先週末に日本公開された『ゴジラxコング 新たなる帝国』が、全世界興行収入5億2140万ドルを突破した(アメリカBox Office Mojo調べ)。さらに日本国内でも、4月26日〜28日の観客動員ランキングで2位に入り、6億円近い興行収入を達成したという(興行通信社調べ)。

 そんな本作について “映画館ファン” に注目してもらいたいのが、DTS:Xフォーマットでの上映も行われていること。対応劇場は「グランドシネマサンシャイン」(東京都豊島区)、「シネマサンシャインららぽーと沼津」(静岡県沼津市)、「イオンシネマ徳島」(徳島県徳島市)、「TOHOシネマズ熊本サクラマチ」(熊本県熊本市)、「シネマサンシャイン姶良」(鹿児島県姶良市)の5館で、特に都内の劇場でロードショー作品がDTS:Xにて上映されるのは、僕の記憶にある限りでは初めてだ。

© 2024 Legendary and Warner Bros. EntertainmentInc. All Rights Reserved.

 ということで、さっそくグランドシネマサンシャインに足を運んで、本作をDTS:Xで体験してみた。同劇場では現在、午前8:55〜と午後4:40〜の2回、『ゴジラxコング 新たなる帝国【字幕版】』がDTS:Xで上映されている。それぞれシアター5、シアター6で、どちらも4Kレーザープロジェクターを備えたプレミアムシアター「BESTIA」仕様だ。

 今回は座席数346+2のシアター5で、中央やや後方、プレミアムシートの後ろの席をゲットした。BESTIA仕様だけあって、場内も落ち着いた雰囲気だし、S/Nもいい。シートの座り心地も文句なし。

 映像もクリアーで、色彩もとても綺麗だ。(SDR上映ながら)最新デジタル作品らしいピーク感もしっかり再現されている。コングの毛並み、地下空洞世界の植物の描写も細かいし、ゴジラの皮膚の表現もディテイル情報が豊かで、青い熱線も力強く輝く。

 懸案のDTS:Xサウンドはどうか? ちなみにDTS:Xはオブジェクトベースのイマーシブオーディオフォーマットで、ベースレイヤーとハイトレイヤーの2つのスピーカー群を使って再生している。スピーカー構成についての自由度が高く、既存の劇場でも対応しやすいのが特長だ。

 『ゴジラxコング〜』のDTS:Xサウンドは、何より低域の力強さが印象的で、全方向から厚みのある音に包まれる。上下左右はもちろん、上(天井)側にも音の粗密がなく、イマーシブと呼ぶに相応しく、没入できる音空間が構成されている。

 冒頭、狩猟シーンの移動感もよく再現されているし、◯◯に悩むコングの呻き声も案外力強く届く。ゴジラの咆哮は大迫力で再現されるし、疾走時の足音はスピード感を持って響いてくる(ここは『ゴジラ-1.0』の足音との最大の違い)。このキレのよさも魅力だ。音楽も豊かな低音感を持ち、朗々と響いてくる。

 本作をDTS:Xで視聴して感じたのは、映画サウンドとしてのスピード感と効果音や音楽に包まれる塩梅がうまくバランスしているということ。ブルーレイなどで採用されているDTS圧縮方式は、サラウンドを含めた豊かな低域やピラミッドバランスが人気だった。映画館のDTS:Xも低域の豊かさ、ふくよかさを備えた再現が楽しめるのは間違いない。観劇後には心地いい疲労感とすっきりとした印象で劇場を後にできた。

 今回これらの劇場でDTS:Xでの上映が可能になったのは。IAB(イマーシブ・オーディオビットストリーム)という、SMPTEの音声規格が採用されたことが大きいようだ。これによりDTS:X、ドルビーアトモスなどの様々なイマーシブサウンドシステム間での相互運用が可能となるという。

 海外ではIABフォーマットを採用する作品が増えているということなので、今後も『ゴジラxコング新たなる帝国』のように複数のイマーシブフォーマットで上映されるケースも増えていくのではないだろうか。

 今回はドルビーアトモスや5.1chと聴き比べたわけではないが、DTS:Xではそれらとも違う音体験ができるのは間違いない。せっかく劇場に足を運ぶのなら、色々なフォーマットによる違いを楽しみたいというのは “映画館” ファンの素直な思いだ。本作を皮切りに日本でもDTS:X上映館が普及していくことを期待したい。(StereoSound ONLINE:泉 哲也)