西尾孔志監督が贈る、どこか憎めない愛すべき変り者たちの姿を描いた映画『輝け星くず』が、いよいよ6月15日(金)より公開される。ラブラブな割にはどこかしっくりこないカップル、謎だらけの父親、トラウマに苛まれる娘、ドタバタのロードムービーなどなど、タイトルを象徴するような登場人物・シーンが満載の注目作だ。ここでは、主人公・かや乃を演じた山﨑果倫にインタビューした。

――よろしくお願いします。主演おめでとうございます。記憶に残るタイトルですね。
 ありがとうございます。そうですよね。でも実は、オーディションの時には違うタイトルが付いていて、撮影が始まる頃にこのタイトルになったように覚えています。燻っている感じの人間を活写した印象で、記憶に残りますね。

――オーディションを受ける時は、この作品にどのようなイメージを持っていたのでしょう?
 完璧で善良な人間を良しとする、ではない作品なので、不完全でも、不器用でも、いつもうまくいっているわけじゃなくてもそれでもいい。なんならそこが愛おしい。それを描いている作品と感じました。なので、たくさんの人に挑戦する勇気とか、失敗する勇気を与えられる作品なのではないかと思い、これは絶対にやりたいと意気込んでいました。加えて、私自身、過去に傷を持っている役を演じてみたいとずっと願っていたので、かや乃という役を演じることができたのは、とても嬉しかったです。

――過去に傷を持っている役を演じたいというのは?
 もちろん、傷つかずに、痛みを知らずに生きていけるのなら、それはそれで素晴らしいと思いますけど、人って、傷ついた分だけ、痛みを知った分だけ、人に優しくなれると私は信じているんです。なので、過去に傷を持ったキャラクターが持つ深みだったり、哀愁があるからこその人間的魅力っていうところに、私はすごく惹かれるので、役についても、過去にそういう傷があると、セリフに一つ一つの重みも違ってくると感じるので、そういう役を演じてみたいとずっと思っていました。

――人生経験が豊富なんですか?
 どうでしょう。ただ、24歳にしては、いろいろな経験をしてきているとは思っています。10代で上京していることもそうですし、周りの友達より社会に出るタイミングが早かったので、さまざまな人との出会い、経験は多いと思っています。

――完璧でありたい、という思いが強い?
 10代の頃は、すごく強かったです。とにかく、人に落ち込んでいる姿とか、悩んでいる姿を見せてはいけないと思っている時期もありましたし、挑戦するなら絶対に成功しないといけないっていう、呪縛のような考えもありました。それもあって、やる前から自分ができなさそうなことは挑戦するのをやめてしまう。そういうことは、10代の頃はすごくありました。失敗するのが恥ずかしかったのかもしれません。まあ、今では全くそう思わないんですけど、当時は、行動の制限がすごくあったような気がします。

――経験が成長につながった?
 そうですね。いろいろな人に出会っていく中で、優しい人とか視野が広い人って、きっと失敗した経験もすごくあるんじゃないかって感じられて。それで、失敗は恥ずかしいことではないんだよって、いろいろな人から教えてもらったように思います。

――おばあちゃん子っぽいですね。
 あっ、そうです! めちゃくちゃおばあちゃん子で、すごく愛情を受けて育ちました。だからこそ、私も優しくありたいと願っています。

――さて、話を作品に戻しまして、オーディションの雰囲気は覚えていますか?
 はい。もちろん役を獲る気満々で受けましたけど、オーディションを受ける人がたくさんいて! ダメかも……って思いかけましたけど、絶対にかや乃を演じたかったので、私が一番できるって、自分に言い聞かせて頑張りました。

――受かったと聞いた時は?
 3回ぐらい、“本当ですか?”って聞き返しちゃいました(笑)。結構、オーディションから時間が経っていたので、半ば諦めていたんですけど、受かった時は、驚きと嬉しさで、気持ちがいっぱいになりました。

――待望の役が決まりました。その役作りについて教えてください。
 かや乃には、タバコを吸うシーンがあるので、まずはそれを一番練習しました。私自身、タバコを吸ったことがなかったので、愛煙家であるかや乃の仕草をきちんと再現するために、毎日タバコを吸う練習をして、手つきや、慣れている雰囲気をしっかり出せるように、まず行動的な部分の役作りをしました。

 心情的には、お父さんとの関係が大事なので、(お父さんに対して)どんな葛藤を持っていたのか、どういうことを欲していたのかということを、自分の父のことを思い浮かべながら考えて、それを役に活かすようにしました。

――お父さんとはずっと離れています。
 そうなんです。かや乃にとってお父さんと会うことは、触れたくないというか、開けたくない箱を開けることになるんだろうなと思ったので、すごく複雑でした。そういう気持ちを醸成するために、(実)父と連絡を取らないようにしていました(笑)。普段は、毎日のように電話しているので、撮影期間は寂しかったです。そのおかげで(実父と距離を置くこと)、お父さん役の岩谷(健司)さんを、本当のお父さんって思うことができました。

――会ってはいませんけど、嫌いというわけでは、ない。
 そうですね。すごく大事で愛しい存在。でも、その気持ちが強いからこそ、全部が裏返しになってしまうというか、燻ってしまう感覚だと思うんです。おまけに、お父さんもすごく不器用ですし。おそらく、自分の人生がうまくいかないことを、お父さんのせいにしたくない自分もいれば、すべてお父さんのせいにしてしまいたい自分もいて……。きっと、かや乃にとっては、自立しきれていない部分、お父さんのせいにしたい部分っていうのをずっと持っていて、それと戦っているようなイメージだったので、お父さん(岩谷さん)とのシーンでは、その揺れている心を大事に演じていました。

――一方で、恋人の光太郎との関係は、ベッタリというかラブラブでした。お父さんの代わりを求めているのか? 安心を求めているのか?
 光太郎に対しての気持ちは全部甘えですね。だからこそ失いたくない。でも、かや乃の方も徐々に変わっていっていると思っていて、失いたくないっていう自己中心的な気持ちが、段々とこの人を傷つけたくないっていう風に変化していくように感じましたので、そのコントラストはすごく大事にしました。

――そんなラブラブな日常が、突然終わりを迎えます。その様子は、リアルなドキュメンタリー番組のようでもありました。
 そうですよね、私も、今まで参加した作品の中で、ああいう撮り方(作り方)をするのは初めてだったので、完成した映像を見た時には、面白いなって思いました。

――その後、しばらくして光太郎に会った時は、すこし雰囲気が変わっていました。
 はい。おそらく会えない時期に、それまでの自分のことをめちゃくちゃ考えて(反省して)、光太郎への気持ちに変化――ここで光太郎を縛ってしまったら、彼の幸せを願うことにならない――があった、そう思いながら演じました。反面、かや乃は絶対に光太郎に会いたかった。だからこそ、突き放すしかなかったんだろうなぁ~と。あのシーンを演じる時は、めちゃくちゃ寂しかったです。

――その後、光太郎や父親に対しての心情が、変化していきます。
 父親の情熱に動かされた部分もあるとは思いますが、やはり向き合わないといけない。逃げているだけじゃ変われないっていうことに、気づいたのでしょう。それが成長と呼べるものかは分かりませんけど、結局は、逃げているだけではもう、このまま一生変われないんじゃないかっていう怖さがあったのだと思います。そういう気持ちが、彼女の心情の変化に結びついた、と思っています。

――ある意味、似たもの親子。
 はい、すごく似ていると思います。

――それにしても、タイトルの通り、登場人物は変な人ばかりです。
 本当ですよね。西尾(孔志)監督は、私がいままでに出会った業界の方の中でも、なかなかいないぐらい優しい方で、現場でもすごく物腰が柔らかくて温かい方でした。だからこそ、どんなキャラクター(人物)が出てきても、全員愛しく見える。西尾監督にしか描けない、まさに魔法だと思います。

――ネタバレにならないように聞きますが、ラストはなかなか見応えがありました。
 ありがとうございます。過酷ではありましたけど、皆さんに支えていただきながら、なんとか乗り越えられた感じでした。かや乃的には、自身の一番のトラウマを思い出すシーンなので、心の中で「頑張れ、頑張れ」と思いながらやっていました。ただ、最後は全部、岩谷さんに持っていかれちゃいましたけど(笑)。

――ラストでの光太郎との関係は、冒頭の頃に戻ったようでした。
 とても楽しく演じることができました。私も、あのシーンは好きです。観て下さる皆さんにも、楽しんでもらえるし、ホッとしてもらえるだろうと思います。

――ところでロケ地の思い出はありますか?
 ほぼ全編にわたって兵庫県の明石で撮影していて、景色の綺麗さにも支えてもらっている映画だと感じました。めちゃくちゃいい街でしたし、街の皆さん温かくて、本当に何度でも行きたい場所になりました。食べ物は、明石焼きが美味しかったです。びっくりするぐらい明石焼きのお店があって、撮影終わりには、皆でよく(明石焼きのお店に)ご飯を食べに行きました。

――さて、本作では、念願であった影を持つ人物を演じることができました。
 ありがとうございます。実際に演じてみて、思った以上にそのまま演じることができたと感じています。結果的に、かや乃という役を作り込んだというより、私の中にある影をそのまま持ち込めたり、彼女の持つ天真爛漫さも、意外と私の中にあったりして、演じる前に思っていたよりも、私自身とキャップがなかったのかもしれない、って思いました。まあ、行動そのものは全然違いますけど(笑)、ニュートラルなトーンで演じることができました。

――成長は感じた?
 はい。主演で演じる機会は、簡単に頂けるものではないので、そういう意味ではすごく身を引き締めて毎日参加していましたし、逞しくなれたと思っています。

――今後、演じてみたい役柄はありますか?
 まだ演じたことのない役で言えば、実在する人は経験がないので、今後、演じてみたいです。

――特にこの人というのは?
 樹木希林さんが大好きで、彼女の作品はほとんど観ているので、おこがましいのですが、いつか樹木さんご自身を演じられたら、とてもいい体験になるだろうと思います。

――プライベート面の目標はありますか?
 すごくインドア派で、休日はほとんど家で過ごしているんです。本を読んだり、映画を観たり、編み物をしたり、料理を作ったりと、全部家の中で完結しちゃう趣味ばかりなので(笑)、もう少し外に出るように、例えば登山とか、気球に乗るとか、アウトドアの趣味も増やしたいです。

映画『輝け星くず』

2024年6月15日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開!

<キャスト>
山﨑果倫 森優作 岩谷健司 片岡礼子 春田純一 滝裕二郎 中山求一郎 湯浅崇 松尾百華 三原悠里 芳野桃花 木下菜穂子 池畑暢平 保志まゆき 小泉研心 国海伸彦 佐保歩実 金延宏明 小川夏果 宮崎柚樹 円籐さや 奥村静耶 川瀬乃絵

<スタッフ>
監督:西尾孔志 原作:小谷忠典 脚本:いとう菜のは、西尾孔志 製作総指揮:金延宏明 プロデューサー:前田和紀、金延宏明 撮影監督:牧野裕也 録音:大澤竜、西村由香 助監督:山田元生、小川泰寛/永井和男、有友由紀 編集:西尾孔志、小川泰寛 整音:中村崇志 音楽:クスミヒデオ エンディング曲:森絢音「覆水不返」 宣伝:Cinemago 宣伝協力:とこしえ 製作・配給:ノブ・ピクチャーズ
(C)「ノブ・ピクチャーズ」

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山﨑果倫
公式SNS
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スタイリスト/佐野旬
ヘアメイク/大貫茉央
衣装協力/LAISSE PASSE