ディー・アンド・エム・ホールディングスから、DALI(ダリ)のスピーカー新シリーズとなる「RUBIKORE」が発表された。センタースピーカーや壁掛けタイプもラインナップしており、ホームシアターでのサラウンド再生にもぴったりのシリーズだ。発売は10月の予定。

RUBIKORE8 ¥1,408,000(ペア、税込)
RUBIKORE6 ¥1,056,000(ペア、税込)
RUBIKORE2 ¥528,000(ペア、税込)
RUBIKORE ON-WALL ¥616,000(ペア、税込)
RUBIKORE CINEMA ¥418,000(1本、税込)

左から「RUBIKORE8」「RUBIKORE6」「RUBIKORE2」。右端の上側が「RUBIKORE CINEMA」で、下が「RUBIKOE ON-WALL」

 型番からもわかる通り、同ブランドのフラッグシップモデル「KORE」で採用された技術を継承したモデルで、現行の「RUBICON」シリーズの後継機だ。トールボーイ型の「RUBIKORE8」と「RUBIKORE6」、ブックシェルフ型の「RUBIKORE2」、壁掛け型の「RUBIKORE ON-WALL」(従来の『RUBICON LCR』)、センター用「RUBIKORE CINEMA」(従来の『RUBICON VOKAL』)となる。

 RUBICONシリーズは2014年年末の発売で、今回は10年ぶりのリニューアルになる。ダリのCEOであるラース・ウォーレ氏は、「開発で一番重要なのは、充分な時間をかけること」というポリシーを持っているそうで、さらに「トゥイーターに革新的な技術をもちいれば、ウーファーも改善されなければならない」と語っているという。

「RUBIKORE」シリーズに搭載された主なパーツ。写真左側がウッドファイバーコーンを搭載したウーファーユニット

 つまりスピーカーのリニューアルに際しては、どこか一ヵ所を変更するのではなく、全体のバランス、ハーモニー(調和)を踏まえた進歩でなくてはならないということだろう。RUBIKOREシリーズは、こうした想いを踏まえて開発されているわけで、当然その進化のほどが期待される。

 そこには先述したKOREの誕生が大きなトピックだったとかで、ダリが目指す「音楽を楽しむためのスピーカー」として、温かみのある心地いい音を基調にしながら、同時に情報量も備えたサウンドをRUBIKOREにも盛り込んでいるという。

 大きな特長として、ソフトドーム型トゥイーターとウッドファイバーコーン型ウーファーを継承している。これらは内部損失の大きい有機的な素材なので、当然ながら微細な音楽表現が失われる可能性はある。ダリでは、独自技術で振動板以外の部分のロスを抑えることで、有機素材の魅力を活かしながら、全体としての音楽性を保ったサウンドを実現しているという。このコンセプトを同社では「Low Lossテクノロジー」と読んでいる。

 その他にも、KOREで開発された4つの新技術も投入されている。

搭載されたドライバーの背面には「DALI」の名前が刻まれており、バスレフポートからそれが確認できた

 まずトゥイーターには、「Low Lessドーム・トゥイーター」を搭載する。シルク・ソフトドーム振動板で、高速な反応を実現するために、薄くて軽い素材を採用したという(振動板の重量は、同じサイズの化学繊維に比べて半分ほど)。

 さらに、マグネットとボイスコイルの間に磁性流体を注入しないultra-low mechanical loss技術も使われている。磁性流体を使えばボイスコイルとマグネットが直接触れることがないので、製造しやすい、耐熱性が上がるといったメリットはあるが、反面磁性流体は粘りも持っているので俊敏な反応が難しくなる。ダリではそれを避けるためにを磁性流体を使わないという選択をしている。

 なおRUBIKORE2以外のモデルには17×45mmのリボントゥイーターも搭載されている。これはドーム型トゥイーター(今回は29mmサイズを搭載)の場合10kHzを超える帯域で指向性が強くなるので、リボントゥイーターを加えることで広い可聴範囲を実現しているという。なおドーム型、リボン型とも高域限界は30kHzとのことだ。

高域を受け持つユニット。右が29mmドーム型トゥイーターのパーツで、製品では写真左のように指向性を広げるためのリボントゥイーターを追加している(RUBIKORE2はドーム型トゥイーターのみ)

 165mmウーファーユニットには、クラリティ・コーンテクノロジーを採用した。上記のようにドーム型トゥイーターは薄い振動板を使っているため低域に限界があり、クロスオーバーが2kHz前後に設定されている。そのためウーファーはこの帯域まで再生できるユニットでなくてはならない。

 そこでRUBIKOREでは、ウッドファイバー素材に幾何学模様を型押しし、制動剤を含浸・塗布することで、硬く軽量で、しかも分割振動を抑えた振動板を採用している。さらに低損失ラバーエッジと組み合わせることで高域まで違和感のない再現を獲得した。

 マグネットはダブルで搭載し、ポールピース部には独自のSMC(Soft Magnetic Compound)素材を使うことで、低損失の磁気回路を組み合わせているのもポイントだろう。そのポールピースは銅キャップで覆っているが、キャップに細かいスリットを入れることでボイスコイルのインダクタンスを一定に保っている。特にダリのスピーカーではウーファーが2kHz近辺までカバーするモデルも多いので、いかに歪みを抑えるかの対策が重要になるそうだ。

スピーカー端子は全モデルともバイワイヤリング対応になった。写真左が「RUBIKORE2」で、右が前モデルの「RUBICON2」

 ネットワークは基板パターンを使わないハードワイアリングで構成される。今回新たに、高域用にはムンドルフ製フィルムキャパシターを、巻線数の多いウーファー用のネットワークにはSMCコア(RUBIKON6/8)を使用するといった改良も加えられている。

 エンクロージャーは19mm厚のMDFで構成され、フロントバッフルには25mm厚を使うことでデッドで共振の少い構造としている。さらに内部に仕切りを設け、音の中核となる2ウェイ部分は独立したチャンバーを備えた設計がされている。バスレフポートには両端が大きく、中央に向けて連続的に断面積が変化するコンティニュアス・フレアポート・テクノロジーを採用、エアーノイズの抑制に成功している。

 カラリングはハイグロス・ブラックとナチュラル・ウォルナット、さらにRUBIKORE2/6/8についてはハイグロス・マルーンをラインナップしている。この他に受注モデルとしてハイグロス・ホワイトも準備される。

「RUBIKORE CINEMA」と「RUBIKOE ON-WALL」の高域ユニットは円形のベースに取り付けられており、左右90度に向きを変更できる(ネジを外して回転させる)。つまりどちらも縦置き、横置きの両方で使えるわけで、特にホームシアター用途では活躍するだろう

 製品発表会で、RUBICON2/6/8とRUBIKORE2/6/8をそれぞれ聴き比べさせてもらった。ダイアナ・クラールの「No Moon at All」を再生してもらうと、RUBIKORE2はRUBICON2に対してボリュウムが上がった印象で音場もひとまわり広くなる。弦の力強さ、ピアノのタッチの明瞭さなども改善されている。正弦波の測定データでは両モデルに違いはないとのことだが、音楽再現性には明らかに違いが感じられる。

 RUBIKORE6もその傾向は同じだが、さらに空間が広くなり、場のクリーンな印象が際立ってくる。ヴォーカルも前に出てきて、声の存在感が強まった。最後のRUBIKORE8は、ダブルウーファーモデルだけあって低域のゆとりがあり、さらにひとつひとつの楽器もしっかり描き分けてくれる。あくまで自然な印象なのに、クリアーで情報量を備えた心地いいサウンドを楽しむことができた。

マランツの試聴室で旧モデルとの比較も行った。写真は「RUBIKORE8」