KEFジャパンから、9代目となる「Qシリーズ」スピーカーが発表された。Qシリーズは、KEFハイファイサウンドのエントリーとして人気の高いラインナップで、今回は2017年以来7年ぶり(初代モデルは1991年に発売)のリニューアルとなる。そのラインナップと価格は以下の通り。

●トールボーイスピーカー:
Q11 Meta ¥352,000(ペア、税込)
Q7 Meta ¥264,000(ペア、税込)
●ブックシェルフスピーカー:
Q Concerto Meta ¥192,500(ペア、税込)
Q3 Meta ¥121,000(ペア、税込)
Q1 Meta ¥88,000(ペア、税込)
●センタースピーカー:Q6 Meta ¥110,000(1本、税込)
●イネーブルドスピーカー:Q8 Meta ¥110,000(ペア、税込)
●壁掛けスピーカー:Q4 Meta ¥63,800(1本、税込)
※Q Concerto Metaは9月26日よりmyKEFメンバー早期購入及び正規販売店で発売。Q11Meta、Q7 Meta、Q3 Meta、Q1 Meta、Q6 Meta、Q8 Meta、Q4 Metaは9月26日より予約を開始し、10月10日より発売

第9世代Qシリーズ。手前左から「Q6 Meta」「Q8 Meta」「Q4 Meta」、奥側左から「Q11 Meta」「Q Concerto Meta」「Q3 Meta」「Q7 Meta」「Q1 Meta」

 一番の特長は、同社上位シリーズで採用されている「Metamaterial Absorption Technology(MAT)」を搭載した点にある。MATはドライバーの後方に取り付ける迷路のような構造を持ったデバイスで、これによってドライバー後部からの不要な音を99%吸収、高域の歪みを除去してピュアで自然なサウンドを実現してくれる。

 これを同社のアイコンとも言える同軸ユニットのUni-Qドライバーに取り付けているが、そのUni-Qドライバーも新開発されており、第12世代に進化した。フラッグシップモデルで採用されたフレキシブル・デカップリング・シャーシも継承し、不要な振動を大幅に防止して明瞭度を向上させたという。

 なお、MATが誕生した時点では、Qシリーズにこの技術を搭載する予定はなかったという。しかし、エントリークラスでも幅広い使い方をしてもらいたいという思いから、今回、Qシリーズ用に専用設計したMATを開発したとのことだ。

第12世代Uni-Qドライバー

 ウーファーユニットも変更されている。振動板には、ペーパーコーンの上に浅く凹んだアルミニウム・スキンを載せたハイブリッド構造を採用し、低音のパンチとスピードを向上させるピストンのような動きを実現する剛性を持たせている。3D FEA(3次元有限要素回析)で最適化されたサラウンド形状と組み合わせることでリニアリティが大幅に向上しているそうだ。

 なお、Q11 MetaとQ7 Meta、Q Concerto Meta、Q6 Metaが、3ウェイシステムになっているのも、実は進化点だ。第8世代のトールボーイモデルは、低域を受け持つウーファーユニット(1基)にパッシブラジエーター(2基)を加えた構成で、2.5ウェイと呼称していた。しかし第9世代ではすべてのウーファーがアクティブ型となり、より豊かな低音再生能力を獲得している。

 その3ウェイモデルについては、エンクロージャー内部に仕切りを設けることでUni-Qドライバーを密閉ボックスに収めている。これは第8世代と同様とのことだ。

左から「Q1 Meta」「Q Concerto Meta」「Q3 Meta」

 第9世代Qシリーズでは、クロスオーバーネットワークも刷新している。すべてのユニットのシームレスな統合を保証するために、同社のエンジニアが英国・メイドストーンにある無響室で、特注のリファレンス・マイクロホン・アレイを使用し、各スピーカーについて1,000回以上の具体的な測定を行い、各モデルに最適なクロスオーバーネットワークを追い込んでいったという。

 ラインナップは、前世代のQシリーズがトールボーイ3モデル、ブックシェルフ2モデル、センタースピーカー2モデル、イネーブルドスピーカーという構成だったが、第9世代ではトールボーイ2モデル、ブックシェルフ3モデル、センターとイネーブルド、壁掛けスピーカーが各1モデルになった。

 その中で注目は、ブックシェルフスピーカーのQConcerto Metaだろう。10cm Uni-Qドライバー+16cmウーファーという構成で、3ウェイのブックシェルフ型はQシリーズでは初めてとなる。ちなみに「Concerto」という型番は、1969年に登場したKEF初の3ウェイブックシェルフスピーカーにちなんでいるそうだ。

壁掛け設置を想定した「Q4 Meta」

 もうひとつの新機軸がQシリーズ初の壁掛けスピーカー、Q4 Metaだ。13cm Uni-Qドライバーを搭載した2ウェイバスレフ型で、本体サイズはW25✕H400✕D142mm、重さ5.7kgというもの。壁掛け金具も着いており、設置の自由度も高い。

 デザイン面では、全モデルともシームレスなバッフルを採用、マグネット式の専用グリルが付属になった(第8世代は別売)。新たに、本体色サテンホワイト用にグレーのグリルが準備されている。

 もうひとつ変更点として、これまでトールボーイ型にはゴム足とスパイクの2種類が付属していたが、第9世代ではスパイクは別売になった。オプションとして、Q3 MetaやQ1 Metaと組み合わせる「SQ1 Floor Stand」も発売予定だ(スレートグレーとミネラルホワイトの2色)。

 先日開催された製品説明会で新Qシリーズの音を確認させてもらった。

南青山のKEF Music Gallery Tokyoで新製品のサウンドを体験した

 まず第8世代の「Q350」と新製品Q3 Metaを同一条件で聴き比べる。どちらも16cm Uni-Qドライバーを搭載した2ウェイブックシェルフ型だが、上記の通りQ3 MetaのUni-Qは最新の第12世代で、さらに「with MAT」仕様となっている。ただし、本体サイズや仕上げは変更されていないので、一見しただけでは違いがわからないだろう。

 ストリーミングから手嶌葵の楽曲を再生してもらうと、Q350も自然で耳馴染みのいい声が再生されているが、Q3 Metaに入れ替えるとS/Nがよくなり、声のニュアンスやピアノの広がりが伸びやかになるように感じられる。高域の響きも細やかだ。低域再現もQ3 Metaはより締まった、スピード感のある再現になっている。

 続いて13cm Uni-Qドライバーを搭載したQ1 Metaも聴かせてもらう。ユニットサイズの違いもあって、当然ながらQ3 Metaよりは抑えた再現性になるが、それでもこのサイズのスピーカーとは思えない広がりを持った、キレのいい音場が描き出されている。ニアフィールド試聴であればまったく不満を感じることはないだろう。

 3ウェイスピーカーのQ Concerto Metaでは低音のゆとりがぐっと増え、安定したバランスのサウンドとなる。音数もはっきり増えて、ちゃんとそこで歌っているような聴こえ方に変化する。ブックシェルフ型らしいキレのよさも感じられる。

左が「Q7 Meta」で、右は「Q11 Meta」

 ではトールボーイ型はどうか? Q950とQ11 Metaで、ブライアン・ブロンバーグの「トレイシーの肖像」を再生してもらった。ちなみにQ950は20cm Uni-Qドライバー+20cmウーファー&パッシブラジエーター✕2の2.5ウェイシステムで、Q11 Metaは10cm Uni-Qドライバー+18cmユーファー✕3の3ウェイに変化している。ウーファーサイズが小さくなったこともあり、本体の横幅も3cmほどスリムになっている。

 Q950の、朗々として余裕のあるベースの鳴りっぷりはやはり魅力的で、こちらも眼前にステージが出現したかのようだ。天井までふわりと広がる音場に暖かく包まれるようにも思えた。

 対してQ11 Metaでは、低域の力強さ、キレが向上し、ハイスピードで締まりがいい再現になっている。低域の階調再現という点ではQ950よりグラデーションが滑らかで、情報量も多いだろう。低域の再現性さがアップしたのと同時に高域の見通しもよくなっている。

3Dサラウンドの再生用にイネーブルドスピーカー「Q8 Meta」もラインナップ

 参考までにQ7 Metaでも同じ楽曲を聴いてみたところ、Q11 Metaより少しすっきりするものの、全体的な印象は同様で、スピード感のある低域が楽しめる。Q11 MetaとQ7 Metaはルームサイズに応じて選び分ければいいだろう。

 第9世代Qシリーズは、S/Nのよさ、低域のテンポ感など現代サウンドに適した特性に進化しているのが大きな特長だと思う。大迫力の映画ソフトを楽しむなら第8世代Qシリーズも今でも充分魅力的だが、ハイレゾ音源などの情報量を余すことなく楽しみたいなら、第9世代の音はぴったりだ。