第1回 画質&音質を徹底検証

 超話題のマグネター(MAGNETAR)の最新UHDブルーレイプレーヤーUDP900&UDP800。実際の画質、音質はどうなのかを徹底的にチェックした。マグネターは2021年の創業だが、もともと日本メーカーのDVDやブルーレイプレーヤーのOEM製造を20年以上に渡って手掛けてきた、ディスクの世界では大ベテランメーカーが導入した新ブランドだ。

 第1の注目はマルチディスク再生。DVDビデオ、ブルーレイ、UHDブルーレイのビデオディスクはもちろん、CD、SACDも再生可能。

 第2の注目は高品位へのしつらえ。UDP900のシャーシはノイズ対策と振動対策を施したオールアルミの上下二段構造。電源はメインボードとアナログオーディオ回路用に2系統が独立。アナログ/デジタル回路は物理的に分離され、相互干渉ノイズを防ぐ。

 第3に重さ。オーディオ系製品は間違いなく、「重さ=クォリティ」だ。UDP900の質量は15.5kg。心して持ち上げないと、腰を痛めそうだ。では、基本的な知識を解説したところで早速チェックに入ろう。

UDP900 オーディオプレーヤー実力検証編

 

UHD Blu-ray Player
MAGNETAR
UDP900
オープン価格(実勢価格55万円前後)
● 再生メディア:CD、SACD、DVDビデオ、DVDオーディオ、BD、ブルーレイ3D、UHDブルーレイ、ほか
● 接続端子:アナログ2ch音声出力2系統(バランス、アンバランス)、アナログ7.1ch音声出力1系統(アンバランス)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、HDMI出力2端子(映像/音声対応×1、音声専用×1)、USB端子3系統(Type A×2、Type B)、LAN1系統
● 寸法/質量:W445×H133×D321mm/約15.5kg
● バランス出力HOT=2番ピン
● 問合せ先:(株)エミライ

 

 

TEST_1 CD再生
AVC-A1Hとの接続ではデジタル同軸がベスト

  CD『エトレーヌ/情家みえ』の「チーク・トウ・チーク」を再生し、出力端子別の音質の違いを探る。アンプはデノンの旗艦AVセンターAVC-A1H。

 接続①アナログ・アンバランス(RCA)。UDP800は囲み記事で指摘したように、バランス(XLR)接続が有利に感じたが、UDP900はアンバランス接続で、すでにハイクォリティ全開。低音のスケールが雄大で、ヴォーカルの質感に優れる。音場全体の音の充満度も高い。内蔵DACの優秀性がすぐ理解できた。

 接続②アナログ・バランス(XLR)。アンバランス接続と比較すると、さらにグレードが上がる。ヴェールが数枚はがれ、闊達に音が迸る。ヴォーカルの質感はさらに向上し、ボディの密度感も上がった。解像感も高い。アナログ2ch再生が快調だが、デジタル接続はどうか。

 接続③デジタル同軸。デノンA1H側のDACでD/A変換を行なう状態だが、これもたいへん良い。透明度はアナログ・バランス接続よりも高く、音場の見晴らしがクリアーになった。表情も繊細だ。この環境ではナンバーワンの音質だ。

 HDMI接続は映像信号と同居する接続④HDMIシングル出力と、接続⑤音声専用のセパレート出力(実際には映像の同期信号は載る)の2パターンで試した。接続④HDMIシングル接続では、音の体積が少し減り、ソノリティもやや渋い。接続⑤HDMIセパレート接続は断然良い。微小信号が明瞭になり、表情の優しさも豊かに再現される。接続②アナログ・バランスや接続③デジタル同軸接続に迫る勢いだ。ここまでのトライで、UDP900はUHDブルーレイプレーヤーとしてトップの「音質力」を持つのではないかと思えたが、でもまだ結論づけるには早い。

 

MAGNETAR
UDP900

多数の接続コネクターを装備しているが、オーディオプレーヤーとしてはアナログ・バランスもしくはアンバランスで、アナログアンプにつなぐ方法がメインで、単体DACをお持ちの場合は同軸あるいは光デジタル端子を用いるのもいいだろう。ビデオプレーヤーとしては、HDMIでの接続を基本に考えたい。アナログ7.1ch音声出力端子は、現行AVセンターでの搭載は限られているのが現実だ

 

TEST_2 SACD/DVDオーディオ再生
2ch再生はアナログ・バランス接続、HDMIならセパレート接続を選びたい

 次に本プレーヤーで注目のSACD再生を聴こう。曲は天下の名録音のドナルド・フェイゲンの『ナイトフライ』から1曲目「I.G.Y.」。SACD2ch/5.1ch版を使って、2chと5.1chを聴く。まず2chの接続①アナログ・アンバランス。SACDらしい階調の細かさ、クリアーな空気感、ブラスの鮮鋭感、ヴォーカルの透明感……と、なかなか好調だ。接続②アナログ・バランスは、さきほどの情家みえのCD同様、確実に向上した。スケールが大きくなり、音場が稠密に、ヴォーカルもディテイルまで上質だ。確かにSACDにはアナログ・バランス接続が似合う。

 次にデジタルだが、SACDはフォーマットの制約でデジタル同軸伝送は不可なので、HDMI接続を試す。接続④HDMIシングル出力は鮮鋭感が強いが、微小信号の表現が物足りず、音場も狭い。密度感も薄味だ。SACD的な質感再現には不足といえよう。接続⑤HDMIセパレート出力になると格段に良い。音のキレがリズミカルになり、音場の透明感も向上。ヴォーカルの質感も丁寧であり、総合的には接続②アナログ・バランスに次ぐクォリティだ。

 ここまでが2チャンネルSACDだが、同じ接続⑤HDMIセパレート出力で5.1ch音声はどうか。ドナルド・フェイゲンのヴォーカルはセンターに安定して定位しながら、音場が格段に拡がった。大胆な楽器移動、ブラスの全音場的な拡がり、コーラスの重層感……というサラウンド音場を活かした音の演出が、まさに2ch再生での高音質を保ったまま体験できた。本機のSACD再生能力は非常に高いことを確認した。

  接続⑤HDMIセパレート出力のまま、2001年ごろにリリースされたDVDオーディオ盤『ナイトフライ』で「I.G.Y.」を聴く(48kHz/24ビット/5,1ch/MLP音声)。SACDとミキシングがまるで違う。音場がもの凄く派手になった。いや、音場一杯に音像を拡げた制作者のミックス意図が正確に再生されたというべきであろう。リアからブラスが咆吼し、前方左にはギターがアルペジオを奏し……と、SACDマルチを超えた絢爛な音場だ。各音像のボディも鮮明。フォーマット自体のスペック48kHz/24ビットにとどまるが、高剛性でヴィヴィッドな音だ。DVDオーディオの所有者には自信を持ってすすめられる再生能力だ。

TEST_3 BDオーディオ再生
アナログでもデジタルHDMIでもコンテンツの魅力を十分に発揮

 BDオーディオのハイレゾはどうか。鬼才クルレンツィス指揮ムジカエテルナの『モーツァルト:オペラフィガロの結婚』から「序曲」を、接続⑤HDMIセパレート出力のまま再生。192kHz/24ビットスペックの2chは進行力が強く、解像感が高い。立ち上がり/立ち下がりが俊敏。このスペシャルな演奏の溌剌感、躍動感を余すところなく再現している。2chでの再生だが、音場は密にして広い。

 5.1ch音源では驚くことに、音調がまったく違う。2chはHi-Fiトーンだったが、マルチは大向こうを狙った重めの劇場風(?)のタッチ。音場全体に隙間がないほど音が詰まり、すべての音像が強調気味で、ボリューミーな低音が音場を覆い、楽器が高彩度に煌めく。つまり原音忠実型の2chとは対極的に、極めて演出的にカラフルにミックスされている作品なのである。ここでも「I.G.Y.」でも述べたように制作者の意図がたいへん明確に分かる。

 UDP900は、最近のプレーヤー/レコーダーでは稀有なアナログ7.1ch端子も搭載している。この仕様はマルチチャンネル入力を持つ、AVセンターのユーザーには歓迎されよう(現行品では省かれる製品が多いが)。そのクォリティはどうか。AVC-A1Hにはマルチチャンネル入力端子がないので、1世代前のAVC-X8500HAを倉庫からひっぱりだした。するとこれまで聴いてきた、AVC-A1H+接続⑤HDMIセパレート出力での再生とは、大いに音調が異なるではないか。BD『フィガロの結婚』の5.1ch音源では、音場的なしつらえはそのままに、ジェントルで潤いを持ち、端正になった。これはプレーヤー側のアナログ7.1ch音声とHDMI端子による違いなのか、もしくはアンプ側の入力端子での基本音調の差なのかを確認するために、AVC-X8500HAのHDMIセパレート接続を試したところ、優しさ、しっとりさ、品格感……という音の記号性が共通することが分かった。つまりA1Hは精細で明瞭、剛性感が高く、一方、X8500HAはしなやかさと端正さ、調和感が持ち味というアンプの基本的な音調の違いを反映したことが確認できた。

 AVセンターをAVC-A1Hに戻し、接続⑤HDMIセパレート出力で、ピンク・フロイドの名作『狂気』の2023年盤BDオーディオをリニアPCM2ch(192kHz/24ビット)、DTS-HDMA5.1ch(96kHz/24ビット)、ドルビーアトモスの順に聴く。曲は「タイム」。まず2chだが、後のマルチチャンネルで展開される楽器、ヴォーカルなどの多くの音像が、ぎっしりとステレオ音場に詰め込まれた印象だ。音の浸透力は強い。右から秒針音、左からは目覚ましアラームが聞こえる。音場は左右、奥行方向に深く拡がりながら、ヴォーカルはセンターに明確に定位。音質力は高い。

 DTS-HDMA5.1chでは、狭い場所に閉じ込められていた音像が爆発的に放たれる。前方にはギターの周期的なリフとバスドラムが、後方からはパーカッションとシンセが……と、広い音場に縦横に音像が配置。ピンク・フロイドの音楽性も一挙に解き放たれ、本作はサラウンドでこそ真価を発揮すると納得。特に闊達なパーカッションが印象的だ。
ドルビーアトモスでは、さらに半球内に音が解放される。アンビエントの音密度が高い。ヴォーカル音像が立体的に丸みを帯び、空間的なスケールが大きい。

  ユニバーサルプレーヤーとしてのUDP900はそれぞれの音場表現の違いを見事に描き分け、各メディア、各コンテンツにおいて、現代のトップの音再現力を持つことを確認した。

>後編に続く

https://online.stereosound.co.jp/_ct/17705204

 

UHD Blu-ray Player
UDP800
オープン価格(実勢価格29万7,000円前後)

● 接続端子:アナログ2ch音声出力2系統(バランス、アンバランス)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、HDMI出力2端子(映像/音声対応×1、音声専用×1)、USB端子2系統(Type A×2)、LAN1系統
● 寸法/質量:W430×H90×D312mm/約6.7kg
● 再生メディアはUDP900と共通

 

【UDP800コラム①】

UDP800
オーディオプレーヤー検証

アナログ接続はバランスが優位。HDMIはセパレート接続が断然良い

 アナログ音声出力はバランス接続が良い。アンバランス接続に比べ、低域のキレ、スピード感、ヴォーカルの表現性などで優れる。同軸デジタル接続では透明度が高く、表情も濃密。HDMIシングル接続と比べると、キレ味などの点でHDMIセパレート接続が断然良い。ヴォーカルが清潔に質感がしなやかになった。HDMIセパレート接続で聴くドナルド・フェイゲン「I.G.Y.」のSACD2chは、華やぎが愉しく、伸びがクリアー。ブラス音色が豊穣だ。

 HDMIセパレート接続で聴くBDオーディオ『フィガロの結婚』は溌剌さと勢いの鋭さが光る2chと、劇場的な演出性の5.1chという、音楽性の違いを見事に表現した(麻倉)

 

 

本記事の掲載は『HiVi 2024年夏号』