TOHOシネマズとオーディオストリーミングサービス・Spotifyがコラボして実施する特別上映会「名曲映画を、浴びつくそう。」の初回イベントが8月29日(木)、東京・池袋にあるTOHOシネマズ 池袋 スクリーン2(轟音シアター)で行なわれた。イベントには、同シアターの音響調整の監修を担当したLOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)のNAOKI氏、俳優・アーティストの森崎ウィン氏が登壇し、轟音シアターの音響調整のポイント、聴きどころ、あるいはNAOKI氏のライブ会場での音響調整の方法などが開陳された。同席した森崎氏は、そんな話を興味津々の様子で聴き入り、「今後、じっくり話したいです」と、意気投合した様子だった。

 さて、上映会の内容を少し紹介しておくと、TOHOシネマズが誇る轟音シアターを会場にして、もう一度観たい音響的に優れた世界の映画作品を上映する、というもの。映画を観た後は、Spotifyが提供する映画名曲のプレイリストを聴いて、劇場鑑賞、楽曲再生、あるいは関連作(曲)の発見という、一粒で3度楽しめる企画となる。

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 さて、イベントはぴあ編集部の中谷氏の進行で和気あいあいとした雰囲気で進み、上に記した関連記事の通り、LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIの聴感による調整(位相の追い込みに)よって、複数設置されたスピーカーの位相(音波)を整えていく様子が語られていた。

これが轟音シアターの肝となるサブウーファー

このウーファーが向い合せで設置され、合計で4組・計8基のユニットが設置されている

 音は、大気中では340m/sで伝わる(=音速)ので、複数のスピーカーの位相が0.1秒狂うと、音の届き方が34mズレる(遅れる)ことになる。同様に0.01秒(10msec)だと3.4m、0.001秒(1msec)なら34cm、0.0001秒(0.1msec)なら3.4cmだ。1msecは1/1000秒だが、34cm音の届き方がズレる(遅れる)と、人の耳でも意外と感じる(聴き取れる)ものだ。NAOKI氏はそこにこだわり、1/10,000,000秒の単位で位相を調整しているという。さらに、劇場中央のいわゆるいい席だけでなく、どの席でも同じように聴こえるように、細かい調整を施しているということだ。

 そんな話を興味津々の様子で聞いていた森崎氏は、アーティストの顔を出し、「ライブ会場の音の調整はどうしているのですか?」と質問。NAOKI氏は嬉しそうな顔で、「やり方は劇場と同じで、まずピンクノイズでチェックして、その後は実際の楽曲を使って追い込んでいます。僕の場合は、マイケル・ジャクソンの『スリラー』と『ビリー・ジーン』を使っていますね」と答えていた。

 さて、本イベントは今月8月にスタートし、月一の開催で12月まで5回続くことになる。上映作品は下記の通りで、「気になる作品」を聞かれたNAOKI氏は「ラ・ラ・ランド」を、森崎氏は「セッション」を挙げていた。

「僕が初めて劇場音響の依頼を受けたのが、立川立飛の劇場で、ちょうど調整中に観ていたのが『ラ・ラ・ランド』(デジタル上映なので、サーバーには上映中の同作のデータしかなかったからだそう)なんです。バスが通り過ぎるようなシーンで、さりげなくウーファーを使っている作品なので、この轟音シアターだともう少し重低音が感じられると思います。一度観た方でも、(重低音が)楽しめると思います」(NAOKI氏)

「僕は『セッション』です。ドラムの低音(バスドラム)がどういう風に聴こえるのか体感したいですし、あのめちゃくちゃ怖い教官の怒鳴り声が、ゴジラの咆哮みたいになるのか? 確かめたいです」(森崎氏)

 こうして、トークパートが終了すると、いよいよメインイベントとなる轟音上映が開始された。初回の上映作品は、アンコール上映も含めて国内興行収入が200億円を突破した大ヒット作『ONE PIECE FILM RED』だ。ここからは、轟音シアターでの鑑賞の印象を簡潔に紹介したい。

 まず感動したのが、細かい音まではっきりと聴き取れる繊細な再現性を持っているということ。もちろん、戦闘シーンのように自慢のウーファー8基が鳴りきるような“轟重低音”も魅力だが、その間の日常シーンの背景に挿入されるような微細な音が、しっかりと聴き取れるのだ。こうした雰囲気(環境音というか)が緻密に再現されていると、アニメという虚構の中の話ではあるのだが、その世界(観)の中に、身を置いている感覚が存分に味わえるようになる。

 加えて、位相がしっかりと整えられているので、轟重低音から高音、セリフまで含めての一音一音が、しっとりとした感触を以て味わえるようになる。これだけでも+αの料金を払う意味はあると思う。

 さらに、セリフの再現性も素晴らしい。左右スピーカーから発せられる音(サウンド)よりもくっきりはっきりと聴こえ、音像が広いスクリーンの中央にしっかりと浮かび上がってくるようになる(記者は、スクリーンよりも少し手前に感じた)。音量も少し大きめに感じ、かつてのオプティカル・サウンドの音声の感触を再現しているようで、オールドファンにはある意味懐かしさを以て迎えられるかもしれない。ただし、その分声優の力量(の差)もはっきりと分かってしまう(感じられる)のは、難点の一つかもしれない。

 自慢のウーファーもしっかりと鳴りきっているようで(少し大きいかなと思うこともあったが……)、映像に音(重低音)の迫力をそっと添えてくれていた。終盤、およびエンディング楽曲では、歪むギリギリまで音量を上げているのでは? と思うほどの(ウーファーの)存在感を発揮してくれていた。

【名曲映画を、浴びつくそう。】Spotify|轟音 特別上映会 日程

■実施劇場:“轟音シアター”導入劇場
TOHOシネマズ すすきの(北海道)
TOHOシネマズ 上野(東京都)
TOHOシネマズ なんば(大阪府)
TOHOシネマズ ららぽーと門真(大阪府)
TOHOシネマズ 池袋(東京都)
TOHOシネマズ 立川立飛(東京都)
TOHOシネマズ セブンパーク天美(大阪府)
TOHOシネマズ ららぽーと福岡(福岡県)

■料金 :2,000円均一
※一部、追加料金が必要な座席がございます。
※招待券・6ポイント鑑賞(シネマイレージ会員)はご利用いただけません。

■販売:インターネットチケット販売“vit”
各上映日の1週間前金曜日0時~販売開始

劇場窓口
各上映日の1週間前金曜日 劇場オープン時~販売開始
※販売対象の全座席をPC・スマートフォンよりインターネットでご購入いただけます。完売した場合、劇場窓口(当日券含む)での販売はございません。

TM & (C)TOHO Cinemas Ltd. All Rights Reserved.

■上映ラインナップ
9月26日(木)19:00~
『竜とそばかすの姫』

10月24日(木)19:00~
『BLUE GIANT』

11月28日(木)19:00~
『セッション』(字幕版)

12月26日(木)19:00~
『ラ・ラ・ランド』(字幕版)

※上映内容は、予告なしに変更する場合がございます

■轟音シアターとは
「音の体感・迫力あるサウンド」を意識したTOHOシネマズだけのシアター。スピーカーユニットを向かい合わせで駆動させることで通常の1.5倍~2倍のパワーを発揮するアイソバリック方式を採用したサブウーファーを導入。これまでに体感したことのない、身体を震わせる【轟音】の音圧と【静寂】のコントラストを、ぜひお楽しみください!

『LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)』のNAOKI氏による音響調整
轟音シアターは、『LOVEPSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)』のNAOKI氏の監修による音響調整を行なっています。極限まで位相を整えた淀みのない音響環境をベースに、サブウーファーの特性を活かしたキレがあり包み込むような低音域の出力を強化しています。各周波数帯の繊細な調整を行なうことで、大音量の出力でも心地よく聞こえる音響環境を実現し、微細な音から迫力のある音まで再現できる臨場感のある音響調整となっています。