今週の金曜日まで幕張メッセーで開催中のデジタルイノベーション展示会「CEATEC 2024」から、StereoSound ONLINE編集部が注目した展示を紹介する短期特集の最終回をお届け。
TDKのブースには、同社の小型レーザー光源を搭載した網膜投写型VR/MRデバイスが展示され、その効果を体験したいという来場者も多く並んでいた。TDKでは、もともとデバイス内で光を合成していた空間光学方式から、ひとつの部品だけで光を合成できる平面光波回路方式に変更することで、メガネ/ゴーグルのつる部分にレーザー光源を収納できるようになったという。
この光源にQD Laser社のデバイスを組み合わせることで、人の網膜に直接映像を投写、肉眼で見ている映像に違和感なく合成された情報を取得できるようになるわけだ。さらにアイトラッキング用の小型カメラも内蔵し、眼球の動きに応じて最適な映像を投写してくれる。
静電式タッチパネルの新しい使い方を提案していたのは、ジャパンディスプレイのZINNSIA(ジンシア)と名付けられたシステムだ。もともとジャパンディスプレイの静電式タッチパネルは感度が高く、パネルの上に木材や植物(電気が通る素材)を置くことで、それらに触れるだけでスイッチとして使えるようになるという(人がどの部分に触れたら、どういった動作を行うといったことは事前に設定しておく)。
同社のブースには木材や大理石、鉢植えが並んでおり、それに触れると電気がオン/オフしたり、音声が流れたりといった動作が可能になっていた。この他にも、ポスターの裏に静電式タッチパネルを仕込むことで表に描かれた絵に応じた音が再生できたりといった提案もあり、知育などの分野でも応用できそうな技術になっていた。
外出先から、自宅のPCなどに録画したコンテンツを楽しむためのアプリを提供しているデジオンでは、プライベートクラウドストレージサービスの新提案「DiXiM U Cloud」も展示されていた。PCに記録した番組やカメラで撮影した映像をクラウドにアップロードすれば、場所を気にせずアプリのDIXIM Playで楽しめるという内容だ。
他にもAIを使った音源分離アプリも開発中とかで、自分の歌声を音声データをボーカル、ドラム、ベース、ピアノなどに分けてくれるという。こうすることで、自分がどんな風に声を出しているのかも分析できるし、ボーカル以外を取り出すことでカラオケ音源も簡単に再生できることになる。近年AIによる音源分離の活用の場は広がっているが、その中でももっとも身近な提案といえるだろう。
太陽誘電のブースには、同社の積層圧電アクチュエーターを使った薄型スピーカーも展示されている。積層圧電アクチュエーターは電圧を加えることで振動を発生できる素子で、様々な素材に貼り付けることでそこから音を発生できる。
過去には音楽再生用として提案されたこともあったが、取り付ける素材やサイズによって音が変化することもあり、オーディオ観賞用としては使いこなしが難しかった。それもあり、今回はアナウンスなどの情報伝達用としての提案に注力していくとのことだ。
他にも積層圧電アクチュエーターは、超音波周波数で駆動するとパネルの表面に定在波が励振され、触感が変化する。これを応用してスイッチごとに異なる触感を設定すれば、ブラインドタッチであっても今自分がどの操作をしているかを “感じ取る” ことができるようになる。車の運転中にカーオーディオのボリュウムを操作する、といった用途にもぴったりだろう。