原題は「My Neighbor Adolf」。隣人アドルフ、というニュアンスか。舞台は1960年の南米コロンビア、ちょうどアイヒマンがイスラエルの諜報機関に発見された頃の話だ。主人公のポルスキーはホロコーストで家族を失ったポーランド人。ある日、その隣にドイツ人がやってきた。ちょび髭ではないし、あの髪型もしていなかったし、あの口調でもなかったが、あの冷たいまなざしは、彼の知っている「あの男」そのものだった。というのは、「あの男」とポルスキーは一度、面識があったからだ。しかも隣人と「あの男」は、やけに多くの特徴が共通しているのだった。

 定説が「妻との自殺」だとしても、実は逃げながら歳を重ねていたかもしれないではないか、ともポルスキーは思う。「世界一、憎んでも憎み切れない男」と同一人物かもしれない老人が隣に越してきたとき、ひとはどのような行動をとるか?

 が、物語は二転三転し、友情と呼べるものまで芽生えていく。やっぱり人間、心のどこかで「近い距離で住んでいる者とは、仲良い関係を築きたい」(=保身のためにも)というエモーションがあるのかもしれない。キーワードとなるのは、「チェス」、「黒薔薇」、「ジャーマン・シェパード」だろうか。なおセリフは世界上映を前提においたのか、基本的に英語でつづられている。2022年のイスラエル映画で、監督はレオン・プルドフスキー。音楽には(ヒトラーが蛇蝎のごとく嫌っていたはずの)ジャズが使われていて、これも効果をあげている。

映画『お隣さんはヒトラー?』

7月26日(金)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開

監督:レオン・プルドフスキー
脚本:レオン・プルドフスキー/ドミトリー・マリンスキー 撮影:ラデック・ラドチュック 編集:エルヴェ・シュネイ 音楽:ウカシュ・タルゴシュ
出演:デヴィッド・ヘイマン/ウド・キア/オリヴィア・シルハヴィ 他
2022年/イスラエル・ポーランド合作/原題:My Neighbor Adolf/96分/シネマスコープ/カラー/英語・独語・スペイン語・ヘブライ語/5.1ch/字幕翻訳:長澤達也
配給:STAR CHANNEL MOVIES
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