完全ワイヤレスイヤホンが相変わらず人気だ。本サイトで特集しているような高級価格帯モデルはもちろん、1〜2万円の中間価格帯、その下の入門ゾーンまで毎月と言っていいほど新製品が発売されている。

 しかも最近は、入門モデルの高音質化も進んでいるという。ハイレゾ対応やアクティブノイズキャンセリングといった機能こそ省略されたモデルも多いが、搭載するドライバーや音作りという点に注力し、音楽を快適に楽しむという本質を追求した製品が誕生しているということだろう。

 今回はそんな入門ゾーンの製品から、OPPO(オッポ)「Enco Air3i」の取材機を借用できたので、さっそく試聴してみた。Enco Air3iは2月に発売されたばかりの新製品で、税込¥4,980という手の出しやすい価格で発売されているのもポイント。

 しかも13.4mmという完全ワイヤレスイヤホンとしては大型のドライバーを搭載、振動板にはチタンコーティングを施すことで高域の再現性を向上させている。これに独自のアコースティックキャビティを組み合わせることで、力強い中低音やクリアーな高音を実現したという。

 そのEnco Air3iは、13.4mmドライバーを登載しているとは思えないほどコンパクトなサイズで、スティックタイプのインイヤー型デザインを採用。本体は3.7gと軽量なので、長時間着けていても耳への負担も少ないだろう。

 充電ケースはW60×H50×D15mmの楕円型で、こちらも32.8gと軽いのでポケットに入れて持ち運んでもまったく気にならない。しかもイヤホン本体だけで最長5.5時間、充電ケース併用で最長35時間の再生が可能というから、ヘビーユーザーも安心だろう。充電はUSB Type-Cケーブルで行う(充電用ケーブルは付属しない)。

 Enco Air3iを箱から取り出し、スマホのPixel6とペアリングしてみた。充電ケースから本体を取り出すだけでスマホ側に型番が表示され、すんなり設定は完了。この組み合わせで「foobar2000」アプリを使って楽曲を聞いてみた(コーデックはAAC)。

 Enco Air3iの広報資料やサイトでは、「クリアーな音」という点がアピールされているが、それも納得! のサウンドが再生される。CDのリッピング音源やハイレゾ音源(96kHz/24ビット)、さらにストリーミングからAamzon Music HDやポッドキャストを再生してみたが、総じてすっきりとした聴こえ方で、人の声などの再現に注力した音作りという印象だ。

 ヴォーカルの柔らかなニュアンスやピアノの旋律を綺麗に再現し、楽器の質感も感じ取れる。Amazon Musicのおすすめプレイリストで出てきたYOASOBIの「アイドル」もボカロ風の声の使い方や電子楽器のテンポ感なども耳に馴染む。TM NETWORKの「Get Wild」は声の加工具合、意図的に横や縦方向に広げた音作りなどもしっかり聴き取れた。こういった楽曲との相性はぴったりだ。

 一方でクラシックやロックの低音は整理される印象で、エリカ・バドゥの「Rimshot」の冒頭や、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」はすっきりした聴こえ方になる。ボリュウムを上げれば低音感は出てくるが、長時間試聴する場合にはあまり音量を上げるのは薦めしない。ポッドキャストの「安住慎一郎の日記天国」はきわめて聞きやすかった。

 試しに再生機をソニーのウォークマン(NW-A100シリーズ、コーデックはAAC)に変えてみると、Pixel6より低域の量感が増え、ロックやクラシックもそれなりにバランスが整ってきたように感じる。このあたり、Enco Air3iは再生機の持ち味をダイレクトに再現する素直さを備えているのかもしれない。

 ちなみにリモート会議でもEnco Air3iを使ってみたが、こういった用途では本体の軽量さ、装着感のよさといったメリットが際立ち、1時間を超える会議でも違和感を覚えることはなかった。今回は試していないが、マイクにはAIノイズキャンセリング機能もついているそうなので、発言が多い人にも便利かもしれない。

「Enco Air3i」の主なスペック
●使用ドライバー:13.4mm ダイナミック型(チタンコーティング振動板)
●Bluetooth対応コーデック:AAC、SBC
●音楽再生時間:イヤホン本体5.5時間、充電ケース併用35時間
●充電時間:イヤホン約60分、充電ケース約150分
●防水防塵規格:IPX4(イヤホンのみ)
●重量:イヤホン約3.7g、充電ケース約32.8g