ドルビージャパンは、第37回東京国際映画祭にあわせて「Dolby Cinema Japan Awards」を新設した。日本のコンテンツ産業の国際的な発展と鑑賞体験の劇的な向上に貢献し、ドルビービジョン/ドルビーアトモスで制作された作品と製作者を対象に選考を行ったもので、国内10館のドルビーシネマで上映された作品から選ばれている。

 そして去る10月31日には、「Dolby Cinema Japan Awards 2024」の授賞式が開催された。会場となった丸の内ピカデリー5Fには該当作品の受賞者も多く詰めかけ、盛況を呈していた。

Dolby Laboratories日本法人社長(兼)東南アジア・太平洋州統括 大沢幸弘さん

 まずDolby Laboratories日本法人社長(兼)東南アジア・太平洋州統括の大沢幸弘さんが登壇し、今回のアワードの趣旨を説明してくれた。

 大沢さんは、会場となった丸の内ピカデリーについて、世界でも有数の最新鋭最先端最高級の映画館であると紹介。今回の授賞式ではその環境で、受賞作品のハイライトシーンを上映すると説明した。

 また大沢さんは、ドルビーシネマの登場により、映画の臨場感、立体感 30年ぶりの技術革新が起こったと宣言、これまでと違う映画体験が可能になったことを紹介した。同社ではドルビービジョン、ドルビーアトモスの作品を世界中で作ってもらっているが、そこでは技術使用料や契約は不要とのことで、沢山の人に見てもらえるよう、これらの技術を使って、いい作品をますます素晴らしい作品にしてもらいたいと語った。

 Dolby Cinema Japan Awardsについても、ドルビーシネマで人々を勇気づける作品を作ってくれるクリエイターに感謝できるイベントになればと願っているとのことだった。

 そこから受賞作品の発表が始まり、今回の選考作品と登壇者のコメントは以下の通りだった。

「Dolby Cinema Japan Awards 2024」初Dolby Cinema作品

水谷 豊監督

実写映画部門:『轢き逃げー最高の最悪な日ー』
●水谷 豊監督のコメント:
 「Dolby Cinema Japan Awards」の記念すべき第一回で受賞、そして表彰される、想像もしてないことです。それだけで今幸せと興奮に包まれています。そもそも友人を介して大沢社長とお目にかかったのが運の尽き(笑)、いえ、幸運の始まりでした。

 『ひき逃げ〜』の撮影が始まる時にドルビービジョンとドルビーシネマのプロモーションを見せていただきましたが、その時の衝撃と感動は今も深く残っています。ぜひ、ドルビーシネマで作品を作りたいと思いました。

 ただ、当時(2019年)日本ではドルビーシネマの仕上げができなかったんですね。ハリウッドに行かなくてはならなかったんですが、僕はどうしてもスケジュールが取れなかったので、すべてを撮影監督の会田正裕さんに任せて、時間をかけて仕上げていただきました。

 それはスタッフみんなの思いでした。その思いを持って作った作品が今日こうして受賞する。僕を含めてスタッフ全員が幸せな気持ちになりました。ここに感謝いたします。ありがとうございました。

舞台作品部門:『舞台 ゲキ×シネ「偽義経冥界歌」』
●株式会社ビレッジゲキシネ プロデューサー 金沢隆信さんのコメント:
 この作品は2020年2月から4月にかけて上演される予定でした。コロナで開始2週間で休演となるなど、悲痛な思いをした作品でもあります。

 撮影に関しても、当日までできるのかどうかもわからない状況で、そういう意味では思い出深い作品になっています。キャストをスタッフがひじょうに悔しい思いをしながら作った作品なので、このような賞をいただけるということが本当に嬉しい限りです。どうもありがとうございます。

新作アニメ部門:『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
●京都アニメーション 石立太一監督のコメント:
 このような素晴らしい賞をいただきまして、本当にありがとうございます。この作品は通常版として完成しており、劇場公開もしていたんですけれども、ドルビーシネマ化のお話をいただいて、正直完成版で完璧だと思っていたので、最初はちょっと懐疑的な目で見ていました。

 ただ、ドルビーシネマ版の効果とか、どういう表現ができるのかというお話をいただいて、実際にポストプロダクションのキュー・テック(現クープ)でカラーグレーディングを担当していただいた方と一緒に頑張って仕上げました。僕自身もドルビーシネマで見て、こんなに作品の奥行というか、音響も映像も広がるんだということを実感しました。

 当社としても、私としても、今後もこの技術を使ってよりよい作品を多く作っていければと思っております。このたびは本当にこの賞をいただけてありがたかったです。ありがとうございました。

堤 幸彦監督

音楽ライブ部門:『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』
●堤 幸彦監督のコメント:
 本当に、このような賞をいただきましてありがとうございます。私は映画とかドラマとか色々やっているんですけども、もう何十年もアーティストのライブ映像を数えきれないぐらい撮ってきています。この作品はその中でも集大成と言いますか、ありとあらゆるノウハウを詰め込んで作った作品です。カメラも全部で125台ぐらいありました。それは余す所なく、臨場感を伝えるためでもあります。

 当日東京ドームにいた人も、初めて映像でこのライブを体感する人も同じように臨場感が得られる、言葉では簡単ですけども、これは実はいろんな数値的な計算とかあって、広い会場であればあるほど音が届く時間が違うわけです。ドルビーさんの力を借りてその辺りの数値をすべて割り出して、本当の意味での臨場感を醸し出すことができたと思っております。本当にありがとうございました。今後もこういう世界最高の技術を使って、作品が作れればと思っております。

「Dolby Cinema Japan Awards 2024」特別賞

スタジオジブリの奥井 敦撮影監督(左)と、ポスプロ担当 古城 環さん(右)

『君たちはどう生きるか』
●スタジオジブリ奥井 敦撮影監督のコメント:
 このたびは、このような素晴らしい賞をいただきまして、本当にありがとうございます。『君たちはどう生きるか』という作品は昨年公開しましたが、宮﨑 駿監督の10年ぶりの新作で、制作には足掛け7年かかっています。

 制作が決まった当時、私たちもどうやって取り組もうかと考えてたんですけども、これまでのやり方では限界が来てるなという風に感じていました。それを打開する策として、ドルビービジョンとドルビーアトモスという技術を採用させていただいています。それによって表現の幅は本当に広がって、宮﨑監督の目指す作品作りに貢献できたと考えています。

 実は2Dの手描きアニメーションの制作現場では、ドルビービジョンという映像制作に資するデータを作る術がまだ当時なかったんです。それを探るべく、旧作のデータとか、当時制作していた短編作品を流用して、ロスまで行ってテストを繰り返していた記憶がございます。そこで初めて見たドルビーシネマのデモンストレーションに衝撃を受けたことを覚えています。

 最後に、この作品の制作を支えてくださったすべての方々に感謝を申し上げたいと思います。

●スタジオジブリ ポスプロ担当 古城 環さんのコメント:
 私は主に音響を担当しました。合言葉は “引き算” ということで、宮﨑監督は前作はモノーラルで音源を作りましたが、今回ドルビーアトモスということで、監督にうるさいと怒られないように、一生懸命みんなで頑張って作りました。今回このような賞をいただき、本当にありがとうございます。

山崎 貴監督と、東宝株式会社の岸田 一晃プロデューサー。左端はプレゼンターのコシノジュンコさん

『ゴジラ-1.0』
●山崎 貴監督のコメント:
 今回は素晴らしい賞をいただきましてありがとうございます。ずいぶん前からドルビーシネマで映画を作りたいという憧れはあったんですけど、ようやく『ゴジラ -1.0』で実施できました。

 ゴジラの恐怖というのは常に大きなテーマで、臨場感っていうのはものすごく大事なんですけど、ドルビーシネマの絵と音でそれが何倍にもアップしていくのを目の当たりにして、本当に素晴らしい技術を作っていただいたなっていうことを改めて感じました。

 僕らはとにかく一生懸命映画を作るんですけど、それをさらに底上げしてくれるというか、この技術があるからこそ、ゴジラがより恐ろしくなったんではないかという風に感じていて、ドルビーシネマの技術には感謝しています。ありがとうございました。

『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏@NIPPON BUDOKAN 2023 』
●AMUSE 石井宏祐プロデューサーのコメント:
 まずはこのような賞をいただきまして、誠にありがとうございます。最初に松竹さんからこのお話をいただいたとき、福山雅治自身は、自分が監督をやるということはまったく考えておりませんでした。どちらかというとライブフィルムというものを作ること自体に懐疑的というか、生のライブを超えることが難しいんじゃないかというところからスタートしていきました。

 ただスタッフみんなすごくやる気で、色々アイデアを重ねてスタッフの熱量とともに進めていたんですけれども、福山さん本人はなかなか気持ちが乗ってこないという、そんな状況もありました。

 しかしドルビーアトモスの音響作業をするためにスタジオに入ってから、福山さんの音楽的好奇心、探究心のスイッチが入る瞬間がありました。アーティストが理想とする音の聴こえ方というものが、ドルビーアトモスによって再現できるんじゃないかという可能性を感じ取り、そこから一気に制作にドライブがかかり、映画作品として完成しました。

 ここまで熱意を持って制作に協力してくださったスタッフの皆様、また我々としても歴史的なライブをこのように永遠にパッケージングできる、そういった技術のすべてに感謝を申し上げます。

豪華な盾も準備されていた

『BABYMETAL LEGEND -43 THE MOVIE』
●Hiroya Brian Nakano監督のコメント:
 このたびはこのような素晴らしい賞をありがとうございます。今作は、彼女たちのライブのパフォーマンスの魅力と臨場感を詰め込んだ作品になっております。これから海外での上演も決まっているようなので、たくさんの方に見ていただけるとうれしいなと思っております。本日はありがとうございました。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
●任天堂 代表取締役フェロー 宮本 茂さんのビデオメッセージ:
 このたびは特別賞をいただきありがとうございます。本作は2023年4月に公開して以来、世界中でたくさんのお客さんにご覧いただくことができました。

 この映画は任天堂とイルミネーションのスタッフが一緒になって、画面の細かいところにまでこだわって制作したものです。ですから、ぜひ劇場の大きな画面と迫力のあるサウンドで見てもらいたいと話をしていました。それを特別な体験にしてくれたのがドルビーシネマでした。日本語版と英語版の台本を同時に作りながら進めてきましたが、日本語版もドルビーアトモスに対応いただきました。

 幅広い年代の人にゲーム体験を思い出していただくと同時に、スーパーマリオの世界をよりリアルに感じてもらうためにも、音楽とサウンドはとても重要でした。この映画を体験して笑顔になってもらいたいという私たちの願いを叶えてくれたドルビーさんには心から感謝しています。

『サカナクション』
●ボーカル 山口一郎さんのビデオメッセージ:
 今回、「Dolby Cinema Japan Awards 2024」の特別賞を僕たち、サカナクションで受賞させていただき誠にありがとうございます。2013年にはライブで初めて6.1chサラウンドを導入するにあたって、ドルビーさんにはたいへんご協力をいただきまして、前人未到の2万人規模でのサラウンド公演を実現することができました。

 2019年にはライブのみならず、映像作品にもドルビーアトモスを採用させていただき、いかによい音楽体験をリスナーに届けるかという観点から、サカナクションにとってドルビーの技術はなくてはならないものとなっております。

 11月29日には最新のサカナクション復活ツアーを収めた『SAKANAQUARIUM 2024 "turn"』を公開します。本作もドルビーアトモスで、メンバー自ら立ち会って映像作品としてのライブのよさが際立つように制作を行いましたので、ぜひ皆様にご覧いただければと思います。

今回受賞した皆さん

東映株式会社
●代表取締役社長 吉村文雄さんのコメント:
 本日はこのように栄えある賞をいただき、本当にありがとうございます。日本で初めてドルビーアトモス対応のダビングステージを導入したということが受賞の理由となってます。これには少し巡り合わせがございまして、大泉の撮影所に東映デジタルセンターという施設がありますが、こちらは2010年の竣工です。計画時は7階建ての建物だったんですが、練馬区の条例変更によって4階建てにせざるを得なくなって、新たなダビングステージの導入をその時は諦めたという経緯があります。

 その後、やはり新しいダビングステージが必要だということで計画が再始動した時に、私どものスタッフがドルビーアトモスのデモを拝見する機会を頂戴して、それにひじょうに感銘を受けて、彼の熱意で2013年に購入するという経緯となりました。

 当初の通り7階建ての建物が建っていたら、ドルビーアトモスのシステムを入れることもなかったやも知れないんですけれども、これも何かの巡り合わせだと思っています。これからも日本の映画界を含めて貢献していきたいと思っておりますし、改めてドルビーさんと一緒に作品作りを進めてまいりたいと思っております。

IMAGICAエンタテインメントメディアサービス
●代表取締役社長 執行役員 中村昌志さんのコメント:
 普段は賞とあまり縁のない業種でございますので、このような賞をいただいてたいへん嬉しく、光栄に思っております。ドルビーシネマの仕上げや試写に関わったすべてのスタッフを代表して心よりお礼申し上げます。

 弊社はおよそ90年前にフィルム現像所としてスタートして以来、映画の作り手の方々が求める映像と音響を劇場にお届けしたいという思いをひとつにして仕事をしてまいりました。時代時代に合わせて、その時の最高のテクノロジーの導入に努めてまいりましたが、ドルビーシネマはまさにその代表例だったんじゃないかなというふうに思っております。

 このような賞をいただいたことを契機に、今後も映画と劇場エンタテインメントが最高のコンテンツ体験であり続けられるように、努力をしてまいりたいと思います。改めてお願い申し上げます。

戸田広松を演じた西岡徳馬さん

『SHOGUN 将軍』
●西岡徳馬さんのコメント:
 素晴らしいですね、どの作品も。改めてドルビーの凄さを感じさせてもらいました。

 2月にハリウッドに『SHOGUN 将軍』のプレミアを見に行った時に、ハリウッドの一番でかい映画館で1話、2話を通しで上映してくれたんですが、その時のドルビーの素晴らしい音の響き、最初に嵐のシーンで船が難破するシーンがあったんですけど、木造の船がギシギシ揺れているのをハラハラしながら見て、こんなすごい作品になったんだと感動しました。

 2021年8月にバンクーバーに行って真田くんに久しぶりに会って、日本人の精神と武士道の精神、そして本当の時代劇を伝えたくて、俺はこの作品の出演を受けたんだっていう話をしたら、僕もまったくその通りですって返事だったんです。

 真田広之と西岡徳馬がついていてこんな作品だったのかって言われないような本当の時代劇をお見せしようっていうことを握手をして誓っていたから、エミー賞の時にベストアクターで真田広之って呼ばれた時には自分のことのように嬉しかったですね。

 11月16日から日本でも劇場でこの作品が見られるということで、やはり迫力が違うので、ーー配信をご家庭のテレビで見ている方には申し訳ないんですけどもーーできるだけ大きな画面で見ていただけたらなと思います。