JVC/ケンウッドは、ビクターブランドの新製品として、大画面ホームシアターの楽しさを広げるプロジェクターを2モデル発売する。独自のD-ILAデバイスを搭載したネイティブ4Kモデルだ。どちらも11月下旬の発売を予定している。

●D-ILAプロジェクター
DLA-Z7 ¥1,100,000(税込)
DLA-Z5 ¥880,000(税込)

本体サイズは両モデルともW450✕H181✕D479mm。DLA-Z7はブラック仕上げのみで、DLA-Z5はブラックとホワイトの2色仕上げが準備される

 ビクターはホームシアター用として、4K D-ILAパネルを搭載したプロジェクターをラインナップしていた。8K/e-shiftX機能を備えた「DLA-V900R」「DLA-V800R」と8K/e-shift対応「DLA-V70R」、4Kモデルの「DLA-V50」だ。

 これらはホームシアターファンから高い支持を集めているが、一方で本体サイズや投写距離の問題から設置が難しいという声もあった(DLA-V900Rは投写距離は短いが、高価なので……という意見も)。特に同社の「X」シリーズユーザーからは、入れ替えたくても “物理的” にできないという相談も多かったとのことだ。

 これを踏まえてDLA-Z7/Z5では、投写距離3mで100インチ画面を可能にしている。本体サイズはW450✕H181✕D479mmで、空冷方法も前面吸気&後面排気(DLA-V900R/V800Rはその逆)に変更して後ろの壁面から50mm離せばいいという設計になったので、6畳間で100インチが実現できる。

 なお本体の足の位置はXシリーズから変わっていないので、過去の製品を天吊設置している方も、天吊金具はそのまま流用できるとのことだ。これはビクタープロジェクター愛好家には嬉しい配慮だろう。

 こうした本体の小型化のために、従来モデルから光学ユニット、レンズ、回路基板などのほぼすべての部品の設計を見直している。

 レーザー光源の「BLU-Escent」は、これまでより小型のレーザーダイオードに変更。でありながらDLA-Z7では2300ルーメン、DLA-Z5は2000ルーメンという高輝度を実現した。レーザーの効率としてはDLA-V900Rを上回っているそうだ。

 搭載されているD-ILAデバイスは、上位モデルのDLA-Z7が最新の第三世代パネル(DLA-V900R/V800Rと同じ)で、DLA-Z5はひとつ前の世代が使われている。この部分と、シネマフィルターの有無が両モデルの主な違いだ。

 そこに組み合わせるレンズは新規開発された。1.6倍電動ズーム/フォーカスという仕様で、前玉は80mmとDLA-V800RやDLA-V70Rよりも大きくなっている。これは投写距離を短くするための工夫でもあり、上下70%、左右28%のシフト量も達成している。

 もちろん4Kの解像度をきちんと再現できる高品質設計で、「今回の光学系は、予想以上にいい仕上がりになりました」と企画担当者も胸を張っていた。その恩恵もあってコントラストもアップ、DLA-Z7では80,000:1、DLA-Z5も40,000:1というスペックを達成している。

 画質関連では、HDR映像を最適な画質で再現する第二世代「Frame Adapt HDR」や、よりリアルな暗部表現を可能にする「Deep Black Tone Control」を踏襲。さらにSDRコンテンツを色彩豊かに再現する「Vivid」モード、映像制作者の意図を忠実に再現する「FILMMAKER MODE」も搭載されている。

 操作メニューのGUIも変更された。上部のアイコンを刷新し、さらに使用頻度に応じてメニューの構成を見直している。ユーザーメニューは「画質メニュー」「HDMIメニュー」「初期設定メニュー」の3つに分けて右上にある特別アイコンから選択するようになった。

 なおDLA-V900R/V800Rは8K/60pや4K/120p入力に対応していたが、今回の2モデルは4K/60pまでの対応になっている。また1080i信号の入力と、3Dコンテンツの再生は今回から非対応となった。

DLA-Z7、DLA-Z5(写真)とも新開発の光学系を搭載。前玉が80mmと大きくなり、投写距離も短くなっている

 先日開催された説明会で、両モデルの画質を確認した。

 まず100インチ、ゲイン1.0のスクリーンと組み合わせて、DLA-Z5をチェック。UHDブルーレイ『ラ・ラ・ランド』の夕景のシーンでは、黒がきちんと沈みながら、同時に細かい部分にまで色が乗った、抜けのいい映像が再現される。背景の空のノイズ(粒状性)も目立たないし、夕焼けのバンディングも自然な感じに抑えられている。

 続いてDLA-Z7と従来機のDLA-V70Rを横並びで観せてもらう。DLA-V70Rは8K/e-shift(2方向シフト)を搭載しており、スクリーン上で8K解像度の映像を再生するのに対し、DLA-Z7は4Kネイティブという違いはあるが、100インチサイズでは、どちらも情報量再現に優れた映像が楽しめる。

 ビコムのUHDブルーレイ『8K空撮夜景 SKY WALK』では、画面全体の静謐感、映像のヌケのよさなどでDLA-Z7の進化が感じられる。DLA-V70Rでも充分空気が澄んでいる印象だが、DLA-Z7ではさらに見通しがよくなって遠景の照明ひとつひとつまで識別できそうだ。第三世代D−ILAデバイスのメリットが生かされた画作りとも言えるだろう。

接続端子はHDMI入力2系統のみで、他にはLAN端子やファームウェアアップデート用のUSBを装備

 また新しい光学系では迷光対策が徹底されているようで、細かい光までよりていねいに制御されている。夜景でもビルの窓のエッジがきちんと表現されているし、字幕も輪郭のふくらみが抑えられてさらにシャープに表現されている。これなら映画作品を観る場合にも必要以上に字幕が気になるといったことはないだろう。

 DLA-Z7/Z5は4K映像の魅力を素直に再現してくれるプロジェクターだ。4K画素数が持つ情報量を余すことなく描写し、さらに信号処理を追い込むことで安定した黒、高いコントラスト再現も楽しめる。映画作品などでは黒が締まりすぎのように感じるシーンもあるが、その場合は「Deep Black Tone Control」などを微調整して好みの画質に追い込むといった楽しみもある。

 6畳間で100インチの4K大画面体験を可能にするD-ILAプロジェクターの新製品。既存プロジェクターユーザーだけでなく、これからホームシアターを楽しみたいという方にもぜひチェックしてもらいたい。