ルーカンオーディオ(鹿港音響)は台北を拠点とするオーディオ販売店・代理店として1980年前後に起業し、その後2000年頃に独自設計のスピーカー作りに着手した台湾のメーカーだ。創業者シー・フーチン氏の故郷に由来するルーカン(鹿港、Lukang)の名を掲げ、最近になって二代目のシー・ロックス氏との二人三脚で海外オーディオ市場への進出を果たした。日本への輸入も始まり、今後注目が集まることが予想される。

今回試聴したスピーカーシステム
Lu Kang Audio Spoey 155 ¥598,000(ペア、税込)

●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:20mmソフトドーム型トゥイーター、155mmコーン型ウーファー
●インピーダンス:8Ω
●出力音圧レベル:86dB
●寸法/質量:W232×H340×D310mm/11kg

Spoey 155の背面端子。同ブランドではネットワークも自社で製造しており、アンプとの接続はシングルワイアリングを推奨している

Spoeyシリーズのブックシェルフスピーカーには、同社が独自に設計・製造したインシュレーターが付属しており、今回の試聴でもそれを使っている。このインシュレーターは「LKS-INB」(¥10,980、税込、6個セット)として単品販売されており、スピーカー以外のオーディオ機器にも有用とのこと。本体カラーは真鍮色と、ブラックをラインナップ

その他の製品ラインナップ
Spoey 230FS ¥1,498,000(ペア、税込)、Spoey 230 ¥848,000(ペア、税込)、Spoey 200 ¥698,000(ペア、税込)

 今回試聴した「Spoey 155」は、同社の現行ラインナップのなかでもっともコンパクトな製品で、3機種のブックシェルフ型スピーカーの末弟という位置付けだ。そのほか唯一のフロアー型として「Spoey 230FS」もあるが、いずれもユニット構成はシンプルな2ウェイにこだわっている。

 Spoey 230FSは6月に開催されたOTOTEN2024の同社ブースで鳴らしていたので、そこで聴いた読者もいると思う。筆者はその前にミュンヘンのHighEndで初めて同社のスピーカーと出会い、ヴォーカルとソロ楽器の実在感や起伏の大きい描写に強い印象を受けた。

 Spoey 155は155mm口径のウーファーと20mmドーム型トゥイーターを組み合わせた2ウェイ構成で、ドライバーはいずれもデンマーク製。ウーファーはAudio Technology社、トゥイーターにはHiquphon社のユニットを採用している。高い剛性を確保したMDF製キャビネットは台湾の木工工場で製造し、ネットワーク回路は社長のロックス氏が自ら組み立てているという。ウォールナットフィニッシュの試聴機は控えめな光沢があり、ハンドクラフトならではの仕上げが美しい。

MacBook AirのSSDに保存したハイレゾ音源をAudirvanaで再生し、USB接続したエバーソロ「DMP-A8」でD/A変換を行った。プリアンプとの接続はXLRバランスケーブルで接続している

www.bright-tone.com

 ハイレゾ音源は、エバーソロのミュージックストリーマー「DMP-A8」にMacBook Airをつないで再生した。ウィリアムス浩子「バークリー・スクエアのナイチンゲール」(176.4kHz/24ビット/WAV)は声とピアノの発音が素直かつなめらかで、透明感の高さとウォームな感触がバランスよく両立。音量を上げてもベースのピチカートがにじむことがなく、楽器イメージが引き締まったサックスは予想以上に太い音を奏でる。

 レイフ・オヴェ・アンスネスのコンセプトアルバム「1786」に収録されているモーツァルトのアリア(96kHz/24ビット/FLAC)は、ソプラノ(クリスティアーネ・カルク)の声が高音域まで神経質にならず、ピアノとの掛け合いで表情の豊かさを発揮。声、ピアノ、オーケストラの三者が絶妙に溶け合うムジークフェラインザールの余韻の柔らかさも聴き取ることができた。

 F.P.ツィンマーマンとヘルムヒェンの「スプリングソナタ」(96kHz/24ビット/FLAC)は、なめらかで高密度なヴァイオリンとピアノの柔らかいタッチが相乗効果を生んで温かみのある響きを引き出しつつ、ピアノの左手の音域は混濁なく澄んでいて、弱音で歌うヴァイオリンの旋律がなめらかにつながる。この音源は特にSpoey 155との相性がいいと感じた。

アナログレコードの再生にはデノン「DP-3000NE」に同じくデノンのカートリッジ「DL-103R」を組み合わせている

www.denon.jp

 続いてデノンのアナログプレーヤー「DP-3000NE」とカートリッジ「DL-103R」を用意し、レコードを再生した。フォノイコライザーアンプはアキュフェーズの「C-47」を組み合わせている。

 ペトレンコ指揮ベルリンフィルのチャイコフスキー「悲愴」第3楽章で感心したのは、ティンパニと大太鼓の打音が鮮明で音像がぼやけないこと。細かく動き回る高弦の8分音符は一音一音の切れがよく、同じ旋律が低弦に移ってもその動きの軽快さが持続して、力強い推進力を発揮する。演奏の勢いや高揚感をストレートに伝えるのはこれまで聴いたルーカンオーディオのスピーカーに共通する長所で、Spoey 155もそのよさを確実に受け継いでいると感じた。

 リッキー・リー・ジョーンズ「JUKE BOX FURY」はリズムの切れが俊敏なためか、ヴォーカルの抜けのよさが際立ち、声の輪郭もいい意味で鮮鋭で音色にくもりがない。ホーン楽器もクリアーに発音するが、音量を大きめにして聴いても硬さがなく、耳を突き刺す刺激の強さとは無縁だ。このあたりのさじ加減はとても繊細で、チューニングが上手いと思う。

ルーカンオーディオの日本販売を手掛けているWAPAN株式会社の代表取締役 マックス・リーさん。現在日本のオーディオショップを回って同社製品の魅力を絶賛アピール中とのこと

 Spoey 155もそうだが、ルーカンオーディオのスピーカーは外観にクラシックな雰囲気があるので、サウンドも穏やかな音調に寄りがちなのかと思ってしまう。だが、実際に聴いてみると反応のよさと混濁のなさは第一級で、鮮度の高い音を味わうことができた。弦楽器の密度の高い音色にも魅力があり、ヴォーカルは温かみのある感触に加えて歌いっぷりのよさを引き出す長所もそなわる。レコードとの相性のよさにも好感を持った。

今回の主な試聴機器
●プリアンプ:アキュフェーズ C-2900
●パワーアンプ:アキュフェーズ A-80
●レコードプレーヤー:デノン DP-3000NEDL-103R
●フォノイコライザー:アキュフェーズ C-47
●ネットワークプレーヤー:エバーソロ DMP-A8

山之内さん愛用のレコードをお持ちいただき、様々なジャンルの音を聴いていただいた。ルーカンオーディオのスピーカーはアナログとの相性もばっちりでした

東京・目黒のホーム商会で、「Spoey 200」の音が聴ける

 本文にもある通り、ルーカンオーディオは先に開催された「OTOTEN2024」に出展、日本のオーディオファンに向けて同ブランドのスピーカーの音をお披露目した。そして現在同ブランドでは、より多くの方に自社製品の音を体験してもらうべく、試聴できるお店の拡充を進めている。

 その第1号店が東京・学芸大学のオーディオショップ「ホーム商会」。ここには「Spoey 200」が常設されており、さらに事前に相談すれば他のモデルの試聴も予約可能とのことだ。同店ではアナログレコードからSACD/CD、ハイレゾまで様々なメディアの再生もできるので、気になる音源を持参してルーカンオーディオの実力を体験していただきたい。

ホーム商会 東京都目黒区鷹番3-21-21
Tel:03(3711)0600 Eメール:info@homeshokai.jp

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