TVS REGZAは、同ブランドの新製品として4K有機ELテレビの「X9900N」シリーズと、Mini LED 4K液晶テレビ「Z970N」シリーズ、さらに75インチ大画面サイズでお手頃価格を実現した「E350M」シリーズの合計5モデルを発表した。それぞれの市場想定価格と発売日は以下の通り。

●4K有機ELテレビ
65X9900N 市場想定価格¥646,800前後(税込、7月12日発売)
55X9900N 市場想定価格¥481,800前後(税込、7月12日発売)
●4K Mini LED液晶テレビ
75Z970N 市場想定価格¥660,000前後(税込、7月12日発売)
65Z970N 市場想定価格¥495,000前後(税込、7月12日発売)
●4K液晶テレビ
75E350M 市場想定価格¥209,000前後(税込、6月24日発売)

4K有機ELテレビの「X9900N」シリーズ。左が55インチで右が65インチ

 同社取締役副社長の石橋泰博さんによると、X9900NとZ970Nは、有機ELと液晶という2種類のデバイスと正面から取り組んだ “ふたつのレグザの最高峰” に位置づけられるラインナップだという。

 まずX9900Nシリーズでは、マイクロレンズアレイを搭載した最新世代の有機ELパネルを搭載、4K液晶テレビはMini LEDバックライトを搭載して従来比1.3倍の高輝度を実現している。それらを駆動する映像エンジンのレグザエンジンZRαも最新世代に進化し、多くのAI高画質機能も新たに搭載している。“CELL REGZA 55X1以降の歴代モデルでもっとも高品質です!”と石橋さんは自信たっぷりに話していた。

 それを受け、レグザブランド統括マネージャーの本村裕史さんから、両モデルについての詳しい説明が行われた。本村さんによると近年のレグザは品質の高さが支持を集め、順調なセールスを続けているという。今回のフラッグシップ2モデルもそれを受けて品質面での進化を果たしているそうだ。

Mini LEDバックライト搭載の「Z970N」シリーズ。左が65インチで、右が55インチ

 そのキーポイントが映像エンジンとパネルで、有機ELのX9900Nでは上記の通り、マイクロレンズアレイを搭載した最新世代パネルが選ばれている。マイクロレンズアレイで有機ELパネルの光を効率よく取り出し、同時に熱伝導アルミシート(局所的に発生する熱を分散させる)と、2枚の熱伝導アルミプレート(パネルとエンジンそれぞれの熱を逃がす)からなるレグザ独自の冷却システムで効果的な放熱を行うことで、高い輝度と引き締まった黒の再現を可能にしたそうだ(ピークでは前モデルの2倍近く、全白時で1.3倍の輝度を達成)。

 液晶タイプのZ970Nは新開発の高輝度Mini LEDバックライトを搭載、広色域量子ドットシートと広視野角ワイドアングルシート、低反射ARコートをフル装備して、液晶の弱点をカバーしている。

 映像エンジンは2024年版レグザエンジンZRαで、両パネルと組み合わせて高画質化を訴求している。その代表となる「AIシーン高画質PRO」では、独自AIでコンテンツの中身を分析、夜景や花火/星空、リング競技、ゴルフ/サッカーといった具合に特性の異なる素材に応じて最適な信号処理とパネル駆動を行うことで、その場にいるようなリアルな映像を再現する。そこでは輝度ピークと色ピークそれぞれ解析して必要な部分をアップさせるといった処理が肝になるそうだ。

有機ELのパネルは2024年版に進化し、レグザ独自のハイブリット高冷却システムと組み合わせている

 そのための改良点としては、有機ELパネルでは階調再現性を重視して、暗部階調再現に新たしいディザリングアルゴリズムを導入。肌色のシャドウ部などでつぶれがちだった階調をきちんと再現できるようにすることで、その余力を明るい部分の階調処理に投入、名部から暗部まで安定した階調再現を可能にしている。

 液晶パネルは、バックライトのLED素子は従来から変わっていないが、分割駆動のエリアごとにLEDの点灯時間に加えて電流量をダイナミックに制御することで、前モデルを大きく超える3000nitsのピーク輝度を獲得、より高いコントラスト再現が可能になっている。従来モデルではピークを伸ばすと、それに連れて画面全体もわずかに黒浮きする傾向があったが、新パネルではピークを伸ばしても暗部は安定したままなので、相対的にコントラストが改善されるという。

 もうひとつ、「ネット動画バンディングスムーザーPRO」もさらに進化を遂げている。これは近年大画面テレビでも視聴されることの多いYouTube用の機能で、背景部分などに発生するバンディングノイズ(平坦部の階調むら)や圧縮ノイズを抑制して見やすい画面にするもの。

液晶パネルは、Mini LEDバックライトと量子ドットフィルター、広視野角ワイドアングルシート、低反射ARコードを備える高画質仕様だ

 X9900NとZ970Nシリーズでは新たに人物や被写体をきちんと画像として識別し(人物の表情や被写体全体を検出)、バンディングノイズを除去しつつ、被写体の精度はアップさせることに成功している。

 もちろん「アニメビューティPRO」「クラウドAI高画質テクノロジー」といったレグザの人気機能は踏襲、さらに「ナチュラルフェイストーンPRO」も最新世代が搭載されている。

 ちなみに会場でレグザの高画質技術を担当しているTV映像マイスタの住吉 肇さんから面白い話を聞くことができた。有機ELのX9900Nで、映像メニュー「映画プロ」を選び、さらに映像調整から「色の濃さ」を-50(最小値)にすると、純粋な白黒信号(輝度情報のみ)として表示されるそうだ。

 最近はカラーで撮影した後にモノクロ変換した映画作品も登場しているが、そういった作品がパッケージや配信になった場合、実際には色情報が含まれていて画面が緑がかったり、赤みが強く感じられることもある。それが監督の狙いという場合もあるだろうが、今回は、こだわりの強い映画ファンに純粋なモノクロではどんな風に見えるかを確認してもらいたいという狙いから、この機能を追加したそうだ。なお液晶テレビのZ970Nではバックライト制御の関係もあって、本機能は搭載されていない。

X9900Nシリーズの2モデルについては、「映画プロ」モードで「色の濃さ」を-50にすると、輝度情報のみの映像が再生される機能も搭載された

 サウンド面では、X9900Nシリーズには新開発の「重低音立体音響システムXIS」を採用。65インチで18基、55インチでは14基のスピーカーユニットを搭載し、これらをマルチアンプで独立駆動することで定位感と広がりのある音声を目指している。ドルビーアトモスのデコードにも対応し、5.1.2システムの効果を得られるという。

 Z970Nは「重低音立体音響システムZIS」で、こちらは11基のスピーカーユニットをマルチアンプシステムで駆動、同じく5.1.2の効果が得られるとのことだ。なおX9900N、Z970Nとも「レグザイマーシブサウンド360 PRO」機能も備えており、2chや5.1ch信号をアップミックスして5.1.2として再生できるそうだ。

 その効果を高めるため、それぞれのスピーカーを駆動するアンプについて、周波数特性や音圧、タイミングを最適化、全体としてもフラットな再現になるように細かくイコライジングを加えている。リモコンに搭載されたマイクを使ってテストトーンを測定し、設置場所(部屋の音響特性)に応じた補正を行う「オートキャリブレーションPRO」も搭載されているので、X9900N、Z970Nの導入時には忘れずに測定を行っていただきたい。

ドルビーアトモス信号はもちろん、2chや5.1ch音源もアップミックスして5.1.2音源として楽しめる

 「タイムシフトマシン」や「おまかせ録画」「新ざんまいスマートアクセス」「みるコレ番組ガイド」といった番組視聴に便利な機能も多数搭載されているので、昨今の推し活用途でも活躍するのは間違いない。レグザらしく「ゲーミングメニュー」や「144Hzフレームレート」対応など、こちらの機能も充実している。

 同時発表された「75E350M」は昨年秋に登場したE350Mシリーズの新ラインナップで、75V型という大型サイズながら市場想定価格で20万円台という驚きの価格を実現しているのが特長だ。75E350Mが加わったことでE350Mシリーズは75V型、65V型、55V型、50V型、43V型の5サイズ展開となっている。

 スペック面では、「地デジビューティ」「おまかせオートピクチャー」(明るさセンサーを使用)「ざんまい機能」を搭載したモデルで、ネット動画の再生にも対応済みだ。LEDバックライトは通常色域用となる。

Z970Nシリーズのバックライト駆動のデモ。写真右側、バックライトだけの状態でも、映像の輪郭などがはっきり識別できる

X9900Nシリーズのスピーカー構成。本体正面下側がL/Rでその両脇がサイドL/R、上に4つ並んだユニットの内側ふたつがセンターL/Rで外側のふたつがトップL/R。これらはいずれも2ウェイシステムで構成されている。中央の大型エンクロージャーが2基のサブウーファー