1996年に公開された『ツイスター』の記憶が甦る新作映画を、劇場公開に先駆けて新宿ピカデリー・シアター6で体験してきた。
旧作を体験した人には懐かしくもあり(パッケージをヘビロテしたオーディオビジュアルファンも多いはず)、未見の人には新鮮な驚きを与えてくれる作品だ。日本では竜巻の脅威はさほど感じないが、米国の中西部では今もって大きな被害が発生する。一作目は竜巻チェイサー同士のデータ収集競争が軸になっていたが、本作は竜巻の被害者を餌にする不動産投資チームと、竜巻を追いかけるハンターとの攻防が描かれている。
物語の鍵を握るのが、かつて竜巻を無力化することに心血を注いでいた主人公、ケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)である。実験の途中で仲間を失い、半ば竜巻との戦いを諦めていた彼女を一週間の約束でオクラホマの現地に誘ったのは、学生時代の友人ハビ(アンソニー・ラモス)だった……。
自然災害に立ち向かう彼らの姿をしっかりと見届けてほしいが、『ツイスターズ』は前作以上に音の映画であるとも思った。一作目を監督したヤン・デ・ボンはスピード感溢れるスリリングな映像を見せてくれたが、本作の監督のリー・アイザック・チョンは、さらに巨大化した竜巻を絵と音で魅せる。物語の展開はある程度読めなくもないが、スカイウォーカー・サウンドが受け持つ音響は、前作の100倍(?)ともいえる大胆な演出で音の渦に観客を巻き込む。
とりわけ竜巻が登場するシーンはサラウンド全開で、風圧感が巧みに描き出されている。残念ながら試写会場はドルビーアトモス対応ではかったので、想像を膨らませなくてはならない部分もあったが、実際のダビングステージではさぞかし猛烈なサウンドが縦横無尽に飛び交っていたことであろう。5.1ch環境でもリアチャンネルが盛大に鳴っている感じは伝わってきたし、最近のミックスでは音楽をここまで大胆にリアに振り分けるのかということも分かった。
ぼくが親交のあったスカイウォーカー・サウンドの旧知のエンジニアは誰もクレジットされておらず、ここでも28年という時代の流れを感じさせられたが、若手が育ったことで、効果音には動物の鳴き声や機械音が取り込まれており、竜巻に意思を持たせる新しいサウンドデザインへのチャレンジも感じ取れる。
竜巻観測ツールの名称はドロシーだし、牛ではなく鶏が竜巻に巻き込まれるシーンが盛り込まれるなど、前作をオマージュして笑いを誘う部分も多い。ラストの情景からは3作目の予感もしなくはないが、それは観てのお楽しみ。いずれにしても音がプアだと魅力が半減してしまうので、本作を鑑賞しようという人はぜひとも音のいい劇場を選んでお出かけいただきたい。
『ツイスターズ』●8月1日(木)全国ロードショー●ワーナー・ブラザース映画
<スタッフ>●監督:リー・アイザック・チョン●製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、トーマス・ヘイスリップ、アシュリー・ジェイ・サンドバーグ●脚本:マーク・L・スミス●撮影監督:ダン・ミンデル●製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー
<キャスト>デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス、ブライドン・ペレア、キーナン・シプカ、デヴィッド・コレンスウェット
<ストーリー>気象学の天才ケイトはニューヨークで自然災害を予測し被害を防ぐ仕事に熱中していた。そんな中、故郷オクラホマで史上最大級の巨大竜巻が群れをなして異常発生していることを知る。竜巻に悲しい過去を抱えたケイトだったが、学生時代の友人ハビからの懸命の依頼で、夏休みの一週間の約束で竜巻を倒すために故郷へ戻ることに。そこで出会った知識も性格も正反対の竜巻チェイサーのタイラーら新たな仲間と、無謀ともいえる“竜巻破壊計画”に立ち向かっていく。
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