ノンサッチらしい多様なアーティストの12曲を収録。聴き応えのあるオーディオリファレンスCD

 2009年8月のリリースだから、すでに15年前のコンピレーション盤ということになる。それでも本作に収められたアメリカ・ノンサッチの音源12曲はまったく古びていないし、オーディオリファレンスCDとしての聴きどころも満載だ。ノンサッチの音楽を長く聴き続け、いまもご自身の試聴取材ではこのレーベルの音源をよく使われている和田博巳さんならではの選曲が光る作品集である。

 アメリカのルーツミュージックを中心に、ジャズや現代音楽、ワールドミュージックなど多様な音楽性のアーティストが集うノンサッチ。1964年設立の老舗だが、本作の選曲は2000年以降の録音にフォーカスされている。

Best Sound Selection
CD『BEST SOUND SELECTION ノンサッチ編』

(ステレオサウンド SSRR2/WQCP745)¥3,143 税込

[収録曲]
1.After the Gold Rush/k.d.Lang
2.Easy Street/Randy Newman
3.Hate It Here/Wilco
4.Sister Rosetta Goes Before Us/Sam Phillips
5.Gold/Emmylou Harris
6.Patricia/Ry Cooder&Manuel Galban
7.Pirates/David Byrne
8.Tan bi/Youssou N’Dour
9.Clapping Music Variations/Glenn Kotche
10.Grit Lap/Viktor Krauss
11.Waltz For Baltimore/Bill Frisell
12.Don't Interrupt the Sorrow/Brad Mehldau

選曲・構成:和田博巳
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 内訳は、ヴォーカルものが7曲、インストゥルメンタルが5曲。そのうち女性ヴォーカルは、ニール・ヤング曲の静謐なカヴァーを披露するk.d.ラング、硬質なヴォーカルと生ギターを前面に押し出したサム・フィリップス、ドリー・パートンとのデュエットで王道カントリーを聴かせるエミルー・ハリスの3組。

 男性ヴォーカルは、ニューオーリンズ的なピアノを転がるように奏でるランディ・ニューマン、たっぷり空気感を含むバンドサウンドが魅力のウィルコ、折衷主義を極めた時期のデヴィッド・バーン、そしてセネガルのスーパースターであるユッスー・ンドゥールの4組。

 残りの5曲は、ライ・クーダーやブラッド・メルドー、グレン・コッツェら名うてのプレーヤーによるインストとなる。

 味わい深い名曲・名録音揃いだが、1曲だけ挙げるならギタリストのビル・フリゼールがクインテットにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを加えた「Waltz for Baltimore」だろうか。ゆったりしたテンポのなかに各パートの熱量の高いフレーズが投入される。大音量で聴くと、ライヴ録音ならではの開放的な空気感が肌にまで伝わってくるようだ。

 ノンサッチは現在も旺盛に名曲・名録音をリリースし続けている。本作を聴くと、2009年以降の音源から和田さんが新たに選曲した『Vol.2』も聴きたくなる。