UDP900 ビデオプレーヤー実力検証編

内部は左から電源ブロック、ディスクドライブ+メイン処理基板、アナログ2ch音声基板とセクションごとに分離している。シャーシ構造も高剛性を追求しながら、回路間のノイズの影響を互いに抑制するような工夫が盛り込まれている。基板に使われているパーツもいわゆる音質対策品のハイグレードパーツが多数使われているほか、基板のパターンニングもスムーズさに配慮されており、「ハイエンドオーディオ、同オーディオ/ビジュアル」機器設計の勘所を把握した設計というべき完成度の高さが光る

 

 

TEST_4 有機ELテレビ再生編
色と輝度の表情、繊細さを引き出す

 ビデオプレーヤーとして、まず2つのプラットフォームで画質を評価した。直視型ディスプレイはパナソニックの有機ELテレビ、TH-65MZ2500、プロジェクターはビクターのDLA-V90R+キクチのグレースマット100の120インチワイドだ。再生したコンテンツは、ビデオ作品が『宮古島~癒しのビーチ~』、映画作品が『グレイテスト・ショーマン』、『トップガン マーヴェリック』、だ。

 有機ELディスプレイで視る『宮古島』の4K/60p、HDR映像。チャプター4の東平安名崎の遠景シーン。暗部から明部までダイナミックレンジが広大にして白側のヌケ感、ハイコントラストによるパワー感が圧倒的だ。その中にあって細部が立つ。画面右下の岩群が刻明に描写され、ディテイルが豊富だ。ここは描画の正確性が問われる箇所で、鮮鋭感が強調されるとエッジが太くなり、高域特性が弱いと、質感が大ざっぱになる。UDP900はその点、絶妙なバランスで描写している。

 遠方の燈台、その上に拡がる青い空と白い雲という、いかにもトロピカルな情景。遠景まで確実にインフォーカスしている。海の色模様も、画面左の濃い藍色と中央の緑がかった青色との対比が美しく、深くて透明という独特な色の質感が見事に表現されている。まさしくその場で肉眼で見ているよう現場感。風のそよぎも感じる、そんな空気感だ。

 チャプター5、長間浜。押す波と引く波が交差して生まれる水しぶきの一粒一粒が仔細に見えるよう。浜辺の中央のゴツゴツした黒い岩からは、生命が宿るかのごとく生体的エネルギーまで感じ取れる。珊瑚のかけらでできた砂の一粒一粒に陽光がマイクロな反射と影を作りつつ微彩な色が宿り、結果として微視的な立体感が形成されている。伊良部大橋を遠方に臨む砂浜シーン。海水が透き通り、遠くに続く海上の色のグラデーションの推移……手前のエメラルドグリーンが濃い青に変わり青い空に続くというシークエンスが壮麗だ。

 『グレイテスト・ショーマン』のチャプター15。光が横から差し込む豪華な室内での興行王バーナムとその妻チャリティ夫人との対話シーン。薄水色のプリーツの襞から立ち登る微少な光粒子の輝き、ブロンドヘアーの優美さ、頬のグラデーションの変遷のすべらかさ……と、このプレシャスなシーンを見事に描き切っている。

 続く、陽光の下の屋外シーンでは光と色が屹立する。葉の緑と花のマゼンダの補色対比、馬車のボディのグロッシーな赤と黒の対照、馬の体の色艶……と、色と質感表現が絢爛だ。

 バーナムのステージ仕事の懐古シーンでは、光の抑揚が鮮明で、ハイライトとシャドーのコントラストが鮮やか。出演者たちのけばけばしい高彩度な舞台衣装と、チャリティ夫人のデリケートで繊細なドレスとのモンタージュが、まさにアートだ。UDP900は色と輝度の表情、繊細さをしっかり引き出していた。

 『トップガン マーヴェリック』のドルビービジョン4K映像は、光の剛力の強さ、レンジ感の広さ、描画単位の微小さ……が、本プレーヤーの表現の基礎となるのがわかる。特に暗部でのS/Nの高さが印象に残った。シャドーの中のマーヴェリックの顔に乗るノイズがたいへん少ない。高S/Nは、映像をクリーンに磨く。ダークスターのボディの黒光り、マットな金属感の表情は、高S/Nの成果だ。UDP900の剛力の勁い映像と、ピラミッド的な帯域バランスにて、押し出し感、力感が強靱な音が完全にシンクロしている。

ユニバーサルプレーヤーは、多数のメディア再生が可能なため、ユーザーの再生環境にフットするような適切な設定が肝心。マグネターでは、日本語でのわかりやすい表記を含めたセットアップメニューの構成となっている

 

映像再生中にリモコンの(iの表示がある)「Display」ボタンを長押しすると、ディスク情報など詳細が表示される。HDR映像再生時には、「HDR Info」という名称でディスクに記録されたメタデータの表示も可能。「DISP_MAX_CONTENT」がいわゆる「Max CLL」(最大輝度)、「DSIP_MAX_FRAME_AVE」が「Max FALL」(フレームごとの最大輝度の平均値)となる

 

BDオーディオ盤『モーツァルト:オペラ<フィガロの結婚>/クルレンツィス指揮ムジカエテルナ、ほか』の再生時の画面。3CD+BDオーディオ盤として2012年にリリースされた。今回の取材で使った本作や『狂気/ピンク・フロイド』に限らず、クラシック、ロック、ポップスなどで優れたサラウンド音声を収録した音楽作品が着実にリリースされている。こうした作品を高品位で再生するためにも、マグネターのような優れたビデオプレーヤーがファンにとって必要だ

 

 

TEST_5 大画面プロジェクター再生編
細密な映像粒子が画面全体に充満する

 ではビクターのプロジェクターDLA-V90Rの120インチ画面ではどう見せるか。実はビデオプレーヤーの映像は、有機ELなど直視型ディスプレイではとても良好であっても、プロジェクターでの反射映像ではそこまでの水準に達しないということがよくある。

 換言すると、ソース側の信号品質がいまひとつのクォリティであっても、それなりにキリリと見せてくれる直視型ディスプレイ、特に有機ELテレビと、入力信号のクォリティを正直に、スクリーン上に表示するプロジェクターという違いがある。だからこそ、プロジェクターでの映像品質を観ることが、極めて重要なのであり、そんな観点から大画面のDLA-V90Rを観た。

 結論から述べると、UDP900は大画面で勝負を張れるクォリティを有していることが分かった。キーワードが「密度感」だ。粒子サイズがきわめて細密で、レトリックで言うと、それがぎっしりと画面に充満している印象だ。オーディオ的に言うと、粒立ちが良いとなろう。

 『宮古島』の東平安名崎の遠景。ゴツゴツした岩の塊の凸凹、細かな影、遙かに望む灯台……という記号性が抉り出されるように輪郭的に強調されるのではなく、微粒子が蝟集して形成された「ハイレゾ的なマテリアル」として観ることができた。緑と青。画面左右で異なる海の色も濃密で深い。

 長間浜での南国植物の緑の濃さ、海の青緑の密度感、砂粒のひとつひとつまで観察できるほどの細やかさ。有機ELテレビでも浜辺の岩に言及したが、プロジェクターの大画面でも、それは実に印象的。画面中央の存在にどっしりとした重みがあり、無数に空いた孔にもリアルな存在感がある。ヤドカリが動き回る珊瑚のかけらの砂浜では、微細な凹と凸がシャドーとハイライトを持つ精細な光の抑揚。映像を構成する、ひとつひとつの部分をまるで眼前の情景として視ているような錯覚を受けた。

 『グレイテスト・ショーマン』チャプター15も、チャリティ夫人の微細な色香、薄水色の服のプリーツから湧き出す万華の階調が、映像をよりアーティステックに彩っていた。高密度な情報量は生々しい情景に通じ、そしてそれは情感となる。大画面が醸し出す臨場感と情緒感が心地好い。

 UDP900はプロジェクターの大画面を表現の道具として使い、大画面ならではのスケールの大きさと高密度な精細感による臨場感再現性を見事に打ち出している。有機ELは「明瞭、はっきり、くっきり」、プロジェクターは「緻密で、細やかなグラデーション」と、UDP900はそのデバイスの持ち味に沿った高品位な再生をしてくれた。

 

【UDP800コラム②】

UDP900に比べて全高は低くなっているが、7.1chアナログ音声出力とUSB Type B以外の接続端子類は同じ。HDMIセパレート接続を中心で使うのならば、パフォーマンスレベルも近く、コストパフォーマンスという観点では非常に注目すべき製品だ

UDP800
ビデオプレーヤー検証

最新高品位映像の魅力をしっかり描写。濃密な映画音響の再生も堪能できる

 有機ELテレビTH-65MZ2500では、非常にしっかりとした描写力を見せた。ビデオ映像の最高峰『宮古島』東平安名崎の場面では、遠方の燈台までまるで、その場で見ているような明確なフォーカスと精細さ。左側の海の碧さ、右側の海の緑感という色の描き分けが鮮やかだ。

 映画コンテンツ『グレイテスト・ショーマン』のチャプター15では繊細で緻密、そしてデリケートなトーンを見せた。バーナム夫人、チャリティの淡い水色のプリーツ服。その襞から立ち登る微少な光粒子の繊細さには刮目。このように有機ELならではのハイコントラスト表示が高質さを際立たせていた。

 一方、プロジェクターの120インチ画面では、全体的にやや薄味傾向という印象はあったが、ディテイルまでの細密描写は大画面で見ても高水準だ。UDP900との差は確かにあるが、そもそものクォリティが高く、最新の高性能映像をたっぷりと堪能させてくれる。

  音に関しては『グレイテスト・ショーマン』では声の質感に優れ、音場の空気感も濃密だ。『トップガン マーヴェリック』は、堂々としたピラミッド的な音調。低音力が強く、セリフもキャラクターを上手く再現している。音場には緊迫感が漲る。ビデオコンテンツでは、HDMIセパレート接続を基本に考えたい(麻倉)

 

 

TEST_6 ムービーサウンド編
作品に込められた魅力を最大限に発揮

 紙幅が限られるが、映画の音についても簡単に触れよう。『グレイテスト・ショーマン』では、低音の安定感が高く、剛性感がしっかり。ドルビーアトモス音場も空間的な安定感が盤石だ。ダイアローグでも役柄のキャラクターを雄弁に表現している。『トップガン マーヴェリック』は低域のスケールが非常に大きく、しかもリジッドだ。ピラミッド的に安定したハイスケールなバランスで上に載るダイアローグや効果音の粒立ちもたいへん細やかで、情報性と情緒性に満つる。ハンス・ジマーならではの楽曲らしい緊迫感演出をストレートに再現する表現力が素晴らしい。

 UDP900は音楽から映画まで、絵あり/絵なしに関わらず、そのコンテンツの魅力を最大限に発揮させる「音」表現力を有する。

 

結論

現代のビデオ/ユニバーサルプレーヤーとしてトップのサウンドパフォーマンスに感動した

UDP900は、現代のビデオ、そしてユニバーサルプレーヤーとして、トップのサウンドクォリティだと分かり、感動した。画質、音質ともにキーワードが「高密度」だ。ディスプレイ、スクリーン、そして音場をプラットフォームにした精細表現が、本プレーヤーの持ち味だ。コラムでも述べたようにUDP800も立派なクォリティを有しているが、UDP900はダイナミックレンジがさらに拡張し、ディテイルや階調などの描写単位がさらに細やかだ。基本デバイスは共通だが、電源/回路/筐体に奢った効用だろう。自宅シアターで、かつての人気プレーヤー・オッポデジタルのUDP-205と比較する機会があったが、本機の前には、画質も音質も旧製品の懐かしさを感じたと、簡単に述べるに留めよう。

 

 

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https://online.stereosound.co.jp/_ct/17705194

 

リファレンス機器

● 有機ELディスプレイ:パナソニックTH-65MZ2500
● プロジェクター:ビクターDLA-V90R
● スクリーン:キクチ グレースマット100(120インチ/16:9)
● AVセンター:デノンAVC-A1H、AVC-X8500HA
● スピーカーシステム:モニターオーディオPL300Ⅱ、PLC350Ⅱ、PL200Ⅱ、PL100Ⅱ、イクリプスTD508MK3、TD725SWMK2

再生したソフト

● CD:『エトレーヌ/情家みえ
● SACD:『ナイトフライ/ドナルド・フェイゲン』(2ch/5.1ch)
● DVDオーディオ:『ナイトフライ/ドナルド・フェイゲン』(2ch/5.1ch)
● BDオーディオ:『モーツァルト:オペラ<フィガロの結婚>/クルレンツィス指揮ムジカエテルナ、ほか』、『狂気/ピンク・フロイド
● UHDブルーレイ:『宮古島 ~癒しのビーチ~』、『グレイテスト・ショーマン』、『トップガン マーヴェリック

 

 

本記事の掲載は『HiVi 2024年夏号』