『サスペリア』『ゾンビ』『フェノミナ』等に携わり、現在もなお活動する“ホラー映画のマエストロ”、ダリオ・アルジェントの初期作品、通称「動物3部作」が11月8日より新宿シネマカリテ、菊川Stranger ほかにて公開される。「動物3部作」(アニマル・トリロジー)の由来は、いずれも英語タイトルに動物の名前が含まれているから。

 1969年製作の監督1作目『歓びの毒牙』(英題:The Bird With The Crystal Plumage)は、イタリアを旅行しているアメリカ人作家が主人公。事件を目撃した彼の回想が克明に描かれ、見ているこちらもまるで彼の行動を追体験しているような気持になる。どんでん返し、最後の長ゼリフ(といっていいであろう)など、流れるような展開を持つ一本で、多くの後進映画人にもインスピレーションを与えたことだろう。「鳥の鳴き声」が物語の重要なファクターになっているほか、猫も登場する。原作はフレドリック・ブラウン、音楽はエンニオ・モリコーネ。

 1970年の『わたしは目撃者』(英題:The Cat o' Nine Tails)は、ひょんなことから事件に巻き込まれることになった盲目の元新聞記者・フランコと新聞記者のジョルダーニのコンビネーションと、冷酷そのものの犯行手段の描き方が見事。「カメラ」「写真」「現像」も物語のカギを握るが、このあたりはアナログのフィルムカメラの時代だからこそのストーリーテリングだろう。エンニオ・モリコーネの音楽がここでも効果的だ。

 1971年の『4匹の蝿』(英題:Four Flies on Grey Velvet)は、ロック・ドラマーであるロベルトを軸とした物語。何者かに追われている「被害者」であるはずの彼が、あるきっかけから「加害者」となり、まわりの人物が不審な死をとげていく。ストーリー上、この場合の「ロック」は「若さ」と同義語であるようにも感じられた。劇中にフランク・ザッパやジョージ・ハリスンのレコード・ジャケットが登場するのも興味深いし、アコースティック・ギターの穴の中にカメラを仕込んで弦の向こうに風景を見せるアイデアにも驚かされた。エンニオ・モリコーネを中心とする音楽も時にファンキーに、時に土臭く、ダンサブルだ。

 新たな字幕で味わう、古典の色あせない魅力。ホラー・ファン、サスペンス・ファンはもちろんのこと、音楽ファンにもおすすめだ。

映画『ダリオ・アルジェント 動物3部作』

11月8日(金)より新宿シネマカリテ、菊川Stranger、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:ダリオ・アルジェント
音楽:エンニオ・モリコーネ
提供・配給:キングレコード+Cinemago

★『歓びの毒牙(きば)』
監督・脚本:ダリオ・アルジェント
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:トニー・ムサンテ、エヴァ・レンツィ、スージー・ケンドール
1969年/イタリア・西ドイツ/97分/カラー/スコープサイズ/イタリア語モノラル
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★『わたしは目撃者』
監督:ダリオ・アルジェント
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ジェームズ・フランシスカス、カール・マルデン、カトリーヌ・スパーク
1970年/イタリア・西ドイツ・フランス/112分/カラー/スコープサイズ/イタリア語モノラル
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★『4匹の蝿』
監督:ダリオ・アルジェント
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:マイケル・ブランドン、ミムジー・ファーマー、ジャン=ピエール・マリエール
1973年/イタリア/104分/カラー/スコープサイズ/イタリア語モノラル
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