可愛らしいコンパクトなデザインと、圧倒的とも言える使い勝手の良さで人気を集めたJMGO(ジェイエムゴー)のDLPプロジェクター、N1がN1Sに生まれ変わった。

 上下に127度回転することができるジンバル一体型設計で、シームレスな自動台形補正、オートフォーカス機能も搭載済。テーブルにポンと置いて、白壁にそのまま投影可能。本体を上に向けると天井投写が楽しめるなど、そのフットワークの良さは健在だ。

  ではN1Sになって何が変わったのか。最大の注目点は、OS(基本操作ソフト)がAndroid TV 11 OSからGoogle TV OSに進化したことだ。Wi-Fiの環境下で、電源さえ確保すれば、YouTube、Amazon Prime Videoなどの様々な動画配信サービスが楽しめるのは一緒だが、今回新たにNetflixについてもダイレクト再生が可能になった。Google TV搭載のテレビ同様、アプリの追加も可能で、ほとんどの動画配信サービスがN1S単独で楽しめるというわけだ。

 

Projector
JMGO
N1S
¥149,380 税込

● 型式:DLPプロジェクター
● 表示デバイス:0.33型DMD
● パネル解像度:水平1,920×垂直1,080画素
● 光源:RGBレーザー
● 光出力:900ANSIルーメン
● コントラスト:1,600:1
● 接続端子:HDMI1系統(eARC)、USB Type A端子、3.5mmヘッドホン出力端子
● 騒音レベル:26dB
● 寸法/質量:W165×H191×D187mm/約2kg
● 備考:Google TV OS搭載。オートフォーカス、自動台形補正機能搭載
● 問合せ先 : (株)日本ビジネス開発

 

 

RGBレーザーとフルHD仕様DMDを搭載BT.2020色域を110%カバーする

 ではプロジェクターとしての実力や如何に。投写レンズは長焦点タイプで、ズーム機能はなし。推奨の画面サイズは80~100インチ。100インチの投写距離は2.6mとなり、6畳間でも長手方向から100インチ投影が可能となる。

 0.33型のDLP素子(DMD)はフルHD仕様で、光源にはRGBレーザーを採用している。高効率のレーザー光源を採用する家庭用プロジェクターは現代では決して珍しくないが、そのほとんどは青色レーザーで蛍光体(黄色の場合が多い)を叩き(励起:れいき)、白色の光源を確保するというシステムで、単板式DLPプロジェクターの場合、高速で回転するカラーホイールが必須となる。

 ところがN1SではRGBの各レーザーを高速で切り替えてフルカラー表示するため、カラーホイールがいらない。当然、高効率で静か。色純度も有利になり、実際にスペック上ではBT.2020色域のカバー率はなんと110%に達している。家庭用として、ここまで色域を拡大した表示機器はみたことがない。

  HDR(ハイ・ダイナミックレンジ)の表示はHDR10に対応済。デバイスの解像度はフルHDだが、HDRコンテンツはSDR変換せずに、そのまま表示できるというわけだ。

 小型ボディながらフルレンジ5W+5Wアンプ搭載のステレオスピーカーを内蔵。さらにHDMI eARC端子も装備しているため、KEFのLSX ⅡやエラックのDCB-41などのアクティブスピーカーや、サウンドバーなどとの組合せも考えやすい。またBluetoothスピーカーとのワイヤレス接続も可能だ(コーデックはSBC/AAC対応)。

小型かつジンバル型スタイルで優れた設置性を実現。本機はWi-Fiに接続、内蔵のGoolge TV OS上で動作する各種動画再生サービスを楽しむスタイルのプロジェクター。外部入力はHDMI端子とUSB Type Aのみ。HDMIはeARC対応なので、サウンドバーなどの音響機器との連携も可能だ

 

 

鮮烈な色再現に思わずハッとなるフェイストーンも非常に素直だ

 さっそくApple TVでデジタル購入した映画『バービー』を見ていこう。Google TVのホーム画面から(事前にインストールしておいた)Apple TVアプリを立ち上げ、ログイン、アーカイブの中から作品をさっと選択して再生。この一連の動作はGoogle TVを採用したソニー、シャープなどのテレビとまったく一緒で、レスポンスも素早く、スムーズだ。

 その映像だが、まず見栄えのする色再現にハッとさせられる。一定のコントラスト感を確保しつつ、ピンク、ブルー、グリーンと、色鮮やかな衣装が描き出される。通常、ここまで鮮やかにみせると、映画では極めて重要なフェイストーンが影響を受けてしまうケースが多いが、このN1Sについてはそうしたクセっぽさを感じさせない。

 赤、青、緑などの原色の表示については、液晶や有機ELテレビ、液晶素子を用いたプロジェクターとは明らかに異なり、やや強調気味のタッチになるので、原色部分の発色を抑え気味に調整したい。

 ナイトシーンでは黒つぶれを避けるために、意図的に黒を浮かせるような見せ方になる。もう少し黒を落として表示したいとも感じるが、平均輝度が一定レベル以上になると、見た目のコントラスト感に余裕が生まれ、細部の描き分けもより明確になる。そして注目すべきは、単板式DLPにつきものの色割れノイズがほとんど気にならないこと。これは画期的だ。

 4KレコーダーとHDMI接続し、4K放送も確認してみたが、見た目のフォーカス、輪郭の滑らかさ、そして発色の鮮やかさと、基本的な画調は変わらない。ハイライトでもしっかりと色を乗せているし、難関の日本人のフェイストーンも安定していた。

内部構造のイメージ。RGBレーザーがそれぞれ1基使われ、投写デバイスであるDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いてフルカラー表示を実現。RGBレーザー方式のプロジェクターは家庭用としては非常に貴重な存在であり、小型モデルではあるが最新テクノロジーの塊といえる存在だ

 

本機は、投写画面を常時認識して、フォーカスや台形補正などを自動で行なう。非常に使い勝手のよい機能ではあるが、画質にこだわるのならば、スクリーンを使って、幕面中央の延長線上に、ジンバルを斜めにしない状態で設置したい。台形補正をできるだけしないことが高画質につながる。なお、ズーム機能は非搭載だ

 

本記事の掲載は『HiVi 2024年夏号』