Sonosから、同ブランド初となるワイヤレスヘッドホン「Sonos Ace」(¥74,800、税込)が発表された。6月7日から先行予約の受付を開始し、6月末の発売を予定している。
Sonos Aceは同社が長年に渡って積み重ねてきたオーディオとデザインに関する専門知識が注ぎ込まれたBluetoothヘッドホンで、ロスレスや空間オーディオの再生にも対応する。さらにANC(アクティブノイズキャンセリング)機能も備えている。
先日開催された新製品説明会では、Sonos Japan合同会社 代表の吉田庸樹さんからSonos Aceについての紹介が行われた。
吉田さんによると、Sonos Aceは同ブランドとして初めてヘッドホンという新しいカテゴリーに取り組んだ “新ピース” だという。従来の「Arc」や「Beam」といったホームシアターシステムにSonos Arcが加わることで、ブランド力の強化、さらには売上強化を目指していくそうだ。
続いてSonosプロダクト・マーケティング・マネージャーのディーン・エスティスさんが登壇、新製品の概要を解説してくれた。
Sonosは2002年に設立され、大型ステレオシステムやライブラリーが必要だった時代に、ワイヤレスでの音楽鑑賞を提案した稀有なブランドだった。家の中を音楽で溢れさせ、没入感あるシアターを実現するというテーマをハードウェアとソフトウェアの両面で実現してきたそうだ。
ヘッドホンについてはこれまでもユーザーから多くの要望があったとかで、Sonosに相応しいヘッドホンとして快適さと洗練されたデザインを追求、さらにクォリティ面でもロスレス(コーデックはaptX Losslessに対応。USB Type-Cケーブルでの有線接続も可能)と空間オーディオに対応を果たした。もうひとつ、ホームシアターとの連携提案も盛り込んでいる(後述)。
ANC機能にも配慮しており、本体には8つのマイクを搭載、そのうち6つはANC用、ふたつは通話用として使われているそうだ。もちろんパススルー機能も備えている。
そんなSonos Aceのデザインを担当したのが、シニア・インダストリアル・デザイナーのサム・プレンティスさんだ。サムさんによると、Sonos Aceはブランド初のウェアラブル製品として、3年の時間をかけて開発されたという。
その際には “Sonosを装着する意味” を考え、1日装着していても気にならない快適性や、高級感のあるプレミアムデザインに配慮した。装着性については、ドライバーが耳の上に浮いているような配置を心がけている。
さらにミニマルなデザインを狙って、イヤーカップはドーム型の柔らかい形状を狙い、ヨーク機構を本体に内蔵するといった業界初の試みも盛り込んでいる。イヤーパッドは柔らかく、密着しても汗が気にならない素材を、長時間かけて開発したそうだ。
他にもL/Rがひと目でわかるようにヘッドバンドのデザインやイヤーカップの色、ロゴの有無などにも工夫をこらしている。またボタン操作時には物理的フィードバックがあることが好ましいという考えから、感触にもこだわったそうだ。
続いてSonos特任プロダクト・マネージャーのスコット・フィンクさんから、Sonos Aceのサウンドバー連携について説明された。この機能はSonosのサウンドバーを使ってテレビを見ている時に、ワンタッチで音声をSonos Aceに切り替えるもの。スコットさんによると、深夜にボリュウムを上げられない場合などに有用で、しかもいわゆるヘッドホンで聴いているような音ではなく、3Dオーディオの没入体験を目指したという。
信号経路としては、サウンドバー内部でドルビーアトモスのデコードやアップミックス処理を行い、それをSonos Aceに無線帯域でダイレクトに伝送するので、ソースやプレーヤーを問わずに立体音響が楽しめるそうだ。ちなみに音決めの際には映画のサウンドクリエイターにSonos Aceを試聴してもらい、そのフィードバックを受けて、スタジオでミックスした音を再現できるまで調整を追い込んだとのことだ。
この機能は、Sonos Aceの発売時点では同社フラッグシップサウンドバーのArcのみの対応だが、近々のソフトウェアアップデートにより弟機の「Beam」などでも楽しめるようになる予定という。なおサウンドバーと接続できるSonos Aceは1台まで。
もうひとつ、Sonos Aceにはダイナミックヘッドトラッキング機能も搭載されている。ヘッドホンにIMU(慣性計測センサー)を搭載し、頭の向きや動きを自動検出してサウンドバーにフィードバック、サウンドバー側が頭の向きに合わせて音を微調整して送り出すことで、パーソナライズされた3Dオーディオが再現できるという機能で、映画コンテンツなどの視聴に有効だろう。IMUは常時動いており、装着者が4秒以上同じ方向を見ていると、そちらを正面(テレビ側)と認識するそうだ。
さらに2024年後半のアップデートで対応予定のTrueCinemaでは、さらに正確で臨場感溢れるホームシアター体験も可能になる。一般的なヘッドホンの場合、試聴する部屋の環境は音に反映されないが、Sonos Aceでは測定(サウンドバーとの組み合わせで実施)を行うことで部屋の響きを織り込んだ音として再現できるという。
発表会で、タブレットと組み合わせたBluetooth接続の音を聞かせてもらった。多くのプレスが参加した発表会なので、当然室内の暗騒音は大きい。Sonos Aceを装着するとそれらのバックグラウンドノイズがすっと収まり、かといって耳が痛くなるような違和感もない。ノイズキャンセリングの塩梅は上手いと感じた。
お薦め楽曲のエド・シーラン「Shivers」やビリー・アイリッシュ「What Was I Made For」では電子楽器による重低音の力強さや音声の奥行再現、華麗なステージの様子まで目に浮かぶようなサウンドが楽しめた。SONOS製品らしい、クリーンな音場という魅力も備えている。
ドルビーアトモス音源では空間がひと周り大きくなり、離れた位置からギターなどの音源が響いてくる。新しい音楽体験として、とても興味深い聴こえ方だ。ちなみにSonos Aceだけで空間オーディオを楽しむには再生アプリでドルビーアトモスの音源を選ぶ必要があるので注意されたし。
サウンドバーとの連携も体験させてもらった。ドルビーアトモスの映画コンテンツをまずArcで再生し、そのままSonos Aceに切り替えると、音場は若干コンパクトになるが、凝縮感がアップして、移動感や包囲感はかえって明瞭になる。低音もしっかり感じ取れて、これなら映画も楽しめそうだ。そのあたりについては、改めてリポートしたい。