デノンから、新世代のフラッグシップとなるSACD/CDプレーヤー「DCD-3000NE」(¥462,000、税込)が発表された。12月下旬の発売予定だ。
同社では現在、SACD/CDプレーヤーを4モデルラインナップしている。そのうち上位モデルにあたる「DCD-SX11」と、110周年記念モデルの「DCD-A110」が年内で生産を終了する予定で(プリメインアンプの『PMA-SX11』と『PMA-A110』も同時)、今回のDCD-3000NEはその後継にあたるラインナップということだ。
製品のベースとしてはDCD-A110を継承し、そこに次の10年につながる技術として、「Ultra AL32 Processing」「D/Aコンバーター回路」「主要パーツのフルディスクリート化」などを盛り込んでいる
ではDCD-3000NEは、DCD-A110からどのような点が進化しているのか。
その第一がオーディオ基板の刷新だ。DCD-A110では2層だったが、これを4層に変更。アナロググランドを刷新して、デジタルノイズへの耐性を強化している。さらにDACチップの放熱にも配慮し、周辺部品も熱対策を強化することで、コンデンサーやピックアップの耐久性も向上したそうだ。
第二の進化点はミニマムシグナルパスの徹底となる。具体的には、デジタル基板とアナログ基板、デジタル電源基板の接合部をワイヤレス化した(小基板による接続)。ワイヤーはアンテナとしてノイズの放出、収集につながるので、これを排除することで不要な電気的干渉も低減できたそうだ。
さらに電源部の見直しも行われ、独自のSYコンデンサー、カスタムコンデンサーを多く投入している。電源回路なので、音楽信号はこの部分を通らないのだが、それでも音質にいい効果があったと言うから面白い。DCD-A110と同様にディスクリート電源を採用している(使用部品は異なる)。
DAC回路については、先述したUltra AL32 ProcessingをDCD-A110から踏襲する。オーバーサンプリング周波数を768kHzから1.5MHzに変更し、それをふたつに分けてDACチップのESS「ES9018K2M」に入力して処理を行う仕組みだ。
そのES9018K2Mは2ch DACだが、今回はこれをモノーラルモードで使っているそうで、DCD-3000NEには合計4基のES9018K2Mが内蔵されている。この方式にすることで出力電流が4倍となり、S/Nや聴感上のパワーの向上も果たしている。ちなみにDCD-A110ではDACチップにTI製を使っていたが、今回ESS製に変更したことに合わせて、電源や回路も新規設計したとのことだ。
D/A変換処理に大きな影響を与えるマスタークロックについても、DACチップの近くにクロックを置いて信号を供給することでジッターの影響を抑えている。なおクロックはDSD用が1基とPCM用2基(44.1kHz系/48kHz系)の合計3基が搭載される。
これらの改善を通して目指したのは、近年のデノンが標榜している「Vivid & Spacious Sound」だ。DCD-A110は登場当時、“今後10年間のベースとなるサウンドを実現した” とされている。今回のDCD-3000NEはそれを進化させ、鮮度や明瞭度、音の純度を磨き上げ、いっそう躍動感とスケール感のある音場を獲得している。
そのために、サウンドマスターの山内慎一氏が徹底した試聴とチューニングを実施した。結果として、DCD-A110と比べてもカスタムコンデンサーの数を大幅に増やし、高価なPPSC-Xコンデンサーも投入されている。抵抗もオーディオグレードが選ばれているそうだ。
なおDCD-A110ではドライブメカ部分の上側に銅のシールドが設置されていたが、今回はそれを廃止、別の方法で対策を行った。その他、ドライブメカのトップパネルもDCD-A110の銅製からアルミ製(A6061)に変更された。ここも、Vivid & Spacious Soundにふさわしいものはどちらかを再検証した結果だという。
もうひとつ、フロントパネルのディスプレイが液晶から有機ELに変更されたことでより細かい表示が可能となり、日本語表示も読みやすくなった。
製品説明会でDCD-3000NEのサウンドを体験する機会があった。プリメインアンプの「PMA-3000NE」とRCAアナログケーブルでつなぎ、スピーカーのB&W「801D4」をドライブしている。
まずデノンSACD/CDプレーヤーの進化を確認する意味で、「DCD-SA1」(2004年)と「DCD-SX1」(2013年)の音も聴かせてもらう。DCD-SA1はAdvanced AL24 Processingを初搭載したモデルで、山内さん(前出の現サウンドマネージャー)も音決めに参加した思い出の製品だそうだ。DCD-SX1はAdvanced AL32 Processing搭載モデルとなる。
これらは各世代のリファレンスモデルで、いずれも音質には定評がある。そこで実際にジェニファー・ウォーンズやドミニク・ミラーのCDを再生してもらうと、それぞれの違いがよくわかってきた。
DCD−SA1では、ジェニファー・ウォーンズの声がしっとりする方向で、低域も柔らかい表現になる。ドミニク・ミラーも全体的に穏やかな再現で、低域が伸びやかだ。続いてDCD-SX1では、ジェニファー・ウォーンズの声がクリアーになって、ドラムの勢い、弾み感がアップする。ドミニク・ミラーも音場が大きくなり、余韻の再現も向上している。
DCD-3000NEで同じディスクをかけてもらうと、ジェニファー・ウォーンズの声のフォーカスがアップし、ドラムのアタックも明瞭だ。ドミニク・ミラーは低域が豊かでありながら、ブーミーな印象はない。音のレイヤーもしっかり描き出されている。最新モデルらしいキレのよさ、S/Nの高さが魅力で、これならボリュウムを上げてもうるさく感じないだろう。
ここからDCD-3000NEで、様々なジャンルのCDやSACDを再生してもらった。どのソースでも共通しているのは、音のクリーンさ、S/Nの高さだ。クラシックのシベリウス「レンミンカイネン組曲」は豊かな響きを持って広がり、ホールの反響までしっかり表現されている。ローリング・ストーンズ「刺青の男」(リマスターSACD)でもスネアの細かな響きや、徐々に盛り上がっていく演奏の様子が生々しい。
ケイコ・リー「フラジャイル」はヴォーカルの粒立ちが明瞭で、音の輪郭も綺麗に描き出す。それぞれの楽器の馴染みも自然だ。ボブ・ジェームスの「Feel Like Making Live!」もピアノのタッチ、ドラムの圧倒的なパワーなどがリアルで、まさに眼前で演奏されているかのような体験ができた。
DCD-3000NEは、アナログ音声出力がRCAアンバランスのみであること、USBなどの外部入力を備えていないといった割り切りはあるが、SACD/CD再生専用機としてのスペックは充実しているし、そのクォリティもひじょうに高い。ディスクメディアを存分に楽しみたいという方は、DCD-3000NEの音を確認していただきたい。