韓国発のWEBコミック『他人は地獄だ』が日本版にローカライズされ、サスペンスホラー映画として、いよいよ11月15日より公開される。格安のシェアハウス「方舟」の住人となった主人公ユウ(八村倫太郎)は、得体の知れない入居者たちとの共同生活を送ることになるのだが、入居した翌日には、先住の山口の姿が消えてしまい……。次々と巻き起こる疑惑の中、果たしてユウはどうなってしまうのか!? ここでは、サスペンスホラーの中にあって一服の清涼剤となる、ユウの恋人メグミを演じた岡田結実にインタビュー。出演の感想から役作りまで、話を聞いた。

――出演おめでとうございます。サスペンスホラーを謳うだけあって、なかなかにハードな作品ですね。
 ありがとうございます。そうですよね、一瞬思考回路が止まるほどの衝撃があります。観終わっても、結局あれは何だったんだろうという疑問が残りますから、1回で理解しきるのは、すごく難しいと思います。

――タイトルは“他人は”ですけど、結局は……。
 難しいところですね。環境や周囲のせいにしたくもなりますけど、ユウ(岡田演じるメグミの恋人)の周りに受け止めてくれる人がいたら、もう少し冷静に話し合えていたら、現実はいい方向に変わっていたんじゃないかって感じる部分もあります。

――いきなりネタバレしそうですけど(笑)、本作は本当に細かいところに伏線が隠されているので、見逃せないですね。
 本当にそうなんです。普通に観てもどのシーンも印象に残るし、逆にサーって流れていったところに、ちょっとしたヒミツがあったりして(笑)。恐らく、観ていただくと誰にも“アレ?”って思うところが絶対にあると思うので、そこに気づいていただけるだけでも嬉しいです。

――ハードな描写の多い作品ですが、岡田さん演じるメグミが出てくるシーンは、幸せな雰囲気に溢れています。
 幸せって思っていただけましたか? ありがとうございます。そこはもう、男性の思う理想の女性像がそのまま映像になっているので、それを汲み取っていただけて、嬉しいです。

 具体的には、ユウが求める女性像だったり、母親にこうして欲しかったという行動を、自分の中で役(メグミ)として落とし込めたらなと思って、いろいろ考えて演じました。ある意味、ユウと一緒に見ている世界はオアシスのようなもので、生きている心地がすると感じてもらえればいいなあと思いながら作っていました。

――そのシーンでの多幸感の表現は、どのように考えたのでしょうか。
 結構長く付き合っているという設定でしたから、言葉を交わさなくても安心して一緒に居られる。そういう雰囲気を考えていました。例えば、背中で寄りかかるとか、ハグするとか、膝枕するとかですね。そういう一つ一つの仕草――男性がしてほしいもの――は、監督が考えてくださったので、私は、最大限に母性を出して、お母さんみたいなゾーンになった時に、どんなことをするかということ――膝枕をしている時に軽く頭を撫でてあげたら、落ち着くかな~とか――を考えて、自分発信で表現するようにしました。

――大正解です(笑)。
 よかったです、そう言っていただけて安心です。

―― 一方でユウは、なかなかに複雑な人物です。
 現場でメグミとして見ていると、本当に心が苦しかったです。シーンごとにどんどん(人物像が)変わっていきますから――それはこの作品の狙いでもあるのですが――観て下さる方は、どれが本当のユウなのか分からなくなると思います。八村さん(ユウ役)と一緒に芝居をしていて、すごく刺激的でした。

――八村さんは、結構役に入り込む方ですか。
 そうだと思います。何度も煮詰めて、向き合って、追い込んで。会うたびに顔が変わっているので、すごいなって思いました。

――岡田さんも入り込む方ですか?
 私も、一人暮らしをするまでは母から、「結実が作品に入ると振り回されるから、あまり関わりたくない」って、ずっと言われていましたから、入り込む方だと思います。いつも、“お母さんごめんなさい”と思っていました。

 ただ、お母さんは本読みには前のめりで気持ち(感情)を込めて参加してくれるので、(一緒に本読みすることで)人とやる感覚がつかめて、すごく有り難かったです。自分が家で作ってきたもの(役)と、現場で生まれるものを融合させるには、やはり人と読み合わせるのは大切だと感じますから。今は一人でやっていますから、結構煮詰まってしまうこともあって、あぁ~お母さんに来てほしいって思うこともあります。

――役作りはカチッと決めるのではなく、現場で変わっていくタイプ?
 そうですね。自分の自我を通すというより、せっかくみんなで作品を創っているのですから、みんなと現場で変えていった方が絶対に楽しいと思うんです。固めすぎず、でもしっかりと固める。そうできるように今、努力中です。

――さて、話はかなり戻りますが、最初に台本を読んだ時の感想をお聞かせください。
 ずっと違和感のようなものがありました。映像ならもっと分かりやすいんでしょうけど、文字だけですから、自分で想像するしかなくて、方舟(シェアハウス)はどう考えてもおかしいし、キリシマ(栁 俊太郎)がおかしいのも分かる。ユウの冒頭の行動もおかしいというように、節々にすごく違和感があって、ずっとゾワゾワしていました。その上で、こういう環境に置かれた時、自分だったらどうするだろうとか、自分の中に地獄はあるのだろうかということを考えて……。後ろにキリシマいないよねって、怖くなってしまって、読み終えてから、心を落ち着ける時間が必要でした。

――そこまで話に入り込んでしまった?
 だから、夜に読んではダメだと思って(笑)。それでも、夜お風呂入る時はちょっと怖かったですし、監視カメラないよねって、心配になりました。

――キリシマも怖かったのですが、青木さやかさん演じる管理人も相当に異色でした。
 本当ですよ! 青木さんと共演させていただくのは2度目ですけど、もう最高でした! 青木さんならではのキャラクターを生み出されていて、生で見られなかったのが残念でした。

――青木さんの演じられた管理人役は、演じてみたいと思いますか?
 はい。これまで演じたことはありませんけど、非日常的な体験ですから、楽しみながらやっていたと思います。(役者同士の)やり合い合戦みたいなところもありますから、ある意味、役者冥利に尽きるし、絶対に出していけない闇の部分を、芝居を通して出せるわけですから、やっほ~いって思いながら、楽しみながら、こういう感情になれるんだって、情報(感情)収集するみたいな感覚でやっていると思います。

――ご自身のイメージから遠い(反対)役は、やってみたいですか。
 ぜひっ! お芝居がいいなと思ったきっかけが、『ゴールデンスランバー』という作品の、濱田岳さんが演じた通り魔役を観てだったんです。通り魔そのものは絶対にしてはいけないと思っていますけど、濱田さんのお芝居に魅了されてしまって。現実には起きてほしくないけど、映画だからこその問題提起ができる役というのは、やってみたいとすごく思います。同時に、幅のある芝居のできる役者でありたいとも願っています。

――ちなみに、本作のユウのように巻き込まれていく役柄はいかがですか?
 前に、『連続ドラマW 「夜がどれほど暗くても」』(2020)という作品に出演させていただいた時に、かなり残酷な設定の役をいただいたんです。その時はまだ、芝居の仕方も深くは分かっていませんでしたから、とにかくがむしゃらに突き進むしかなくて、全身を投げるような感覚でいました。そうしたら、日常生活の中で、突然涙が出てきたり、震えてしまうことがあって。だから、ユウの立場になったらどうなってしまうんだろうとは思います。でも、今は自分の芝居感みたいなものは少しは見い出せているし、いろいろな引き出しも備えてきていますから、昔よりはボロボロにはならないだろうと思いますが……どうでしょう? 少し怖さはあります。ただ、お話(役)をいただけるなら、全力で応えられるように、自分を守りながら頑張りたいです。

――最後に読者にメッセージをお願いします。
 観ていただく皆さんには、ユウに感情移入してもらったり、(ユウを)自分自身に置き換えてもらったり、あるいは『他人は地獄だ』というタイトルの通り、本当に地獄は他人だけなのかとか、そういうことを問いかけながら観ていただきたいと思います。よろしくお願いします。

映画『他人は地獄だ』

2024年11月15日(金)より グランドシネマサンシャイン 池袋、イオンシネマ ほか全国公開

<キャスト>
八村倫太郎(WATWING) 栁俊太郎 / 岡田結実 / 三浦健人 青木さやか 大倉空人 鈴木武 松角洋平 星耕介 / 日比美思 大野泰広 本多遼 / 濱津隆之 萩原聖人 ほか

<スタッフ>
原作:『他人は地獄だ』ヨンキ(「LINEマンガ」連載)
監督・脚本:児玉和土
主題歌:「HELL FIRE」 WATWING
配給:イオンエンターテイメント
企画製作:映画「他人は地獄だ」製作委員会
(C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

岡田結実 プロフィール
2000年生まれ。大阪府出身。幼少期からジュニアモデルとして活躍し、17歳の時に映画で俳優デビュー。以後、ドラマ、映画、テレビ(バラエティ番組、情報番組)など多方面で活動。現在、「news おかえり」「Finder TRIP」含め、計4本のレギュラー番組に出演中。

ヘアメイク:やすす
スタイリスト:武久真理江