中村耕一と遥海をW主演に迎えて贈る音楽ファンタジー『はじまりの日』が、撮影地・名古屋での先行公開(10月5日)に続いて、10月11日より全国公開される。かつて一世を風靡した歌手だった「男」(中村)と、歌を志ながらも日々の生活の中に埋没してしまっている「女」(遥海)が偶然の出会いを果たし、やがて未来へ向けてともに歩みを進めていくという物語。ここでは劇中で「未来の歌姫」として見事な歌唱を披露している遥海に、映画初出演の感想を聞いた。

――よろしくお願いします。まずは、試写をご覧になった第一印象は?
 感覚的にまっすぐ見られない。言葉にできない感じですね。役がけっこう控えめって言うんですか? 普段の私は元気な人なので。

――控えめな役作りは、どのようになさったのですか?
 孤独を怖がらないことですね。「女」の役をする上で考えたのは、できるだけハッピーでいないこと。待ち時間が長い時は、ホテルに戻って自分の気持ちのペースを保っていました。映画の場合はミュージカルと違って、上映される順にシーンを撮っていくわけではないので。中村耕一さんを責めるシーンを撮るときは、「あまり中村さんと一緒にいちゃダメだな」と思っていました。母親役の高岡早紀さんとは、クランクインの日に初めてお会いして、その後いきなりケンカするシーンがありました。毎回、気持ちの整理を気にしながら撮影に向かっていました。

――映画の中で演じている「女」=「未来の歌姫」とご自身が重なるところはありましたか?
 結構ありました。私も小さい頃から歌手になる夢をずっと持っていましたが、13歳でフィリピンから日本に来た頃は夢どころではない感じでした。それは言語(日本語)が分からなかったこと。今、直面している問題を1個ずつクリアしていかないといけないということに関しては、すごく「女」に共感する部分がありました。「女」は、自分のことではなくて、母親のことを考えなくてはいけないし、父親はいなくなってしまって、周りには誰もいない状態で、ずっと横にあったのが音楽でした。私にとっても音楽が救いだったのです。4年前まで自分もアルバイトをしていたので、バイトをしながら歌を目指している部分では、自分のあの頃を生きている感じでした。

――日比遊一監督の印象について教えてください。
 すごくフランクに話を聞いてくれる方でした。私はセリフを言うことに苦手意識があって、普通に話す分には日本語は出てきますが、台本に書いてあることを自分から出たかのように話すのはすごく難しい。台本を見た時、監督に「(日本語の)レッスンを受けたい」と相談したのですが、監督は「演じなくていい。何かがあった時は僕がサポートするし、おかしいと思う部分はちゃんと言うし、父親役は英語をしゃべる設定だから」と言ってくれて。やりやすいようにリードしてくれました。苦手意識を少しずつ消してくれました。

――映画の中にファンタジー的なシーンがありますが、それはミュージカルとはまた違うものですか?
 今回の映画は、ミュージカルというより、本当に音楽ファンタジー映画なんだって思います。ミュージカルにはお客さんが入って初めて完成するところがあると思いますが、この映画を撮影しているときはお客さんもいないし、反応も分からない。何回もお稽古があるわけではない。だけど、これだという自信を持ってやらないといけない。映像とミュージカルのそこの違いが個人的には難しかったです。今後、映画にはもっと慣れておきたいです。

 映画になった歌唱シーンを見ていると、本当に別世界です。大きな画面で試写をみんなで観たときに、住んでいる家がカラフルになるシーンがめちゃくちゃきれいで印象に残って、庭のど真ん中にピアノがあって……本当に素敵でした。挑戦すればするほど新しい自分に出会える! とミュージカルを通じて感じてきたので、映像でもそれを味わってみたいです。

――中村さんと2人でいろんなところに行って楽しそうにお話するシーンがありますが、映画にはその時の声が入っていません。現場では何をしゃべっていたのでしょう?
 単純に「中村さんって緊張するんですか?」とか、「苦手な食べ物は何ですか?」とか、そういう話です。吐きそうなぐらい緊張すると仰っていました。

――最も印象に残っているシーンは?
 クランクインして高岡早紀さんとすぐにケンカしたシーンと、中村さんを責めるシーンです。中村さんは「この映画の半分は自分の人生だ」って仰っていて、その中で私がバーンてきつく言わないといけないところがある。「男」にではなく、中村さん本人に言っているような感覚を持っている自分がいて……。中村さんの顔をできるだけ見ないようにしていました。なぜ私は、こんなにも心が優しくて、こんなにも寄り添ってくれる人に、こんなことを言わなきゃいけないんだろうと。映画の中の、あの声の震えとかは実は結構本物でした。

――劇中で「女」が歌う曲は、英語の歌詞が中心です。いろんな国の人々にストーリーを届けたいということでしょうか?
 監督が英語で作詞しているんです。私が歌うからではなく、最初から英語にしたいという気持ちがあったようです。英語で歌うことは自分のルーツにもすごくつながっていますし、英語の歌詞も本当に「女」の感情で書かれているので、取り組みやすかったです。

――今後、どういったエンターテイナーを目指していきたいですか?
 フィリピンと日本の架け橋になりたいです。そして、人種や国籍に関係なく、精一杯、心で歌っていきたい。限界を作らず、求められているところに、ちゃんと自分がいたいと思います。

映画『はじまりの日』

10月5日(土)ミッドランドスクエア シネマ名古屋 先行
10月11日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー

<キャスト>
中村耕一 遥海
高岡早紀 山口智充 岡崎紗絵 羽場裕一 秋野暢子 麿赤兒 竹中直人 ほか

<スタッフ>
監督・脚本・プロデュース:日比遊一
プロデューサー:増田悟司 右近和紗 岡村徹也 アソシエイトプロデューサー:フランク・デ・ルーカ 加藤剛嗣 ラインプロデューサー:大藏穣 劇中歌プロデュース:Mayu Wakisaka(ソニー・ミュージックパブリッシング) 撮影:山崎裕 照明:尾下栄治 録音:森英司 サウンドデザイン:石井和之 整音・ミキサー:小林喬 美術:高山仁 スタイリスト:渡辺彩乃 ダンサー衣裳デザイナー:ニムラチハル ヘアメイク:遠藤一明 編集:堀善介 陳詩婷 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 製作プロダクション:ジジックス・スタジオ
2024/日本/カラー/107分/PG12
(C)ジジックス・スタジオ

▼遥海 SNS

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