『退屈な日々にさようならを』(17年公開)、『少女邂逅』(同)などに出演した秋葉美希が主演・監督・脚本を兼ねた一作で、これが彼女にとっての初めての長編監督作品となる。若手監督の登竜門である「第17回田辺・弁慶映画祭」でキネマイスター賞を受賞し、このたび9月6日から12日にかけてテアトル新宿、22日と23日にテアトル梅田にて劇場公開される。

 秋葉美希が演じる暖は、元ダンサー。亡くなった父親との関係は決してスムーズなものではなかったことが、冒頭の数分で、もう浮かび上がってくる。だから、ある意味、「ほうっておいた」。が、それでも父は父だ。死から6年が経ったころ、彼女は、故郷からやってきた幼なじみの、なかなかにパワフルな意志によって、「父の残した一枚のメモに記された場所」をたどる旅へと連れ出されることになる。父への硬直した思いが次第に融解していくのは、ある程度予想ができたこととはいえ、そこに「食」を絡ませる視点は実にユニークだし、「父の足跡をたどること」と「食」が足し算となって、暖の、なんというのだろう、彼女自身の「毎日を生きていく意欲」までがパワフルになり、輝きを増していくさまも活写されていく。

 自身の父との別れという実体験をもとにした一作とのことだが、ベタベタのエモーションを押し付けてくることはない。そして、観る者に「はて、自分の父(もしくは母)はどうだろう」と、思いを再確認させる機会を与えるはずだ。幼なじみ役は田中爽一郎、父親役は川瀬陽太。

特集上映イベント「田辺・弁慶映画祭セレクション2024」

テアトル新宿 2024年8月23日(金)~9月12日(木)
テアトル梅田(旧シネ・リーブル梅田) 2024年9月20日(金)~9月26日(木)

映画『ラストホール』の上映は
テアトル新宿 9月6日(金)~9月12日(木) 連日20:30~