではなく、音そのものがはっきりとして前にせり出させる。

 たとえば、マドリードの大聖堂にスタインウェイのコンサートグランドピアノを運び込んで、20歳代半ばの若いファドの歌い手(女性)をステレオペアマイクロフォンで録った「JoséEmbala O Menino」(96kHz/24ビット)演奏では、華麗で輝かしいスタインウェイピアノの音色と可憐な歌声が美しいしよく伸びる。女性ヴォーカルのパトリシア・バーバーの「Clique」(352.8kHz/24ビット)で、ウッドベースだけを従えたヴォーカルのノリがズンズンときてとてもリズミカルだ。

 DMP-A10からデジタル出力を取り出してわたしのオーディオ部屋で使っているD/Aコンバーター、dCS「RossiniDAC-APEX」へ接続すると、音楽の聴こえ方も音場の深みもグンと増した。DMP-A10がネットワークトランスポートとしてしっかりと動作していることの表れだ。

 ストリーミングはおよそ15種類に対応しており、Amazon MusicとApple Musicの両方をサポートしているDMP-A10は貴重な存在だ。基本性能をしっかりと構築した上で、多機能を盛り込んだミュージックストリーマーDMP-A10は、充実した音楽生活の「中央指令機器」となる。

操作用アプリ「EversoloControl」で、各種設定から配信操作まで可能

初期設定や操作用アプリには従来同様に「EversoloControl」を使う。最初のメニュー画面にDMP-A10が追加されているので、これを選ぶこと

画面左側の設定項目から「入力と出力」を選ぶと、入力切り替えや、出力端子にどれを使うかも任意に変更可能だ。出力端子は排他式なので注意されたい(今回はXLRバランス出力を使用)

音楽配信サービスではQobuzを試聴した。メニュー画面の左側で各サービスを選んで、オーディオ品質を設定する。QobuzではHiRes(ハイレゾ)クォリティを指定している

DMP-A10はeARC/ARCにも対応しており、HDMI端子を対応テレビにつなげばテレビの音も高品質で楽しめる。その場合、テレビ側の出力は「オート」または「リニアPCM」に設定する