マランツから、新製品プリメインアンプとSACD/CDプレーヤーが発表された。どちらも同ブランドのフラッグシップモデルで、10月下旬の発売を予定している。

●プリメインアンプ:MODEL 10 ¥2,420,000(税込)
●SACD/CDプレーヤー:SACD 10 ¥1,980,000(税込)

「MODEL 10」

 同社は近年、“新しいオーディオのカタチ”を提唱する製品をリリースしている。リビングに調和するデザインを志向した「MODEL 30n」「SACD 30」やHDMI端子を搭載した「MODEL 40n」といった製品がそれで、今回の「MODEL 10」「SACD 10」はそのトップモデルとして、“マランツの理想の音を追求した製品” というわけだ。

 以下では、プリメインアンプMODEL 10について紹介する。

 MODEL 10は、5系統のアナログ入力(RCA×3、XLR×2)とフォノ入力(RCA)、パワーアンプインなどを備えたアナログ入出力対応の一体型ハイエンドとなる。

 オーディオ用アンプの高級機の場合、プリ/パワーを分離したセパレートモデルという選択肢もあるが、MODEL 10では一体型プリメインを選択している。これは圧倒的に設計の自由度が高いことを評価した結果とのこと。セパレートタイプでは組み合わせる相手との互換性を確保するための設計上の配慮も必要になるが、一体型ならそういった部分についてもより厳密に追い込めるのも重要だったのだろう。

天板はステンレス素材を使ったWaved Top Meshを採用。通気性に優れ、開放感のあるサウンドを再現する

 そんなMDOEL 10のアンプとしての特長は、ClassD方式のパワーアンプを搭載していることだ。マランツでは2015年の「HD-AMP1」でハイファイオーディオカテゴリー製品として初めてClassDパワーアンプを採用した。以来、多くの製品でClass Dパワーアンプを採用し、技術とノウハウを蓄積してきている。今回はその経験が活かされたことになる。

 そのパワーアンプ部には、デンマークのPURIFI(ピューリファイ)との共同開発により生み出された、独自設計のデュアルモノ・シンメトリカルClassDパワーアンプが搭載された。部品メーカーの設計したモジュールを購入して製品に組み込むのではなく、マランツとして目指す音を説明し、パワーアンプおよびSMPS(スイッチング電源回路)の基板設計からパーツ選定まですべてを新規で行い、自社工場で作り上げることにより、独自のサウンドチューニングと優れた品質を実現したそうだ。

 パワーアンプ回路はバランス回路によるBTL接続で構成され、出力はマランツのプリメインアンプ史上最高となる500W✕2(4Ω)をクリアー。パワーアンプ回路はもちろん、電源回路まで完全に独立した構成を採用することで低歪みと高いチャンネルセパレーションを実現した。

「MODEL 10」の背面端子。RCAやスピーカーコネクターには純銅の削り出しタイプが奢られている

 そこに組み合わせるプリアンプ回路は、高性能なステレオボリュウムコントロールICと高音質化された最新型のHDAM+HDAM-SA3による電圧帰還型アンプ回路で構成された「リニアコントロール・ボリュウム」を搭載。-13dB以下の音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行わず、パワーアンプのみで増幅する可変ゲイン型とすることにより、大幅なノイズの低減を実現している。

 内部配線については、信号の伝送はコネクターで行い、さらにスピーカー端子への接続用には銅製のバスバーが用いられている。このようにワイヤーによる引き回しをなくすことで、外来ノイズを抑えるだけでなく、より純度の高いサウンドが実現できている。

 MODEL10に搭載される最新型のHDAMは、入力にJFETカスコードデバイスを追加し、さらなる低歪み化を実現したという。2素子が1パッケージ化されたトランジスターを用いることで、動作の安定性を向上させている。

プリアンプブに採用されている新型HDAMの基板。2in1パッケージのトランジスターを採用し、動作の安定化と小型化を実現している

 パワーアンプ部はバランス構成のため、RCA端子からの入力信号についてはアンバランス-バランス変換回路を通しているが、そこにも最新型のHDAMおよびHDAM-SA3を用いた電圧帰還型回路を採用しており、変換に伴う音質の変化を最小限に抑えている。

 なおMODEL10ではClass Dパワーアンプを搭載することでこの部分のスペースを縮小でき、プリアンプ部にもゆとりを持った設計が可能だったという。これもMODE 10の音質改善に有効だったのは間違いないだろう。

 本体のデザインはマランツの伝統を継承したもので、最大45mm厚のフロントパネルはアルミ無垢材から削り出して作られており、そこに最大15.8mm厚のサイドパネルを組み合わせている。それらの接合部に段差ができないよう、組み上げる工程でも細心の注意が払われているという。なおフロントパネル部のLEDライトは、これまで正面左右に埋め込まれていたが、MODEL 10では上下左右の全面に配置、さらに美しいライトアップが可能になっている。

内部メインシャーシは1.2mm厚の銅メッキ鋼板で構成され、それだけでも充分な強度を備えている

 内部メインシャーシには1.2mm厚の銅メッキ鋼板が使われ、プリアンプ、パワーアンプ。電源部をそれぞれ区分して回路間の干渉を排除するなど、オーディオ機器としての細かな配慮も施された。アナログ電源回路のトロイダルトランスも専用の銅メッキシャーシに収められている。本体底面は、メインシャーシに加えて3.2mmと1.2mmのボトムプレートを追加した三層構造となっており、圧倒的な高剛性を確保した。

 またMODEL 10ではトップパネルにWaved Top Meshを採用したことも新しい。同社ではこれまでもプレミアムモデルには非磁性体のトップカバーを奢っていた。Waved Top Meshは非磁性体のステンレス製メッシュ構造で、従来よりも大きな開口面積を備え、高い放熱性と開放感のある空間表現を可能にしている。

 なお本体内にもイルミネーションが配置され、Waved Top Meshを通して内部コンストラクションやトロイダルトランス、オーディオ用パーツを眺めることができる。その美しいレイアウトを見れば、設計者がMODEL 10にどれほどの思いを注いだかも感じられるだろう。

MM/MC対応のフォノイコライザーも内蔵。写真は銅メッキ鋼板にマウントされた状態で、製品ではこの上に銅メッキアルミカバーが取り付けられる

 MM/MC対応の「Marantz Musical Premium Phono EQ」フォノイコライザーも内蔵する。20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと40dBのゲインを持つHDAM+HDAM-SA3の無帰還型フォノイコライザーアンプの2段構成を採用することにより、1段当たりのゲインを抑えて低歪みを実現した。MCはLOW(インピーダンス33Ω)、MID(インピーダンス100Ω)、HIGH(インピーダンス390Ω)の3段階の切り替えも可能だ。そのフォノイコライザー回路は銅メッキアルミトップカバーと、同じく銅メッキ鋼板ボトムケースに収められている。

 もうひとつ、MODEL 10はF.C.B.S.(Floating Control BusSystem)にも対応した。これによりMODEL 10を最大4台までつないで、入力切り替えやボリュウム操作を連動して行える。バイワイヤリング対応スピーカーをお使いであれば、高域用と低域用に2台のMODEL 10を使うことで、L/R完全独立駆動という究極のチャンネルセパレーションシステムも構築できることになる。

F.C.B.S.モードで使う場合は1台をリーダーに、他をメンバー1〜3に設定する

 ちなみにF.C.B.S.に設定すると入力端子はL側のみ有効となり、内部回路の点でも両チャンネル同一条件が実現される。なお親機になる1台がリーダー、子機がメンバー(最大3台)と呼称され、その間は3.5mmアナログケーブルでつなぐことになる。

 新製品説明会で、B&Wのスピーカー「801 D4」と組み合わせた音を聴かせてもらった。そこではMODEL 10を1台使った場合と、2台をF.C.B.S.で駆動した時の違いも確認している。その詳細は後ほどSACD 10のリポートで紹介するので、合わせてご覧いただきたい。

フロントパネルのライティングも変更された。手前が「SACD 10」で、奥の2台が「MODEL 10」