UHDブルーレイなどパッケージソフトの販売も縮小傾向でプレーヤーとなると安価な製品ばかり。時代の趨勢とはいえ、もの寂しさを感じていたところに、マグネターは現れた。

 迫力ある重厚なアルミニウムのボディ。高級ビデオプレーヤーを求めていたぼくらの要求を満たす、電源や回路設計。もちろん機能としても十分。当然ながら価格はなかなか高価なものになったが、これぞまさに最後のUHDブルーレイプレーヤーに違いないと思わせた。

 そんなマグネターのUDP900とUDP800を自宅で使ってリポートしてほしいとHiVi編集部から依頼があり、それではとじっくりと使ってみることにした。

 UDP900とUDP800の概要を軽く紹介しよう。製造元のマグネターは長くビデオプレーヤーのOEM生産を手掛けていた中国のメーカーで技術や経験は問題なし。新しいブランドを起こしてAVファンの求める高級ビデオプレーヤーを作ろうとするその意気込みも見事だ。ソニー製のドライブメカ、実績のあるメディアテック製のプロセッサー「MT8581」などのパーツを使用。

 UDP900では、オールアルミ製の強固なシャーシ、デジタル/電源/オーディオの各回路が独立した回路設計とそれらの干渉を物理的に排除するセパレート構造を採用している。各部は厳重にシールドされ、電源部にはオーディオ用のリニア電源とその他のスイッチング電源の独立電源となるなど、高級プレーヤーとして申し分ない作りだ。

 弟機のUDP800はシャーシこそスチール製のシンプルなものになるが、各部の独立設計などを踏襲した作りとなる。機能的にはUSB DAC機能、7.1chアナログ出力が省略されたほかはほぼ同じで、2系統のHDMI出力、2chオーディオ出力はバランス/アンバランスを備える。

UHD Blu-ray Player

MAGNETAR
UDP800
オープン価格(実勢価格29万7,000円前後)

UDP900
オープン価格(実勢価格55万円前後)

[共通]
●再生メディア:CD、SACD、DVDビデオ、DVDオーディオ、BD、ブルーレイ3D、UHDブルーレイ、ほか[UDP800]
●接続端子:アナログ2ch音声出力2系統(バランス、アンバランス)、デジタル音声出力端子2系統(同軸、光)、HDMI出力端子2系統(映像/音声対応、音声専用)、USB端子2系統(Type A×2)、LAN1系統
●寸法/質量:W430×H90×D312mm/約6.7kg

[UDP900]
●接続端子:アナログ2ch音声出力2系統(バランス、アンバランス)、アナログ7.1ch音声出力1系統(アンバランス)デジタル音声出力端子2系統(同軸、光)、HDMI出力端子2系統(映像/音声対応、音声専用)、USB端子3系統(Type A×2、TypeB)、LAN1系統
●寸法/質量:W445×H133×D321mm/約15.5kg

 

使い勝手は優秀。メニューも含めて快適だ

 さっそく届いた2台を開梱。UDP900はなかなかずっしりと重い。ビデオプレーヤーとしてはサイズは大きめだが、高級プレーヤーらしい風格は十分。チタングレーとブラックをタイルのように組み合わせたデザインもかなり斬新だ。それに比べるとUDP800は薄型のスリムなサイズで置き場所に困るようなことはなさそう。筐体の作りはシンプルだが強度は十分で持ち上げてみて心配になるようなことはない。

 UDP800を、ビクターのDLA-V90RプロジェクターとマランツのAV10コントールAVセンターにそれぞれセパレートでHDMI接続をして電源を入れる。操作メニューはオッポデジタルを思わせるデザインだが、これはオッポデジタルに続いて輸入代理店となるエミライが監修し、オッポデジタルのUDP-205などと同じフォントを使っているため。メニューの視認性や使いやすさに配慮したためだ。操作のレスポンスは十分なレベルで快適に動くし、ディスク挿入から出画までも比較的早め。こうした使い勝手はUDP900とUDP800に共通しており、どちらも快適に使える。

 BD-XL規格の再生には対応しないなど、主に4K放送などを録画したディスクの再生には制限があるが、手持ちの市販UHDブルーレイで、取材期間中に両機種を使いいろいろ試してみたが、不具合は生じなかった。もちろん、SACDやDVDビデオなどでも同様に再生できなかったディスクはなかった。もちろんすべての市販ディスクの再生を保証しているわけではないが、再生互換性の向上を続けていくというメーカー、そして代理店の姿勢も信頼できる。

猛暑の7月中旬から下旬の約10日間、鳥居さん宅でじっくり2台を試してもらった

 

 

柔らかい映像表現で「硬く」ならない

 楽しみな再生映像だが、まずはUDP800から見ていこう。全体にやや明るめの画質かと思うくらいに明るく見通しがよく、輝度ピークも鋭い。『デューン 砂の惑星 PART 2』(以下デューン2)を見ると、砂地のキメの細かさ、砂紋というか風が吹いて砂煙が舞う様子もしっかりと描く。4K映像の精細感としては十分だが、解像感としてはソフトな感触でフィルム調のしっとりとした柔らかい表現だ。フェイストーンも滑らかだし、砂の惑星の陰影が豊かに描かれる。

 手持ちのパナソニックのUHDブルーレイプレーヤーDP-UB9000との比較で言うと、UB9000の方が巨大なスパイス採取機などのディテイルや質感はシャープだし解像感も高い。しかし、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(以下、ジョン・ウィック〜)でのマッチの火がアラビアらしき砂漠の夜明けに転じる場面で、UB9000では朝日から現れる馬上の男のシルエットに擬似輪郭が生じている。これがUDP800では生じず、ぼんやりとしたシルエットが次第にジョン・ウィックであるとわかるまでの動きをスムーズに描く。このしなやかで強調感のない再現にはなかなか感心した。作品にもよるが映像が硬くならないので、生々しい感触がある。

 映像によってはUB9000で擬似輪郭が生じる傾向はアニメ作品でも気付くことがあるが、UDP800にはそれがない。絶対的な解像感の違いは、意識して見比べて識別できるようなわずかなレベルの差でしかないので、疑似輪郭の少ないという点で、より違和感の少ない表示となるUDP800の映像はアニメ好きな人にも好まれると思う。

 UDP900もややソフトな感触は同様で、『ジョン・ウィック〜』での擬似輪郭の発生もない。そのうえで、色の純度というか密度が高いと感じる。『デューン2』では砂漠の陰影がより深くなるし、室内や物陰のなかでギラリと光る瞳の力強さが出て、より高コントラストで濃厚な表現となる。この密度感はまさしく筐体の頑強な作りや徹底したノイズ対策によるものと思われ、非常に見応えがある。100インチ級の大画面で満喫したくなる密度の高さだ。

アナログ音声のチェックは、2chのバランスケーブル接続を中心に行なった。HDMIはフィバーとスープラのケーブルを使ってA/Vセパレート接続の状態で試している

視聴につかった機材は鳥居さん宅の架空劇場でのリファレンス機器となる。具体的には以下の通り
●プロジェクター:ビクターDLA-V90R
●スクリーン:オーエス ピュアマットⅢ(120インチ/16:9)
●AVセンター:マランツAV10+AMP10
●コントロールアンプ:ベンチマークHPA4
●パワーアンプ:ベンチマークAHB2(フロント2ch用)
●スピーカーシステム:B&Wマトリクス801S3、802S3、イクリプスTD508MK3、TD725SWMK2

 

 

迫力のある鳴り方のUDP800とスケールの大きいUDP900の音

 音響については、UDP800を見ても巨大な機械の重厚さ、音楽のスケール感、空間描写の広がりと包囲感など、どちらかというとストレートでなんの演出も加えないUB9000に比べて、迫力のある鳴り方だ。「迫力がある」といっても決して低音に厚みを持たせたリッチな音ということでもなく、音としては忠実感を意識させるようなタッチでありながら、情報量が豊かで音に芯の通った実体感があり、これが迫力や臨場感ではかなりの差となる格好だ。

 UDP900となるとさらに音が厚みを増し、低域の力感、ローエンドの解像感の高さが増して、いっそうスケールの大きなものになる。『ジョン・ウィック〜』での冒頭の打突の迫力は劇場での初見以上に身体に響いたのには驚いた。

 これに気をよくして、アナログバランス2ch音声出力をベンチマークHPA4コントロールアンプに接続して、SACDを聴いてみる。50周年記念盤『狂気/ピンク・フロイド』の2ch音声。「タイム」冒頭の時計の音が浮かび上がるように鳴る。無音の静寂が深く、時計の音もクリアー。このあたりはリマスターの出来の良さが改めてわかる。音の広がりと空間の広さも見事なものだ。

 UDP900となるとその静寂の深さがさらに豊かになり、音色の厚みとリアリティも増している。結果、声の質感や歌唱の抑揚もよくわかり、生々しい演奏になる。

 その出来の良さに感激したステレオサウンド社からリリースされたSACD『over/オフコース』も、UDP800で聴いても情感たっぷりでさらに出来の良いアナログ盤に迫る熱気あふれる音で楽しめた。UDP900となれば、抑えた調子で切々と歌っているイメージのあった小田和正のヴォーカルが、これほど情感を込めて叫ぶかのように歌っていることが如実にわかる。このあたりの音楽そのものの力強さが出てくる再現はこれ以上「言葉にできない」。

撮影のために2台重ねているが、実際の視聴は1台ずつラック天面に設置している

 

 

10日間のテスト期間中、手持ちのほとんどのソフトを見た!

 UHDブルーレイの再生ができる単体プレーヤーがわずか数万円で売られている現状を考えると、マグネターのUDP900の55万円、UDP800の約30万円という価格はどうしても高価に感じてしまう。

 しかしながら、こうした実際には約10日間の取材期間中、それこそ所有している手持ちのソフトのほとんどを見て過ごしていると、その価値の高さ、価格にも納得してしまう。映像の感触もプロジェクターのスクリーン投影というスタイルにマッチした劇場の感触が好ましいし、何より音の表現力はHi-Fi的な忠実感のある再現であると同時に映画の臨場感や音楽の情感や迫力を伝えてくれた。われわれAVファンにとってUDP900、UDP800ともに最後(?)のビデオプレーヤーにふさわしいモデル、といえるかもしれない。

視聴した主なディスク。写真上段左からSACD『狂気/ピンク・フロイド』、BD『トーク・トゥ・ミー』、UHDブルーレイ『デューン 砂の惑星PART2』、『君たちはどう生きるか』、下段左からSACD『ナイトフライ/ドナルド・フェイゲン』、CD『劇場アニメ ルックバック オリジナル・サウンドトラック』、SACD『over/オフコース』、『ルパン三世 カリオストロの城 オリジナルサウンドトラックBGM集』

 

 

本記事の掲載は『HiVi 2024年秋号』