「車」と「オーディオ&ホームシアター」を同時に楽しめる場所が欲しい! そんな “男の子の夢” を叶えるガレージシアターがJR高崎駅近くに誕生した。昨日公開した前編では、オーナーの櫻井 崇さんと、インストール作業を手かけたクレアツィオネ・ワークスの小野裕史さんに、シアタールームを作ろうと思ったきっかけや、施工時の工夫点についてうかがった。後編では、ガレージシアターでの機器調整の手順と、櫻井さんのインプレッションを紹介したい。(取材・文:泉 哲也、撮影:相澤利一)

※前編の記事はこちら →  https://online.stereosound.co.jp/_ct/17721441

 1Fにガレージ、2Fがシアタールーム、3Fが寝室、という(昭和世代の)男の子なら誰しも一度は夢見たガレージシアターを手に入れた櫻井さん。そのきっかけやシアターの全貌、導入の経緯については前編で紹介した。

 そのシアターに導入されたオーディオビジュアル機器は以下の通り。映像制作のプロである櫻井さんに満足してもらえるよう、120インチの4K(正確には8K/e-shiftXでアップコンバートした8K)映像を核にした3Dオーディオ対応システムが構築されている。

ガレージシアターの主なシステム

プレーヤーのマグネターUDP800やAVアンプのデノンAVR-X3800H、センタースピーカーKEF Q650cは、スクリーン下のAVラックに収納。Apple TV 4KとヤマハのLPプレーヤーは櫻井さんがお持ちのものを流用した

●プロジェクター:ビクターDLA-V800R
●プロジェクター取付金具:キクチSPCMシリーズ特注品
●スクリーン:キクチSGKP-120HDBM(ソルベティグラス、120インチ/16:9)
●ユニバーサルUHDプレーヤー:マグネターUDP800
●ストリーミングプレーヤー:Apple TV 4K
●レコードプレーヤー:ヤマハTT-S303
●AVアンプ:デノンAVR-X3800H
●スピーカーシステム:KEF Q950(フロント)、Q650c(センター)、Q750(サラウンド)、T101(トップフロント、トップリア)、Kube 10MIE(サブウーファー)
●HDMIケーブル:KORDS PRS4シリーズ

 これらの機器については、櫻井さんへのリサーチを経て小野さんがお勧めモデルを選んだそうだが、その中で一番難しかったのがUHDブルーレイ再生機だったという。

 「今回の製品選びでは、ディスク再生機に何を選ぶかで悩みました。UHDブルーレイを再生する手段としては、現状はレコーダーの方が製品の数は多いんです。しかし櫻井さんは放送のエアチェックはしないということでしたし、それよりも色々なメディアが高品質に再生できることと、操作時のレスポンスが快適なモデルがいいというご希望でした。

 最近はアニメ作品に関連したハイレゾ音源も人気なので、櫻井さんのお仕事柄、SACDやCD、ハイレゾファイルを再生する機会も増えるのではないかと考え、ユニバーサルプレーヤーがいいだろうという結論に至りました。そこで、マグネターのUDP800を推薦したのです。

 マグネターは今年の春に日本デビューした新ブランドで、これまで日系ブランドの車載機器やDVDプレーヤーのOEMを手掛けてきたという実績も持っています。技術的にも信頼できますし、搭載しているOSDのカスタマイズは日本のオーディオビジュアルファンから高い支持を集めていたOPPOと共通の代理店によるとのことで、これなら安心して使っていただけるだろうと考えました」(小野さん)

UHDブルーレイからSACD、ハイレゾまですべてを手軽に楽しめる。
ガレージシアターの高画質・高音質のキーコンポーネント

マグネター UDP800 オープン価格(市場想定価格¥297,000、税込)

 MAGNETAR(マグネター)は、高品位ディスクプレーヤーの製造事業を行う中国のMagnetar Technology Shenzhen Co., Ltd.の自社ブランドとして、2021年に中国・深圳で設立された。同社は以前から様々なメーカーのOEMやODMを手掛けており、日系ブランドの車載関係やDVDプレーヤー製品を製造してきた実績もあるそうだ。

 今回発売されたのは、櫻井さんが導入した「UDP800」と、上位モデルの「UDP900」(市場想定価格¥550,000、税込)で、どちらもUHDブルーレイ、ブルーレイ、SACD、CDといった12cmディスクメディアの再生が可能。さらにUSBメモリーやNASに収納したハイレゾ音源、動画ファイルの再生にも対応するなど、現在のホームシアター用として充分なスペックを備えている。

 両モデルともドライブメカにはソニー製を、さらにメディアテック製のクアッドコアプロセッサー「MT8581」も採用している。主な違いとして、UDP800はアナログ出力が2ch(XLR/RCA)仕様なのに対し、UDP900は2ch(XLR/RCA)と7.1ch(RCA)出力を搭載している点があげられる。搭載しているDACチップはUDP800がバーブラウンPCM1795✕2で、UDP900はESSのES9038PRO(2ch用)とES9028PRO(7.1ch用)だ。

●再生可能ディスク:UHDブルーレイ、ブルーレイ、DVDビデオ、DVDオーディオ、AVCHD、SACD、CD、ピクチャーCD、CD-R/RW、DVD±R/RW、DVD±R DL、BD-R/RE
●対応信号:最大PCM 192kHz/24ビット、DSD2.8MHz(DLNA/USBメモリーからのデータ再生)
●接続端子:HDMI✕2(メイン/音声専用)、2chアナログ音声出力?2(XLR/RCA)、デジタル音声出力?2(同軸/光)、USB Type-A✕2、LAN
●寸法/質量:W430✕H90✕D312mm/約6.7kg
●消費電力:30W(待機時0.5W)

 では、ユニバーサルプレーヤーをお勧めされて、櫻井さんはどう思ったのだろうか?

 「最近は高品質なプレーヤーが少ないというお話でした。お勧めしてくれたUDP800は、価格的には最高クラスのレコーダーと同じくらいですが、UHDブルーレイだけでなく、SACDやCD、ハイレゾファイルまで再生できますという説明を聞いて、それはいいなぁと思いました。

 普段から映画はパッケージソフトで見る事が多く、これまでも、プレーヤーを持っていないのに、気になるUHDブルーレイをコレクションしていたんです(笑)。なので、これでやっとUHDブルーレイを本来のクォリティで見ることができるんだと、とても楽しみでした。

 UDP800の実物を見るのは実は今日が初めてですが、デザインもすっきりしていて、仕上げも綺麗でいいですね。トレイの開閉も素早いし、リモコンも使いやすいので、これならストレスなく操作できそうです」(櫻井さん)

 ではそのUDP800で再生したUHDブルーレイの印象はどうだったのだろう?

快適な操作性も好印象。”これでディスクメディアを思い切り楽しめます!”

操作レスポンスの良い製品が欲しいという櫻井さんの希望を受け、再生専用機のUDP800をチョイス。実際の操作感にも満足いただけた様子

UDP800の付属リモコン。「手に馴染みのいいサイズで、操作もわかりやすくていいですね」とのこと

 「UHDブルーレイってこんなに綺麗だったんだ、と感動しています。小野さんが再生してくれた宮古島のUHDブルーレイ(ビコム『宮古島〜癒しのビーチ〜』)の絵がすごく繊細で、色もクリアーでした。草むらなどがちょっとジラジラする印象もあったんですが、プロジェクターを調整してもらったらすっきり落ちつきました。スクリーンに近づいても映像のアラが見えないので、驚いています。

 サラウンドも気持ちいいですね。UHDブルーレイとApple TV 4Kでドルビーアトモス作品を再生してみましたが、まるで映画館のように包みこまれる感じもあって、これは癖になります」(櫻井さん)

 なお、各機器のパラメーターは工場出荷時のままではなく、ガレージシアター用に微調整が施されている。その主なポイントを小野さんが解説してくれた。

 「櫻井さんの場合、壁や天井がもともと黒い仕上げなので迷光も少なく、シアタールームとしては理想的な環境です。それもあり、DAL−V800RのLDパワーは『40』弱まで抑えました。これはHDR10映像(Frame Adapt HDR)もSDR映像(FILMMAKER MODE)も同じです。その他はほぼ初期値ですが、これから櫻井さんの好みに応じて映像イコライジングを追い込んでいただきたいと思います。

 UDP800はドルビービジョンや3Dなどの使わない項目は設定を『オフ』にしましたが、それ以外は初期値のままです。ユニバーサルプレーヤーなのにこんなに設定が簡単な点も、インストーラーには嬉しいですね」(小野さん)

USBメモリーからハイレゾ音源を再生。PCM 192kHz/24ビットとDSD2.8MHzも簡単に聴けた

UDP800のフロントパネルにハイレゾ音源を保存したUSBメモリーをセットし、ハイレゾ音源の再生も確認

192kHz/24ビットのリニアPCMはもちろん、DSD音源も再生可能。DSD11.2MHzもダウンコンバートで試聴できました

セットアップメニューは日本語対応でひじょうにわかりやすい。実際の使用も初期値のままで問題なかった

 続いて、UDP800でSACD『ルパン三世1977〜1980ORIGINAL SOUNDTRACK 〜for Audiophile〜』(編集部が持参しました)も再生してもらった。なおUDP800はAVアンプのデノンAVR-X3800HとHDMIケーブルで接続してあり、この状態ではUDP800からDSD信号のままHDMIで伝送されている(UDP800はSACDマルチチャンネルディスクの再生も可能)。

 この状態で聴くSACDはなめらかな質感で、山田康雄さんや納谷悟朗さんのドラマも自然な声として再現されている。テーマ曲もテンポがよく、気持ちいいサウンドだなぁと思っていたのだが、ここで小野さんから「UDP800のアナログ出力の音も聴いてみましょう」という提案があった。UDP800は2chアナログ出力も搭載しているので、こちらの音質も確かめようということだ。

 さっそくRCAケーブルでUDP800とAVR-X3800Hをつないで同じ曲を再生してみると、音の情報がより豊かになり、密度感も上がってきた。楽器の生々しさが増して、テーマ曲の演奏のノリがよくなってきた印象だ。さらにAVR-X3800Hをピュアダイレクトモードに切り替えると、「ラヴ・スコール」のサンドラ・ホーンの声もいっそう艶かしく、魅惑的に聴こえてきた。

これが、みんなが夢見る(であろう)ガレージシアターの全貌です!

120インチスクリーンが存在感を放つガレージシアターが完成! 画像はビコム『宮古島~癒しのビーチ~ 4K Ultra HD バージョン【4K・HDR】【Ultra HDブルーレイ】』より

櫻井さんはここでは料理は一切しないとのことで、リアスピーカーはシンクの前に置かせてもらった

Q950はスパイクを使って設置している(別途スパイク受けを準備)。店頭での試聴の結果、フロント、リアスピーカーとも予定よりワンサイズ大きな製品を導入することになった

 「これは違いますね。SACDやCDを聴くならUDP800のアナログ出力の方がお勧めです」(小野さん)ということで、UDP800とAVR-X3800HはHDMIに加えてRCAアナログケーブルでもつなぐことになった(接続図参照)。

 なおAVR-X3800Hは入力ソースと再生モード、ボリュウム等を最大4つまでメモリーできるScene機能を備えている。今回はScene1がUDP800のHDMI接続、Scene2がUDP800のアナログ接続、Scene3はApple TV 4K、Scene4にアナログレコードをメモリーしている。

 もうひとつ、ハイレゾファイルの再生も確認した。UDP800はフロント/リアパネルそれぞれにUSB Type-A端子を備えており、ここから音楽、ビデオ、写真などのデータを再生できる。そこで、フロントパネルのUSB端子(USB2.0)にUSBメモリーを取り付け、ハイレゾ音源を再生した。

 UDP800のメニュー画面で「音楽」を選ぶとUSBメモリーの内容が表示されるので、そこから聴きたいファイルを選ぶだけと、操作もわかりやすい。なおUSBメモリーとDLNA再生は、最大でリニアPCM 192kHz/24ビット、DSD2.8MHzに対応しているそうだ。

 「操作手順もシンプルなので、櫻井さんにもすぐに使いこなしていただけるんじゃないでしょうか。ハイレゾの音もとても素直で、リニアPCMは輪郭がくっきりした印象があるし、DSDは自然でなめらかな再現だと思います。こういったフォーマットの違いまで再現してくれるのはUDP800の大きな魅力です」(小野さん)

 「これまでハイレゾの音はちゃんと聴いたことがなかったんですが、こんなに簡単に、しかもいい音で再生できるんですね。UDP800をネットワークにつなげばNASに保存した音源や映像データも再生できるというお話でしたから、それも試してみたいですね」(櫻井さん)

 ということで、インストール作業は無事終了となった。最後に、櫻井さんにガレージシアターの感想を聞いてみた。

小野さんからの提案で、スマートリモコンのnature Remoも導入している。これにより、iPadから機器のマクロ操作も行えるようになりました

 「ここまで本格的なシアターができるんだと、びっくりしました。120インチのスクリーンでこんなに迫力があるんですね。これがあるだけでシアターが手に入ったという満足感もあって、本当に嬉しいです。

 まだ絵も音もちょっとしか確認できていませんが、クォリティも予想以上で、どのディスクを観ようかと考えるだけで楽しくなります。先ほど小野さんから、この環境なら音楽ライブを見るのも楽しいですよ、というお話がありましたが、確かにこの絵と音ならライブ会場にいる気分になれそうです。

 そうなると音にももっとこだわることになりそうだなぁ。プレーヤーのUDP800は音楽ディスクも再生できるので、これからはUHDブルーレイ以外のディスクにも手を出してしまいそうです(笑)」(櫻井さん)

 そう話す櫻井さんの手元にはお気に入り作品のUHDブルーレイ、ブルーレイが並んでおり、本インタビューが終わってすぐにガレージシアターの杮落し上映会がスタートしたことは言うまでもない。きっとこれからは、毎週の群馬への通勤も心躍るものになることだろう。

ガレージシアターを完成に導いた皆さん。左からAUDIO SPOTカマニの粟野雅文さん、クレアツィオネ・ワークスの小野裕史さん、オーナーの櫻井 崇さん、有限会社吉澤組の吉澤竜治さん

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