遂にハイレゾ・サブスクのQobuz(呼び方はコバズ)が日本でスタートした。昨年から何回も延期を繰り返したが、10月24日に正式に発進。Qobuzはフランスで2007年にサービスを開始。2009年からCDロスレス品質で配信、2017年に世界で初めて最高192kHz/24ビット品位のハイレゾ音源ストリーミングサービスを開始した。まさに高音質配信の先駆者だ。このQobuzが、2005年8月にオンキヨーが開始したハイレゾダウンロードサービス「e-onkyo music」を買収する形で、日本参入を果たしたのである。すでに世界26ヵ国(日本含む)でサービスを展開し、1億以上の楽曲を擁する世界規模の巨大配信サービスだ。ちなみにQobuzの名の由来は中央アジアの古代楽器「Kobyz」から取った。

 

「ストリーミング」と「ダウンロード」

 すでに日本でもサービス中のApple Music、Amazon Musicのほか、日本では未サービスのTIDALなどハイレゾ配信サービスは複数あるが、これらはすべて「ストリーミング配信」のみ。Qobuzがそれらと決定的に異なるのが、「ストリーミング」(=FLAC形式のCDロスレスおよび最高192kHz/24ビットのハイレゾ)と「ダウンロード」(=CDロスレスから384kHz/24ビットまでのFLACと、2.8〜22.4MHz/1ビットまでのDSD)の両刀使いであることだ。「ストリーミング」で聴いて、気に入ったら自分の財産として「ダウンロード」してファイルを所有することもできる。

 Qobuzの基本コンセプトが<Rediscover Music>だ。Qobuzの国内統括マネージャー祐成秀信氏は「昔、よく聴いていた音楽や、新しく発見した音楽など、音楽の素晴らしさを再度、体験して欲しい。ハイレゾだから感動のレベルが圧倒的に違います」と力説する。そのためのツールが、Qobuzではもの凄く多い。具体的に説明しよう。

① プレイリスト

 ストリーミング楽曲はCDロスレスとハイレゾを合わせて1億曲以上も用意されている。とても選べない。そこで聴くべき指針を与えてくれるプレイリストが必須だ。オフィシャルプレイリスト(レコードレーベルやオーディオメーカーがキュレート=選び出したものも含む)がすでに全世界で約26,000あり、日本では約3,000がみられる。ユーザー作成のプレイリストも公開/閲覧可能だ。

②「Qobuz名盤」と「Qobuzissime」

 サービス画面のデザインも音楽発見に特化し、様々な方策で展開している。「Qobuz名盤」は、これをぜひ聴いて欲しいという楽曲の推薦、「Qobuzissime」は注目の新人の楽曲の推薦だ。後者は、世界各地のQobuzの担当者が会議を開き、推薦→全員が聴取→投票→Qobuzとしての推薦を決める仕組みだ。他の配信サイトのようなAIのアルゴリズムで推薦曲を決めるシステムはQobuzにはない。「キューレーションはあくまでも人の経験/知見で決めるのが最善だという判断です」(祐成氏)という姿勢が新しい。これまで「Qobuz名盤」では全世界で2,800以上、「Qobuzissime」では245の新人アーティストを推薦したという。

③ Qobuzマガジン

 文章で新しい音楽との出会いを提供する読み物だ。ニュース、インタビュー、パノラマ(特集記事)、Hi-Fiの4つのセクションで、編集。世界各国のQobuzマガジン記事を翻訳し、また日本からの記事を海外に提供するという。実際「シティ・ポップ」の記事が欲しいという海外から要望に応え、日本のQobuzでは、YMOが関わったシティ・ポップの記事を供与している。記事内からのリンクも可能で、文章からハイレゾ音源が直ぐに聴けるのも実に今様だ。

④ オーディオ連携

 オーディオ機器との連携もQobuzの重要なミッションだ。日本ですでにハイレゾ配信を始めているApple MusicとAmazon Musicと決定的に異なるのが、積極的なオーディオ機器との連携の姿勢だ。Qobuzではすでにリン、ルーミン、エバーソロ、ヤマハ……などの20以上のブランドのネットワーク機器が対応を表明、一部のメーカーはQobuz側のAPI(Application Programming Interface)提供もあり、オーディオ機器の操作アプリでの統合を果たす。

 Qobuz純正のパソコンアプリは、ビットパーフェクトで外部DACに接続できる。しかもWindowsアプリでは、音声データをOS側のオーディオエンジンをスキップして、直接出力する「排他モード」にもサポートしている。

 

音質はもちろん、膨大な楽曲の中から、リスナーが聴きたい曲にどう辿り着くかが定額制音楽配信サービスの勘所となる。Qobuzでは新譜、ジャンル、検索などの方法のほかに、目利きたちがキュレート(選んだ)プレイリストが多数提供されている。AIを使った機械的なリストではないことにこだわっている

 

「Qobuz名盤」や「Qobuzissime」という試みもユニーク。前者は必聴の名盤を、後者は世界各国のQobuz運営者たちが推薦された新人アーティストをふるいにかけて、全世界のリスナーにリコメンドする。出会ったことのない、優れた作品、アーティストを積極的にリスナーに届けるための仕掛けだ
 

 

Qobuzの本質は高音質である

 いろいろ説明したが、Qobuzの本質は「高音質」である。ハイレゾと一言で言っても、サービスによって実際の音質はピンキリだ。では、次からは、実際にそのパフォーマンスを探ってみよう。

> 時代は変わった。Qobuz × LINN その最高の音を聴く!

>本記事の掲載は『HiVi 2024年秋号』