クリプトンから、ブックシェルフ型スピーカーの新製品「KX-1X」(¥357,500、ペア、税込)が12月下旬に発売される。人気モデルの「KX-1」をベースに、“ハイレゾ時代のミュージックモニター” として進化を果たしたモデルだ。

左が「KX-1X」で右が「KX-1」。どちらもモアビ(南洋桜)のつき板ポリウレタン仕上げを採用する

 KX-1は10年前に同社の戦略モデルとして発売され、そのコストパフォーマンスの高さからベストセラーとなった(ウーファーにフェライト磁石を初採用したモデルでもある)。KX-1Xは、キャビネットやユニットはKX-1をそのまま踏襲し、新たにバイワイヤリング接続に対応するとともに、内部の配線材を変更している。

 搭載されたユニットは砲弾型イコライザー付ピュアシルク35mmリングダイアフラムツイーターとクルトミューラー製17cmコーン型ウーファー(25cmサイズの振動板から切り出して使用)で、40Hz〜50kHzという再生帯域を獲得した。

 このユニットと18mm厚の針葉樹系の高密度パーチクルボードによるエンクロージャー(裏面はMDF)はKX-1から変更されていない。なお、クリプトンのスピーカーはピアノブラックやスモークユーカリといった仕上げが中心で、オーディオルームにはともかく、リビングなどでは少し暗い印象もあった。KX-1Xはモアビ(南洋桜)つき板ポリウレタン仕上げを採用し、明るいトーンに仕上げているのも特徴だ。

左が「KX-1」で右が「KX-1X」。スピーカー端子以外の外観はほぼ同一だ

 近年のクリプトンスピーカーはバイワイヤリングでの使用を推奨しており、今回のKX-1Xもバイワイヤリング対応スピーカー端子を搭載している。内部配線材も変更され、ウーファー用にはPC-Triple Cを使ったケーブル、ツイーター用にはマグネシウムの芯材の周りにPC-TripleCを6本撚り線としたケーブルをユニットに合わせて使い分けている。

 なお同社サウンド・エンジニアの渡邉 勝さんによると、内部配線をPC-Triple Cに交換しただけでは、ハイバランスな音になってしまう可能性もあるそうだ。そこで、ウーファーの最適低域振動(Q0)を取り直し、試聴を繰り返してチューニングを追い込んでいったという。

 新製品説明会で、KX-1Xのサウンドを体験することができた。まずベースモデルからの進化を確認するために、KX-1との比較試聴を実施。ハイレゾ音源で女性ヴォーカルを再生してもらうと、KX-1もウェットな質感で聴き心地のいい音を楽しませてくれる。ダイアナ・クラールの声が優しく響いてきて、これで充分満足できるのでは、という印象だ。

「KX-1X」をバイワイヤリング接続で試聴した

 次にKX-1Xをバイワイヤリング接続で再生すると、こちらはより緻密な音作りと感じる。ステージの見晴らしがクリーンになって、空間もひとまわり広くなった。楽器の微妙な音色、小さなレベルの情報までていねいに再現されてきて、とても同じユニット、同じエンクロージャーを使ったモデルとは思えないほどの変化だ。バイワイヤリング接続になったことで、それぞれのユニットの実力が引き出されているのだろう。

 大きくいうと、KX-1がCDの情報量を引き出して楽しませようといった方向の音なのに対し、KX-1Xではもっと現代的なサウンド、ハイレゾ音源が持っているより細かい情報まで描き出そうとしている、そんな違いを感じた。

 ハイレゾ音源の愛好家は、クリプトンの現代サウンドを体現した注目モデル、KX-1Xを一度体験してみてはいかがだろう。

「KX-1X」の主なスペック

●型式:2ウェイ2スピーカー、密閉型
●使用ユニット:砲弾型イコライザー付ピュアシルク35mmリングダイアフラムツイーター、クルトミューラー製17cmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:88dB/W/m
●インピーダンス:6Ω
●クロスオーバー周波数:3500Hz
●再生周波数帯域:40Hz〜50kHz
●寸法/質量:W224✕H380✕D319mm/9.1kg