藤原陽祐さんによるレグザ「100Z970M」長期リポートの第三回。前回はリビングで100V型大画面をどんな風に楽しんでいるかを紹介いただきましたが、他にも、生活空間に100インチテレビを持ち込んだら家族はどんな反応をみせたのか、生活自体にどのような変化があったのか、そして映像のプロである藤原さんが注目した点は、などなど気になることは盛り沢山。そこで今回は、レグザブランド統括マネージャーの本村裕史さんとTV映像マイスタの住吉 肇さんを山中湖の藤原邸自宅リビングにお招きし、リビングで100Z970Mを使った感想や、高画質のためのテクニックについて語り合っていただきました。(StereoSound ONLINE編集部)

4K液晶テレビ REGZA「100Z970M」 実勢価格¥1,375,000(税込)

「100Z970M」は、藤原邸のリビングにスッキリ収まっている。部屋の横幅は3.6mほどで、最近のマンションなどのリビングとさほど変わらないとのこと。頑張れば、6畳間にも「100Z970M」が設置できるかも!?

●画面サイズ:100V型
●パネル方式:4K Mini LEDバックライト液晶パネル
●パネル解像度:水平3840×垂直2160画素
●内蔵チューナー:4Kチューナー×2、地デジ×9、BS/110度CSデジタル×3
●映像処理エンジン:レグザエンジンZRα
●HDR信号対応:HDR 10+ ADAPTIVE、Dolby VISION IQ、HDR 10、HLG HDR
●音声実用最大出力(JEITA):60W(同時駆動)
●接続端子:HDMI入力4系統(HDMI2のみeARC/ARC対応)、ビデオ入力1系統、デジタル音声出力1系統(光)、LAN端子、USB端子4系統(タイムシフトマシン専用×2、通常録画専用×1、汎用×1)、ヘッドホン端子
●消費電力:541W(リモコン待機時0.4W)
●寸法/質量(スタンド含む):W2235×H1318×D500mm/75.5kg

テレビ側から見たリビングの様子。試聴位置の後ろに天窓がふたつあり、ここから太陽光が射し込んでいるが、「100Z970M」は輝度が高いので画面が暗いと感じることはなかった

AVラック ADK「W2400」
※FG-BX600B(¥60,500、税込)×4台とFG-BS1100B(¥27,500、税込)×2台の組合せ

本村 藤原さんのお宅のリビングに100V型液晶レグザ「100Z970M」を設置して、しばらくの間そのまま使ってもらうという、そうとう大胆かつ、興味深い企画だったわけですが、反面、我々としては、ちょっと不安もありました。こんなに大きなテレビをいきなり持ち込んでいいものだろうか。特に導入の時、奥様は不在でしたから、その後大丈夫だったかどうか……。

藤原 確かに、仕事場の視聴室(山中湖ラボ)なら、何を入れても問題はありませんが、今回は日常の生活の場となるリビングですからね。正直言って、家内がどんな反応を示すのか、私も少しドキドキでした(笑)。

本村 そうですよね、家に帰って来たら、突然テレビが巨大化しているわけですから。

藤原 でも今回、ウォルナット調のお洒落なラック(ADK/朝日木材加工製)と一緒に、壁沿いにすっきりと収めてもらったこともあって、家内の反応は意外に良好でした。生活動線の邪魔にならずに設置できたのもよかったと思います。

本村 実際に100Z970Mの映像をご覧になって、いかがでしたか?

「100Z970M」で将棋のYouTubeチャンネルを表示してみた。細かい文字情報が多いが、サイズが大きくなるので、離れて見ても読みやすい

藤原 前回の記事でも書いたように、私は慣れるまで1週間ほどかかりましたが、家内が帰宅して100V型の大画面を見た最初のひと言は「このくらい大きいと、見やすくていいね」でした。家内は日頃、コンタクトレンズを使っていますが、夕方になると、疲れるのかメガネに変えるわけです。するとコンタクトに比べると、テレビも見づらくなるらしいのですが、100Z970Mだったら問題なく見られると。

 そう言えば、家内は将棋が好きで、特に藤井聡太七冠の対局をネット動画でよく見ていますが、これも100V型で見ると、また楽しさが違うようです。先日の王位戦第1局もYouTubeの「中日新聞 東京新聞 将棋/公式」チャンネルに朝からくぎ付けでした。

 対局中の2人の姿と盤面、局面の経過、残り時間など、多彩な情報がひとつの画面内に凝縮して映し出されるわけですが、これが100V型と実に相性がいい。画面の右下、小さなスペースに視聴者の書込みが次々にリアルタイムで表示されますが、その文字も大きくて、見やすい。「将棋ファンにはたまらない!」と言っていました。

本村 それは何よりです。映画やスポーツだけでなく、将棋中継も100V型で見る意味があるわけですね。

藤原 ところで、もともと100V型液晶テレビの製品化は日本国内では想定していなかったそうですね。

左端がTV映像マイスタの住吉 肇さんで、中央がレグザブランド統括マネージャーの本村裕史さん。藤原さんを交えて放送やパッケージ、配信などをチェックしながら「100Z970M」の魅力を語り合っていただきました

本村 藤原さんは内部事情にも詳しいですね(笑)、実はそうなんです。親会社の方では中国で100V型テレビを販売していたわけですが、日本でも売れるかもという話になって……。映像エンジンを入れ換え、主に画質を強化して100Z970Mとして仕上げたというわけです。

藤原 以前、ソニー、パナソニックから100V型クラスの液晶やプラズマテレビが商品化されましたが、話題性だけで終わってしまいました。でも今回の100Z970M は市場で評価が高く、販売も好調なようですね

本村 それはやはり値段とパフォーマンスのバランスのよさにあると思います。100万円強の価格(実売価格)に抑えて、レグザの最高峰としての画質、機能性を真面目に追求したことで、一定数の評価をいただけたのかなと思っています。

藤原 大画面は魅力ですが、その大きさに見あったクォリティが重要です。どんなに大きくても、画質がダメでは使いたいと思わない。液晶レグザの最高峰、Z970Mシリーズとして持てる資源を惜しみなく投入したのがよかった。それと、今回導入してみて感じたのは、部屋に入りさえすれば、意外にすっきりと収まるということでした。

本村 最適視距離を2.5H(Hは画面の高さ)とすると、本機の場合は3m10cmくらい離れて見るのがベストで、ぎりぎり頑張れば6畳間でも使えるわけです(笑)。もしリビングに置けなくても、お子さんが独立して、使っていない6畳の部屋があれば、100V型シアターが比較的、簡単に実現できることになります。

取材の前に視聴距離も測定している。「100Z970M」の画面高さ(H)は123.9cmなので、今回は約2.5Hの310cm前後に目の位置が来るようにソファをセットした

藤原 住吉さんにうかがいますが、中国で製品化された100V型テレビの表示パネル、筐体はそのまま利用して、それに自慢のレグザエンジンZRαを投入したわけですが、最初(試作の段階)の画質はどんな感じでしたか?

住吉 ZRαを入れて、85V型の「85Z970M」と同じパラメーターで映像を確認してみましたが、コントラスト感やホワイトバランス、あるいは視野角と、表示パネルの素姓は意外によかった。気になったのは、やはり映像の甘さですね。そこでまず、フォーカス感の改善に取り組み、全体のバランスを整えていったわけです。

藤原 画面サイズが変わると、見え方も変わりますからね。

住吉 4K変換後の信号に垂直、水平方向のシャープネスを最適化して、スクリーン面での光の膨張、拡がりを抑えていきました。それも輪郭が不自然に立たないように、微小な高域の処理に限定して、1画素1画素をキュと締める感じで仕上げていきました。

藤原 細いエッジを崩すことなく、テクスチャーを追及していく。レグザが得意とする絵作りですね。ただ今の時代、放送、パッケージ、ネット動画と、多彩なメディアに対応しなければならない難しさもありますね。

通常録画からタイムシフトマシンまで。レグザとアイ・オー・データ製スティック型SSDとの組み合わせで、快適操作&省スペースを実現!

取材で使ったのは容量500Gバイトの「SSPM-US500K」で、直販サイトでの価格は¥14,410(税込)

「100Z970M」の通常録画用USB端子に取り付けてみた。これだけで番組録画が可能になるのは驚きだ

 レグザをリビングで使う場合、放送録画機能はぜひ活用したい。特にタイムシフトマシンは番組の放送時間や録画予約といった制約から解き放たれる、一度使ったら離れられない魅力を備えている。

 これまでは外付け録画メディアとしてUSB HDDが使われてきたが、電源が必要で、動作音が気になるといった指摘もあった。これに対しアイ・オー・データから、スティック型の録画用SSDが登場し、注目を集めている。USBメモリーほどのサイズで、TV録画や高速データ転送が可能、さらにバスパワーで動作する点も魅力だ。

 藤原邸の100Z970Mに「SSPM-US」シリーズを取り付けてみたが、本体は端子部の窪みに収まり、配線もいらないのでたいへんすっきりする。録画機能も問題なく使えており、お薦めだ。また先日、タイムシフトマシン用に転送スピードを最適化した「AVSSD-RS」シリーズも登場。レグザユーザーはぜひこれらのテレビ録画用SSDを試していただきたい。

住吉 そう、現在は良質な4Kネイティブ素材から、昔のアップコン素材まで、映像ソースのレンジがきわめて広い。ただZ970Mシリーズでは放送受信、各種デコードなどの信号処理を行うSoC(システム・オン・チップ)とは別に、ZRαという高画質エンジンを装備していますので、絵作りの自由度は相当高いのです。

藤原 具体的には?

住吉 例えばネット動画で問題になりやすいバンディングノイズ(階段状の階調ノイズ)ですが、SoC単独で対策しようとすると、テクスチャーなのか、平坦なのかを判別するハードウェアが必要になり、検出の精度も限界があります。その点、ZRαではエリア、顔、ボディ(体全体)まで検出して、検出範囲ごとに強弱をつけてバンディングを除去できるため、副作用が少なく、明確な効果が得られるというわけです。

藤原 最近はSoCだけで様々な画像処理を行うモデルが増えていますが、それとは別にZRαを持つ強みは大きいと。

住吉 我々としては元の資源(特にビット長)を可能な限り多く確保するために、SoCには余計な仕事はさせていません。放送の復調やコーデックのデコードなど、基本的な信号処理をSoCに任せ、複雑かつ高度な画像処理はZRαに担当させるわけです。

藤原 100Z970Mをリビングに導入している人も増えているそうですが、設置後の使いこなしのコツがあったら教えてください。

リビングで「100Z970M」を活用するために、押さえておきたい「映像設定」の第一歩

 リビングでテレビを見ている場合、窓から差し込む太陽光や照明の光が画面に入って映像がぼけて感じられることがある。レグザではそんな外部の影響を抑える機能として、「おまかせAI」モードを準備している。これは内蔵された明るさセンサーなどで設置環境を判別し、部屋の照度や見ているコンテンツに応じた最適な画質に自動調整してくれるもの。

 通常は「おまかせAI」モードを選んでおけばほぼ問題はないが、その実力をフルに引き出したい場合は、「映像設定」→「明るさ詳細設定」から青ボタンを押してグラフを表示し、ここから周囲の明るさに応じてどれくらいの画面輝度で表示するかを設定すればいい。自分の好みの値を見つけるまで、色々試してみるといいだろう。

住吉 映像モードはコンテンツの内容と周囲環境の明るさに応じて、画質を自動調整する「おまかせAI」がお勧めです。これでほぼ80点の画質は得られますが、100Z970Mの場合、LEDパワーが強力なので、バックライトの明るさを輝度別(11ポイント)に調整できる「明るさ詳細設定」も効果的です。

 手順としては、「画質設定」→「画面の明るさ」から青ボタンを押して「明るさ詳細設定」のグラフを表示させ、まぶしくない程度に画面の明るさを下げていくのがコツです。最高輝度(明)部分を下げていくと、それに連動して中間調の明るさも抑えられるので、操作は簡単です。

 ただし、折れ線グラフのラインが真横に表示されるよりも、明から暗にかけて滑らかに下がっていくようにきめ細かく調整した方が、様々な絵柄、場面で自然な明るさが確保できると思います。

 この機能は単なる明るさの自動調整ではなく、同時に色調、階調性、輪郭など、様々なパラメーターを駆使して、最適な画質に調整していきます。例えば100Z970Mの「おまかせAI」モードでのパターン数は、デフォルト設定のミリ波レーダーによるセンシング映像調整(視距離補正)を行う場合が8000通り以上で、オフにした場合でも800通り以上になります。

 さらに放送波に関しては、「クラウドAI高画質」をオンにしてもらうと、コンテンツに応じて約400通り(詳細ジャンルと個別番組に合わせて。7月18日時点)の処理が行われるので、8000×400=320万通り以上の画質を導き出している計算になります。

藤原 自動調整でそこまでやりますか……。ぜひ積極的に使ってみたいと思います。今日はわざわざ遠方までお越しいただき、そして貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

「100Z970M」の100V型映像には、自発光表示とはまた違う独得の表現力がある。
見慣れた作品であっても、新たな感動を与えてくれるだろう

 100Z970Mが運び込まれて早3ヵ月余り。当初、その大きさに驚き、邪魔にならないかどうか心配だったが、いまや100V型の液晶テレビは、我が家のリビングにすっかり馴染んで、生活の一部としてなくてはならない存在になりつつある。

 実際に日常生活の中で使ってみると、色々新鮮な発見があったが、私が特に感じているのが、放送、ネット動画、4K UHDブルーレイ、ブルーレイと、映画コンテンツとの相性のよさだ。

離接する和室からリビングをのぞいてみた。「100Z970M」が持ち込まれる前は和室はあまり活用されていなかったそうだが、家具の配置変えに伴い、ダイニングテーブルなどをここに設置、ティータイムなどを楽しむ空間に変化したとのこと

 総合的な表現力ということでは、画質の基礎体力とも言えるコントラスト(黒が締まる)に優れる有機ELテレビに分が有るかもしれない。

 ただ100Z970Mの100V型映像には、自発光表示とはまた違う独得の表現力がある。具体的には、柔らかな推移で描きだされる階調性、深みのある色再現、そして弱すぎず、強すぎない中庸のコントラスト感と、どれも目の前に大きく拡がる劇場のスクリーン映像に通ずるものであり、随所で映画との親和性の高さを感じさせるのだ。

 100V型という等身大の液晶パネルに、レグザが誇る画像処理技術が加わったことで、総合的な表現力が押し上げられ、家庭用テレビとしての新たな可能性を切り拓いた意義深いモデル。もし思い入れの深い映画作品があるなら、ぜひ一度、100Z970Mで見ていただきたい。たとえ何度も見た作品であっても、新たな発見と感動をもたらしてくれるに違いない。(藤原陽祐)