SONOSから、同ブランド初のワイヤレスヘッドホン「Sonos Ace」(¥74,800、税込)が6月下旬に発売される。同社が長年培ってきたオーディオとデザインに関する専門知識を注ぎ込まれたモデルで、高品質サウンドを体現しつつ、昨今注目を集めている空間オーディオの再生にも対応している。

 機能面では、アクティブノイズキャンセリング機能に加え、BluetoothコーデックのaptX Losslessにも対応済で、CD同等の44.1kHz/16ビットクォリティの信号をロスレス(可逆圧縮)伝送できる。

Sonos Aceはブラックとソフトホワイトの2色展開。今回はソフトホワイトを試聴した

 ドライバーはカスタム設計された40mmダイナミック型を搭載し、イヤーカップの内部に傾きをつけて設置することで、音がダイレクトに耳に届くように配慮したそうだ。そのイヤーカップはバスレフ構造になっており、優れた低音再生能力も備えているのが特長という。

 今月末の発売に先駆け、Sonos Aceの試聴機を借用できたので1週間ほどテストしてみた。

 そもそも本機はワイヤレスイヤホンとして使われることが多いはずで、その状態ではDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やスマホとBluetoothでつないで音楽を再生することになる。そこでウォークマンのA105シリーズと組み合わせた音を確認してみた(BluetoothコーデックはaptX)。

 CDリッピング音源を再生すると、いかにもSONOS製品らしいサウンドが聴こえてきた。S/Nのいいクリーンな音場をベースに、高域から低域まで演出感のない自然な音が再現され、ヴォーカルも楽器もバランスよく楽しめる。

イヤーパッドはマグネットによる着脱式で、L/Rが一目でわかるように内側が色分けされている(緑色が右側)

 ジェニファー・ウォーンズの「Rock you gently」では冒頭の低音がきちんと重さを伴って再現され、彼女の軽やかな声や綺麗に伸びた高域までバランスよく楽しめる。定番のイーグルス「ホテル・カリフォルニア」(ライブヴァージョン)もドン・ヘンリーのヴォーカルが憂いを持って再現されるし、ドラムのアタックも質感を伴って耳に届く。観客の歓声も距離感を持って響いてくる。

 ハイレゾファイルから、マイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット」(176.4kHz/24ビット)やホルスト「惑星」(DSD256)を再生する。Bluetoothのコーデックは同じだが、こちらの方が音の密度が上った感じで、マイケルの声の生々しさも向上しているし、「惑星」もダイナミックレンジの広さが実感される。どれも “音楽鑑賞” として満足できるクォリティだ。

 さらにSonos Aceには、USB Type-Cケーブルと、USB Type-C→3.5mmアナログケーブルも付属しており、これらを使った有線試聴もできる。そこでUSBType-CケーブルでMacBook Airとつなぎ、再生ソフトのAudirvanaでハイレゾファイルを再生した。

左イヤーカップには充電や有線試聴に使うUSB Type-Cコネクターと電源/Bluetoothペアリングボタンを、右にはノイズキャンセリングモードの切り替えボタンとコンテンツキーを備える

 出力デバイスにSosno Aceを選び、先程と同じホルスト「惑星」を再生したが、有線接続のメリットか、S/Nのよさはもちろん、楽器の余韻などにもゆとりが感じられる。Bluetooth経由よりも腰が座ったサウンドとして響いてくる。

 なおAudirvanaではウィンドウの左下に入力信号、右下に出力時のフォーマットが表示される。Sonos Aceをつないだ際にはどの音源を再生しても右下に「24/48kHz」と表示されていた。推測するに、Sonos Aceの内蔵D/Aコンバーターは48kHz/24ビット対応で、それに合わせてAudirvana側で信号を変換しているのだろう。

 ちなみにノイズキャンセリングをオンにすると、暗騒音がすっと消えて音楽に集中しやすくなる。一方でわずかながら音が整理されるようなところもあるので、静かな室内でつかうような時はオフにしてもいいだろう。

MacBook AirとUSB Type-Cケーブルでつないで、Audirvanaでハイレゾ音源を再生したところ。右下に出力信号の詳細が表示されている

 ノイズキャンセリングモードは右イヤーカップにあるボタンで切り替えられる。さらにその上にあるコンテンツキーでボリュウム調整ができるのも案外便利で、“操作時には物理的フィードバックがあることが好ましい”という同社の見解にも納得した次第だ。

 さらにSonos Aceは先述の通り空間オーディオにも対応しており、ストリーミング配信されている空間オーディオ信号を臨場感たっぷりに再現できる。そこでAmazon Musicのドルビーアトモス音源からクィーンの「地獄へ道づれ」やピンク・フロイド「Time (2023 Remaster)」、さらに360 Reality Audio音源の宇多田ヒカル「First Love(Live 2023)」を聴いてみた。

 いずれもマルチチャンネル音源をバイノーラル処理して2chに織り込んだ信号のはずだが、それでも音場空間が拡大して、ヴォーカルを取り囲むように配置された楽器までの距離感が再現される。音の移動感といった立体音響としての演出もわかりやすい。“音質” という点では2chに比べて若干ニュアンスが甘くなるところもあるが、それは音源によるところが大きいのかもしれない。

スマホにインストールしたSonosアプリから、各種設定やノイズキャンセリングモードの切り替えが可能。サウンドバーとの連携設定もこのアプリから行う

 なおSonos Aceは同社製サウンドバーと組み合わせることで、サウンドバーでデコードしたドルビーアトモスの7.1.4信号を伝送(独自の無線方式)し、バーチャルサラウンドとして視聴可能だ。その際に右イヤーカップのコンテンツキーを長押しすることで、サウンドバーとSonos Aceのどちらで視聴するかをスムーズに切り替えられる。

 この機能は現在のところ同社フラッグシップサウンドバー「Arc」のみの対応だが、近々「Beam」「Ray」といった弟機でも楽しめるようになるとのことなので、その感想は改めてリポートしたい。(取材・文:泉 哲也)

“SONOSとして、自然な流れとしてヘッドフォンに到達しました”
「Sonos Ace」誕生の経緯を担当者にインタビュー

 先日開催されたSonos Aceの説明会で、Sonosプロダクト・マーケティング・マネージャーのデーン・エスティスさんに製品の詳細についてインタービューする機会があった。同ブランド初のワイヤレスヘッドホンはどんな点にこだわってものづくりされたのか、気になる点をうかがってきたので、以下で紹介したい。

――今日はお時間をいただきありがとうございます。先ほどSonos Aceの音を聴かせてもらいましたが、音楽ソースから映画サラウンドまでとても馴染みがよく、SONOSらしい心地いい音で再生されていたのがすごく魅力的でした。

 まさにSONOSらしいサウンドという印象で、ヘッドホンという御社にとって新しいジャンルの製品でもそれが楽しめるというのは、日本のオーディオ愛好家にも喜ばれるんじゃないかと思ってます。まずはSONOSの新製品をヘッドホンというジャンルでリリースすることに至った経緯について教えていただけますか?

デーン われわれは常にお客様の声に耳を傾けて、どういった体験を求めていらっしゃるのかについて意見をいただいております。

 弊社の機器は、自宅での音楽体験から始まり、そこからホームシアターにも拡大し、さらに屋外にも持ち出し可能なBluetoothスピーカーへと展開してまいりました。その過程で自然な流れとしてヘッドフォンに到達したと考えております。

 近年ヘッドフォンはひじょうに大きなカテゴリーとなっていますし、テクノロジー製品としても人気が高い分野です。私どもは、サウンドに関する専門性などすべてを合わせて、ユニークなヘッドフォンの体験を作りました。

――Sonos Aceの開発にはどれくらいの時間をかけているのでしょう?

デーン 開発プロセスが正式に始まったのは約3年前になります。企画立案から始まり、実際の制作に移ってきたわけですが、Sonos Aceはホームシアターとの連携接続といった点に関して既存の弊社製品ユーザーにも魅力的な製品だと思います。

――Sonos Aceは、ハイファイモデルとして2chの音を極めるだけでなく、空間オーディオも楽しめる製品として仕上げられています。そのあたりの音づくりの方向性、狙いについて教えて下さい。

デーン 私どもが提供したかったのは、正確なサウンドです。つまり明瞭でバランスのいい、自然な音です。2chステレオであれ、サラウンドであれ、正確な音を実現したかったわけです。

 ユーザーによっては、ロスレスのクォリティを求めて求める方もいれば、空間オーディオを楽しみたい人もいると思います。Sonos Aceではハイレゾでの再生だけでなく、ドルビーアトモスやソニーの360 Reality Audioにも対応可能です。

――今のお話では、空間オーディオの再生もできるということでしたが、Sonos Aceはドルビーアトモスや360 Reality Audioのデコード機能は持っていなかったと思います。

デーン そうですね。Sonos Ace自体は2chとして再生していますので、空間オーディオを楽しむには、音源が360 Reality Audioをサポートしているかどうかが重要です。

 われわれはホームシアターにおいても新しいコーデックに対応するということを重視しており、発売後でも追加対応が可能です。今回は、現在のホームシアターのサラウンドで広く使われているドルビーアトモスと360 Reality Audioの両方に対応しました。私も普段からApple Musicの空間オーディオをスマホで再生して、Sonos Aceで聴いています。

――日本のリビングでは、サウンドバーで音楽配信サービスを楽しむケースも多くなっています。例えば音楽配信をArcで再生して(テレビはつけない状態)、そこから音楽をAceに飛ばして楽しむことは可能なのでしょうか?

デーン Sonos Aceは、Sonosアプリ経由でArcにストリーミングされた音楽を再生することはできません。そういった使い方も検討しましたが、それではヘッドフォン使用に関するユーザーの期待が破綻してしまうだろうという結論に達しました。というのも、それではユーザーはArcから6m以内でしか音楽を聴けないことになってしまうからです。スマホのアプリから直接再生できるので、わざわざArcを通して再生する必要はないでしょう。

Sonosプロダクト・マーケティング・マネージャーのデーン・エスティスさん

――Sonos Arcのスペックについて確認させてください。付属のUSB Type-CケーブルでPC等とつないでハイレゾを再生できるとのことでしたが、ハイレゾ音源としてはどんな信号に対応しているのでしょう?

デーン ケーブル接続でのリスニングは、USB Type-C to 3.5mmケーブルとUSB Type-Cケーブルで可能です。ハイレゾとしては48kHz/24ビット音源に対応しています。BluetoothのコーデックはSBC、AAC、aptX Losslessが可能です。

――サウンドバーとの連携機能もユニークでした。先程申し上げた通り、日本ではリビングで薄型テレビとサウンドバーを組み合わせてホームシアターを楽しんでいるユーザーも多いので、深夜の映画視聴などにも有用でしょう。

デーン サウンドバーでドルビーアトモスを7.1.4にデコードし、それを2chのバーチャルサラウンドにエンコードしてお楽しみいただけます。発売当初はArcのみの対応ですが、今年中にはファームウェアアップデートで他モデルへの対応も進めてまいります。2chや5.1chコンテンツをアップスケールすることもできますので、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。

――私も自宅で「Beam(Gen2)」を愛用していますので、BeamとSonos Aceの組み合わせでどんなサラウンド体験ができるのか楽しみです。今日はインタービューの機会をいただきありがとうございました。(インタービュー・まとめ:泉 哲也)