コミュ障でぼっちの高校生が、意中の人と二人きりで異世界に迷い込んでしまう。漫画家・arawakaと政成和慶 監督が共同でストーリーを考案した青春SFラブストーリー『きみといた世界』が、いよいよ12月14日よりレイトショー公開される。片想い、異世界、格闘、秘された謎などなど、ある意味、若者が好む要素が全部入りした作品だ。ここでは、主人公・吉川碧衣を演じた中川可菜にインタビューした。

――公開、おめでとうございます。まずは、公開が決まった今のお気持ちをお聞かせください。
 ありがとうございます。遂に! やっと! に尽きます。撮影から2年半もお待たせしましたし、もしかして公開されないんじゃないかっていう不安もちょっぴりありましたから(笑)、こうして公開が決まって嬉しいです。

――出演はどのように決まったのでしょう?
 オーディションで選んでいただきました。私は高校生の時に、ミニシアターにはまっていて、それこそ毎週通っていたぐらい好きだったんです。その時に、いつかミニシアターで上映される作品で主演を飾りたいという目標というか、夢を持ったので、今回のオーディションで作品の企画書を見た時に、ミニシアターでの上映という文字を見つけて! 夢が叶うかもしれないと思って応募しました。

――オーディションはいかがでしたか?
 特に手応えみたいなものはなかったのですが、すごくやりやすかったのは覚えています。劇中のとあるシーンを監督の前で試演したのですが、すごく自然にできたという感触がありました。ただ、吉川碧衣は高校生(18歳)という設定だったので、私が高校生に見えるのかな? という不安はありました(笑)。

――最初に台本を読んだ時の感想・印象は?
 すごく読みやすくて、すんなりとその世界観に入ることができました。二人に関する伏線もきちんと回収されますし、そうやって人を好きになっていくんだなという流れも印象に強く残りました。自分が高校生の時と照らし合わせながら読み進めていって、とても楽しめました。そして、碧衣は誰とでもすぐに仲良くなれるタイプ、笑顔で話しかけるタイプだと思ったので、結構、当時の私と似ているなと思いました。

――吉川碧衣の役作りについて教えてください。
 高校生役だったので、自分の高校生の頃を思い出しながら、若さを出すために声のトーンちょっと高くしてみたり(笑)、当時は本当にどうでもいいことでも笑っていたので、笑顔も多めにしていました。

 加えて、周囲の友達を思い出しながら、この部分はあの子に近いかなとか、いろいろな人の雰囲気を過去の引き出しから持って来て、碧衣役にまとめた感じです。

――ご自身に近い役は演じやすいものですか?
 はい。碧衣自身はすごくピュアで、まっすぐで、優しい心を持っているし、暗い過去を抱えながらも、明るく振る舞っているので、私にとってはとても演じやすいキャラクターでした。

――学園ものということで、冒頭はクラスメイトもたくさんいました。現場の雰囲気はいかがでしたか?
 実は撮影はコロナ禍の最中(2022年春)だったこともあって、待ち時間にはフェイスシールドをしていたので、あまり和気あいあい……という雰囲気ではなかったんです。けど、同年齢のキャストが多かったこともあって、楽しく過ごせました。

 それよりも、クランクインの時にはまだ雪が残っていて、(学生服の)スカートってこんなに寒かったんだって、久々の制服で凍えていたのはよく覚えています。

――そんな雰囲気が、突然変わります。異世界に迷い込んだ当初、碧衣は驚くでもなく、結構冷静に見えました。
 図書館にファイルを取りに行ったはずなのに、あれ、急に人がいなくなってしまった……というだけで、異世界に迷い込んでしまったという実感がなかったからだと思います。

――その後、水野と二人きりの生活が始まっても、ドンと構えているように見えました。
 頑張るしかない、どうにかするしかないっていう、前向きな意識が強かったからだと思います。私も、何かが起きたらそれを受け入れて、その場の流れに任せる、というタイプなので、すんなり演じることができました。

――心強いですね。水野は両思いになるために、大分空回りします。
 可愛らしいですよね。話は飛びますけど、個人的に前髪って大事なんだなってすごく思いました(笑)。あるなしで、かなり(水野くんの)印象が変わったので。まあ、無理して頑張らなくていいから、普通とイケイケの中間ぐらいがちょうどいいかなって感じました。

――これまでの経験から、水野は監督に近い部分があるように感じていますが、実際の監督はいかがでしたか?
 そう聞くと、水野くんは監督がモデルになっているんじゃないかって思うぐらい似ている感じは受けました(笑)。こだわりがすごく強くて、一つのシーンに対して、何度も何度も画角(カメラ位置)を変えて撮られており、監督の熱意を感じました。

――話を変えまして(苦)、少しネタバレしますが、終盤には幸せそうなシチュエーションもありました。
 そこはある意味イメージカットなので、アドリブというか、エチュードに近い感じで、碧衣のキャラクターを崩さないように気を付けながらお芝居をしていました。ただ、物語的には終盤なので、当初はあまり感情を出していなかった碧衣が、徐々に感情を出して、心を開いているところを加味しながら、素直に楽しんでいる表情や仕草を出そうと考えてお芝居をしていました。自分自身でも楽しいシーン(撮影)になりました。

――では、読者にメッセージをお願いします。
 本作は“ピュアな青春ラブストーリー”だと思っています。重たい話ではないので、気軽な気持ちで観に行って欲しいです。加えて、水野くんが間違った方向で(碧衣に)アプローチするんですけど(笑)、その時の碧衣の反応も楽しんでほしいですね。試写を観た時に、思ったよりも顔に出ていたので(演技です!)、注目してください。まあ、その顔(表情)に気づかない水野くんも面白いなと思います。そこも注目ポイントです。

――ミニシアターで主演作が公開、という夢が叶いました。今後の抱負は?
 まだ公開前なので、ミニシアターで主演を飾るという夢の途中なんです。公開されて、みなさんに観ていただいて、評価をもらえるまでがセットだと思っているので、夢を叶えるところまで見届けてほしいと思います。そして、この作品を含めた出演作で、何かの賞を獲れたらいいなと願っています。

 それから、来年には大阪に実在するライブハウスを舞台にした出演作『ゴリラホール』が公開予定なので、合わせて注目していただきたいです。とても熱い作品なので、気に入ってもらえると思います。よろしくお願いします。

――ところで、中川さんは旅行関係の資格をたくさん取得されていますが、そうしたお仕事に携わっていたことがあるのですか?
 実は観光とか旅行が大好きで、観光学を学べる大学に通っていたので、在学してした・卒業した証として何かの資格を取りたいなと思って、いろいろな試験を受けて、無事取得することができました。

――映画のロケハンとか、スタッフ・キャストの移動・宿の手配とかできそうですね。
 確かに! やってみたいです。

映画『きみといた世界』

12月14日(土)~12月27日(金) 池袋シネマ・ロサにて連日20:30~上映 他 全国順次公開

<あらすじ>
高校3年生の水野卓(高橋改)はクラスメイトの吉川碧衣(中川可菜)に密かな恋心を抱いている。碧衣は、親友の横山理奈(保﨑麗)や陽キャの男子生徒たちにいつも囲まれており、コミュ障で陰キャぼっちの卓は、スクールカースト一軍の碧衣を陰から眺めることしかできない。ある日、卓と碧衣は、他に誰もいない謎の世界に迷い込んでしまう。

困惑している2人の前に、謎の男(弓削智久)が現れ、「2人共が元の世界に戻る条件は、2人の心を合わせ、元の世界とのバランスを取っている“コア”に人間が1人だと認識させること」と教わる。“心を合わせる”という方法がわからないながらも、試行錯誤する2人だが、卓のコミュ障が原因でそれもうまくいかない。そんな日々の中でも碧衣は卓の優しさに触れていくが、碧衣の目の前に碧衣が好きだった工藤佑太(阿部快征)が現れる。

果てして卓と碧衣は元の世界へ戻れるのか……。

<キャスト>
中川可菜 高橋改
保﨑麗 阿部快征 弓削智久

<スタッフ>
原作・脚本:arawaka 政成和慶
監督・編集:政成和慶
製作・配給:BASARA
2024年/日本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/103分
(C)2024 「きみといた世界」製作委員会

●吉川碧衣役:中川可菜(Kana Nakagawa)プロフィール
1997年10月16日生まれ。奈良県出身。
2010年、第14回ニコラモデルオーディションでグランプリを受賞。2020年、松竹主催による#リモート映画祭で、出演した短編映画「小さな話」が、審査員特別賞を受賞する。7代目イメージキャラクター「おけいはん」に選ばれた京阪電車など多数のCMに出演。代表作に『仮面ライダーブレイブ&スナイプ』(2018)、原田眞人監督『ヘルドッグス』(2022)優奈役、テレビ朝日「相棒season21」(2023)矢口綾子役など。

公式インスタグラム
@nakagawa_kana(https://www.instagram.com/nakagawa_kana/?hl=ja)