ソニーのポータブルシアターシステム「HT-AX7」は、W306×H97×D123mm、重さ1.4kgの本体と、ふたつの着脱式リアスピーカーからなるサラウンドシステムだ。BluetoothでタブレットやPC等と接続し、自分の好きな場所で包みこまれるようなサラウンド体験が可能になるという。

 そんなHT-AX7に関心を寄せているのが、サウンドデザイナーのえびなやすのりさんだ。えびなさんは自宅の近所で、13.2.10のドルビーアトモス対応システムを備えた本格ホームシアターを楽しんでいる、音のプロだ。最近は、“自宅リビングで、家族と一緒に過ごしながらサラウンドを楽しめるアイテム”を探し続けているという。今回はえびなさんにHT-AX7を1週間ほどご自宅で使ってもらい、その印象をインタビューした。(StereoSound ONLINE編集部)

ポータブルシアターシステム HT-AX7 市場想定価格¥77,000前後(税込)

●使用スピーカー:49×71mmフルレンジ×2(フロント)、60mmフルレンジ×2(サラウンド、セパレート型)
●Bluetooth対応コーデック:SBC、AAC
●伝送帯域:20Hz〜20kHz(44.1kHzサンプリング時)
●アンプ:S-Masterデジタルアンプ
●充電時間:約4.5 時間(急速充電10分で約150分再生)
●電池持続時間:約30 時間
●消費電力:約45W(待機時約1.9W)
●寸法/質量:W306×H97×D123mm/1.4kg(フロント)、W122×H39×D122mm/295g(サラウンド)

――今回もお時間をいただきありがとうございます。えびなさんがご自宅のリビングで使うサラウンドシステムをお探しとのことで、前回もシャープのネックスピーカー「AN-SX8」を試していただきました。

えびな そうでしたね。AN-SX8も低域の再現などはよかったんですが、ドルビーアトモスの高さ感などがもう少し欲しい気がして、未だに悩んでいる状態です(笑)。

――今回のHT-AX7も、ご自宅のリビングで試したいとのことでした。

えびな 自宅のリビングにはソニーの「KJ-55X9500G」とサウンドバー「HT-X8500」がセットしてあり、これでドルビーアトモスも聴けるようになっています。

 ただ、前にもお話しましたがここには必ず家内や子どもたちが居るので、あまり音量を上げることができないんですよ。理想としてはぼく一人を包んでくれる音場が作れるといいんですが、HT-AX7ならそれができそうな気がして、期待していました。

HT-AX7はフロントスピーカーとセパレート式のリアスピーカーという3ピース構成。「SOUND FIELDエフェクト」のオン/オフによってパーソナル立体空間(左)や部屋中に広がる音場再現(右)といった使い分けが可能

――実際にご自宅でHT-AX7を使ってみて、いかがでしたか?

えびな セットアップが簡単だったのが嬉しかったですね。QRコードからアプリをインストールしたら、そこからセットアップも簡単に進められたのです。テレビもソニー製だったので勝手に認識してくれて、Bluetoothもすんなりつながりました。

――今回はHT-AX 7をどんな風に設置されたのでしょう?

えびな わが家のリビングは、片方の壁面にテレビとサウンドバーが置いてあり、部屋の中央にテーブル(コタツ)が、さらにその後ろにソファがあります。ぼくは普段ソファに座ってテレビを見ているので、今回はHT-AX7の本体をコタツの上、視聴位置とテレビの真ん中あたりに、サラウンドスピーカーを両脇に置いてみました。このセッティングだと視聴位置からはテレビがHT-AX7本体の向こう側に、少し見上げるような形になるので、セリフが画面から聴こえてきたんです。期せずして画音一致が実現できてよかったですね。

えびな邸のリビングでは、試聴位置とテレビの間にあるテーブルの上にフロントスピーカーを設置してもらった

――「SOUND FIELD」をオンにして聴いたということですね?

えびな そうです。「SOUND FIELD」オフは部屋のどこにいても同じような音場になるということで、ぼくの狙いとは異なっていたのです。オンはパーソナルな立体音響が楽しめるとのことで、こっちで視聴しました。

 ネットフリックス『イカゲーム』やDisney+の『アソーカ』を見ましたが、音質に関しては、テレビの内蔵スピーカーとサウンドバーのちょうど間といった印象で、サラウンドの移動感よりは、包囲感を重視している音作りでしたね。

 バランス的には低音感がもう少し出てくるといいな、という印象もありました。もちろん低音のレベルを上げれば低音感は出てくるし、リアスピーカーのレベルも上げればサラウンド効果も出てくるんですが、わが家の場合、それだとちょっと音が大きくなりすぎだったんです。

 実は、地デジを録音したジョン・ウィリアムスのコンサートを見てみたら、家族から注意されてしまったんです(笑)。そんなにボリュウムを上げているつもりはなかったんだけど、隣でゲームをしていた息子から「パパ、うるさいよ」って。

――えびなさんの理想は、同じリビングに他の人がいても、それを気にしないでサラウンドを楽しみたいというものでしたよね。

ソファに座ってテレビを正面から見た状態(上)と、床に座って画面を見上げた場合(下)で映像と音の一致感が変化したそうです。えびなさん的には床に座って見上げるのも面白かったとか

えびな 贅沢な希望ということはわかっているんですが(笑)、周囲から区分されたお一人様のサラウンド空間が再現できないかなぁというのが理想です。

 でもHT-AX7は、テレビのバラエティやドラマなどを見る時に、ふわっとした音場を再現してくれたので、とても心地よかったんです。映画などのサラウンドを忠実に再現するという方向ではありませんが、2チャンネルを拡張してスピーカーの外にも音像を作り出すというイメージを楽しめたのが面白いと思いました。

――その他にHT-AX7で印象に残った点はありましたか?

えびな バッテリー駆動なので、コンセントが必要ないのは便利です。自分の好きな所に持っていって、動画配信や音楽を楽しめるのは、かなりお得な感じでした。iPhoneとつないでApple Musicも再生しましたが、こちらは低音感も出てきたし、リラックスして楽しむにはとってもいいですね。

 ぽんと置いたらその場所が心地いい音場空間に変化するので、ストリーミングで音楽を聴くには最適なソリューションだと思います。HT-AX7は本体がファブリック仕上げの柔らかい外観ですが、音もそれに近い印象でした。

 HT-AX7は、単なるサウンドバーの代わりではなく、別の使い方を持っている製品です。色々なフィールドで使いこなしてみると魅力を発揮してくれそうですね。