コンパクトで優れたオーディオ機器を数多く発売しているクリエイティブメディアから、アクティブスピーカーの新製品として力の入ったモデルが登場した。その名も「Creative Pebble Nova」。宇宙に浮かぶ星をイメージした球体デザインで、RGBイルミネーションも採用したエンタメ性のある製品。もちろん、音質にもこだわっていて、同軸仕様のツィーターやパッシブラジエーターも搭載したアクティブモデルとなる。ここでは発売に先駆けて、その音質をじっくりと試してみた。

クリエイティブメディア
アクティブスピーカー
「Creative Pebble Nova」
オープン価格(直販サイト価格¥41,800税込)

Creative Pebble Novaの主な仕様
スピーカー構成:左右セパレート型ステレオスピーカー
ドライバー:3インチドライバー、1インチツィーター、パッシブラジエーター
周波数特性:55Hz~20kHz
SN比:>93dB
スピーカー出力:50W RMS / ピーク出力100W
再生モード:USBオーディオ、Bluetooth、AUX
入出力端子:USB Type-C(USBオーディオ)、AUX入力(ステレオ3.5mm)、3.5mmヘッドホン出力/ヘッドセット入出力、3.5mmマイク入力、USB電源入力(USB-C PD)
Bluetoothバージョン:Bluetooth 5.3
対応プロファイル:A2DP
対応コーデック:SBC
電源:65W USB PD電源アダプター
外形寸法:約W149.2×H153×D150.8mm
質量:約1.89kg(左右サテライトスピーカー/約1.8mスピーカーケーブル含む)
付属品:USB-Cケーブル(約1.5m)、3.5mm AUXケーブル(約1.2m)、スタンド(トール/ショート)、65W USB PD電源アダプター,クイックスタートガイド/ハードウェア保証書

デスクトップ環境で快適に音楽を楽しめる機能・性能を身に着けたアクティブスピーカー

 まずはCreative Pebble Novaの概要について紹介しよう。外観は見た通り、これまでのPebbleシリーズ同様の球体型。音の回折の影響を最小化できるうえ、ボディ内部に平行面が生じないので定在波などの音を濁らせる悪影響が少ない合理的な設計と言える。内蔵するスピーカーは、球体の中心に見える金色の1インチツィーターと3インチドライバーの2つ。そして球体の背面側には大口径のパッシブラジエーターも備えている。ツィーターとトライバーユニットはいわゆる同軸配置になっていて、ドライバーの前面にツィーターが浮かんでいるような配置となる。これは、2つのユニットの音源の中心を揃え、優れた音像定位を実現するための設計だ。

 また、ツィーター部の前面には保護カバーを兼ねた音響レンズが備わる。高域の放射特性を改善するためのものと思われるが、幾何学的な模様になっていて、見た目にも洒落たデザインとなっている。そして、駆動するアンプは50W RMSでピーク出力は100Wとなかなか強力なもの。小型サイズながら量感も楽しめそうだ。

 入出力端子は、USBオーディオ入力(USB Type-C)とAUXのステレオミニ。このほかにBluetoothにも対応しており、スマホやノートPCとワイヤレス(SBC)で接続することも可能。今後のアップデートにより、ヘッドホン出力/ヘッドセット入出力、マイク入力への対応も予定されており、オンライン会議などでのモニタースピーカーとしても使えるようになる。なお、左右のスピーカー間はUSB-Cケーブルで接続される。電源はUSB PDだ。

 今回は、ソース機器(小型PC)と直接USBで接続するほか、同社のUSB DAC内蔵のヘッドホンアンプ「Sound Blaster X5」とも組み合わせている(アナログ接続)。Sound Blaster X5は、Cirrus Logic社のDAC「CS43198」を2基使用したデュアル構成で、フルバランス設計のヘッドホンアンプも備えており、アナログ音声出力の音の良さも特徴の一つに数えられる製品。マイクのボリューム調整もできるし、入出力もUSBオーディオ、Bluetoothに加えて、光デジタル音声入力、アナログ音声入力(RCA)も備えているので、CDプレーヤーなどのオーディオ機器だけでなく、より多くのソース機器との接続が可能になる。例えば、薄型テレビと組み合わせれば(+Sound Blaster X5)、Creative Pebble Novaでテレビの音質を強化することもできる。そうした用途提案も加味して、今回テスト項目に入れている。

デジタル接続では、情報量があり、音場感の広い量感あるサウンドが楽しめる

 では、さっそく試聴に移ろう。スピーカー1個の質量は約1.89kgとそれほど重くはないので、セッティングは簡単。スピーカー単体ならばもっと軽いので、素早くできるだろう。面白いのは、スピーカー本体の軽さに対して、台座部分が金属製でずっしりと重いこと。これは、パワフルなスピーカーのエネルギー(振動)を、きちんと受け止めるための措置と思われる。この台座部分は脱着が可能だが、テーブルなどの上に置いて使う場合でも、台座を必ず組み合わせることが推奨されている。音質にこだわるならば、さらに、オーディオボードを併用するといいだろう。

▲ノートPCと組み合わせた際の大きさ比較。ポールスタンドを使うことで音像の位置を引き上げることができ、画音の一体感を向上できる。また、ラックやテーブルの強度が不足する場合は、オーディオボードなどの併用がおすすめ

 ちなみにCreative Pebble Novaには、一本足タイプのポールスタンドが同梱されていて、それを使えばスピーカー本体の位置を20cmほど高くすることができる。スピーカーユニット自体は、斜め45度の上向きに搭載されていて、デスクトップ使用で低い位置に置いた場合でも、耳にスピーカーが向くようになっているのだが、このポールスタンドを使えば物理的に高さをかさ上げでき、よりノートPCの画面との画音の一致が図られることになる(今回の試聴では、ポールスタンドを装着している)。

▲スピーカーの高さは2種類から選択可。手前が床置き、奥はポールスタンドを使用

 話は逸れるが、ポールスタンドを使うと、取り付け部分の周囲に埋め込まれたイルミネーションがより映えるようになり、製品名の通り星をイメージさせる演出でなかなかにカッコイイ。これは、本体上面のボタンや、PCとの組み合わせ時は専用ソフトで調光が可能だ。

 試聴ではまず、Mac miniとCreative Pebble NovaをUSBで直接接続し、音楽プレーヤー「Audirvana Origin」で再生した(デジタル入力)。クラシック曲を聴くと、やや線が細い感じはあるものの、情報量が多く細かな音も出る。そして、音場の広がりが豊かで、大編成のオーケストラをスケール感をもって再現してくれる。同軸配置のスピーカーらしく、音場だけでなく音像定位も良好。個々の音の粒立ちがよく、奥行を感じるステージが楽しめる。また、低音の再現もサイズを考えるとかなりパワフルで、一回り以上大きいブックシェルフ型スピーカーと同等の低音感がある。

アナログ接続では中高域の再現性が増し、より厚みの増した重厚感あるサウンドに

 次に、アナログ入力の音質をチェックするために、Sound Blaster X5と組み合わせてみた。Mac miniとSound Blaster X5をUSB接続し、X5のアナログ音声出力(RCA → ステレオミニケーブル)をCreative Pebble NovaのAUX入力に接続している。

▲アナログ接続では、同じクリエイティブメディアのヘッドホン&USB DACアンプ「Sound Blaster X5」(手前)を組わせている

 デュアルDAC構成やフルバランス構成のアナログ回路が効いているのか、中高域の再現はより自然な感触になり、厚みのある聴き応えのある音になった。細かな音まで出るので、ニュアンスや表情も豊かになる。デジタル接続でも魅力はあるのだが、アナログ接続(入力)では、Sound Blaster X5の助けもあって、よりオーディオ的な品位が上がる印象。この組み合わせでは、上述したようにPC以外の機器との接続も容易になるし、マイク入力や異なる入力からの音声をMIXすることもできるので(ゲーミングに便利)、音質だけでなく使い勝手も向上する。Sound Blaster X5でなくても、良質なDACやプリアンプをお持ちの方は、積極的にアナログ入力を使ってみてほしい。

 続いてこの接続でアニメ映画『ルックバック』の主題歌「Light Song」を聴くと、教会を思わせるような、天井の高い空間を感じられる響きがよく出てくるようになり、そこに実体感のあるボーカルが清らかで美しく鳴り渡る。後ろに並ぶコーラス隊も、並びや人数の多さがよく分かる再現となる。さらに、後ろにいるコーラス隊とボーカルの距離感もしっかりと描き分け(ボーカルが一歩前に出ている様が分かる)、両者の歌声が美しく溶け合いながら、聖歌のような美しい歌声を聴かせてくれる。これはなかなか見事な再現だ。

 宇多田ヒカルの「Science Fiction」では、彼女の自然体のボーカルをありのままにリラックスしたムードで描いてくれる。低音域は量感も多めでゆったりとした鳴り方だが、弛みすぎることはなく、しっかりとリズムを刻む。全体的にはゆったりとした感覚だが、気持ちよく音楽を楽しめるバランスだ。中低域が充実しているのでボーカルには実体感があるし、厚みのある再現は、生演奏のような雰囲気を感じさせてくれる。これは、Creative Pebble Novaの持つ音像定位の良さと、音場の豊かさ(伴奏が包み込むように広がってくれる)によるのだろう。

音質も高く、デザインも秀逸。アナログ接続でよりオーディオ的な楽しみ方が広がるアクティブスピーカーだ

 一般的なUSB端子からのデジタル音声入力でも、解像感の高い、情報量豊かなサウンドを楽しめるのだが、さらに質の高いDACを組み合わせたアナログ入力では、音の厚みや実体感に加え、より質感豊かな音を楽しめるようになる。言わば、組み合わせる機器による音の違いやグレードアップによる伸びしろもあり、スピーカーとしての実力は、かなり優秀と言える。なんといっても低音がしっかりと出るので、いかにも小型スピーカーという感じのこぢんまりとした音にならないのが良い。デスクトップの近接試聴のようにあまり大きな音が出せない環境でも、痩せた音にならず、音場が広いので包まれるような感覚を味わえるのも魅力だ。

 そして、Sound Blaster X5を組み合わせれば、ヘッドホンをバランス/アンバランス接続で鳴らすこともできるので、ヘッドホン、スピーカー再生のどちらもより優れた音で楽しめるシステムになるはず。音質の実力も優れたスピーカーとしては価格も手頃なので、ヘッドホン/イヤホン好きな方が、自宅でのリアルスピーカーシステムとして使うのにもおすすめ。なにより、見飽きた四角形のスピーカーとはひと味違う、球体型のデザインが気に入ったという人にも、満足度の高いスピーカーと言える。