約3時間という長さはインド映画の常なのかもしれないが、音楽にはいささか驚いた。ファンク、ソウル・ミュージック、ディスコといった1970年代に大流行したアフリカ系アメリカ人大衆音楽の数々を意識して作られたであろうサウンドトラックが大きくフィーチャーされているのだ。ヴォーカリストのシャウトは時に、まるでジェイムズ・ブラウンである。

 そして内容も、「クリント・イーストウッドとサタジット・レイの出会い」という前評判を裏切らない。この場合の“イーストウッド”とは、「夕陽のガンマン」か「ダーティハリー」か。クリント・イーストウッドとサタジット・レイの両者を好む粋な映画ファンの、その中の何パーセントかは、時に声をあげて爆笑したり手を叩きたくなるに違いない。物語の時代背景は、だいたい1975年まで。「劇中劇」ならぬ「映画内映画」のシーンもあって、とにかく飽きさせないしテンポが良い。そして利害関係、コネで動く社会、相も変わらず差別を続ける者たちへの痛烈な一矢も放たれる。巨象が重要な役割を示すのも、この映画ならではのポイントだろう。

 監督は、前作『ジガルタンダ』で“ギャングスター・ミュージカル”を実現したカールティク・スッバラージ。切れ味良い動きをするラーガヴァー・ローレンス(ダンス振付師としてのキャリアを持つという)と、元監督のS・J・スーリヤーが主演格となり、音楽監督はサントーシュ・ナーラーヤナンが務めた。ちなみに「ジガルタンダ」とは、南インドのシェイク状の冷たい飲み物を示すらしい。

映画『ジガルタンダ・ダブルX』

2024年9月13日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開

監督・脚本:カールティク・スッバラージ
出演:ラーガヴァー・ローレンス、S・J・スーリヤー、ニミシャ・サジャヤン
2023年/タミル語/172分/PG12
原題:Jigarthanda Double X
日本語字幕翻訳:矢内美貴 加藤 豊
協力:ラージャー・サラヴァナン
配給:SPACEBOX
宣伝:フルモテルモ
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