2020年に亡くなってから、もう5年目。イタリアが世界に誇る音楽家、エンニオ・モリコーネがサウンドトラックを担当した2作品が、4月19日より新宿武蔵野館ほかで行われる『エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2』で上演される。
今回、選ばれたのは『死刑台のメロディ 4Kリマスター・英語版』(1971年)と『ラ・カリファ』(1970年)の2点。『死刑台~』は1920年のアメリカで実際に起こった、アメリカの恥との声ともある冤罪“サッコ=ヴァンゼッティ事件”に迫った作品だ。5人組が起こしたとされる殺人事件の犯人として、身に覚えのない男性二人が逮捕され、身に覚えがないのに裁判にかけられ、身に覚えがないのに死刑が確定してしまう。警察も検事も誰もロクに調べやしないが、とにかく彼らを死刑にしようとすることには一所懸命だ。イタリアからの移民であること(しかもひとりは英語に不慣れだ)、ラディカル(字幕ではアナーキストと記される)であることなども逮捕の理由であったことがあぶりだされ、「真犯人の検挙につながりそうなところもあった」ということを映画は暗示するものの、結局、判決がくつがえることはなく、ある種、公開処刑のような形で二人の男は死ぬ。先住民から土地を略奪した先祖を持つはずの、権力者が言い放つ「俺たちアメリカ人の土地であるアメリカを乱す、この移民め」的なセリフも、「このキャラなら言っても不思議ではない」とは思うが、実際に言い放たれるとやはり強烈だ。監督のジュリアーノ・モンタルドはイタリア人としての意地をかけてこの映画に取り組んだ……のかもしれないが、イタリア系以外のアメリカ人がメガフォンをとれば、ずいぶん異なる展開になりそうだとも思った。主題歌を担当したジョーン・バエズの歌声も心に迫る。
『ラ・カリファ』は、なんと今回が日本劇場初公開。テーマ曲がモリコーネの人気ナンバーのひとつであるだけに意外な印象を受けるが、つまりこれは日本では長くサウンドトラック先行で親しまれてきたことを示す。しかも主演はロミー・シュナイダー(『若者のすべて』、『夕なぎ』等)と、ウーゴ・トニャッツィ(『Mr.レディ Mr.マダム』シリーズ)なのだから、待望の劇場公開に老若男女の映画ファンがかけつける予感がする。テーマはずばり、「禁断の愛」。フル・オーケストラ(だと思う)を活用したモリコーネの音楽は、シンセサイザーやコンピューターでは決して代用できない、ゴージャスな、まさにこの時代ならではのロマンを漂わせて魅了する。
コクのあるストーリー展開、マエストロの重厚な音作り。以上2作品、名作洋画に映画館で浸る充実感を与えてくれることだろう。
映画『-永遠のフィルム・マエストロ- エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2』
4月19日(金)より 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
提供・配給:キングレコード
『死刑台のメロディ 4Kリマスター・英語版』
監督・脚本:ジュリアーノ・モンタルド 撮影:シルヴァーノ・イッポリティ 音楽:エンニオ・モリコーネ 歌:ジョーン・バエズ
出演:ジャン・マリア・ヴォロンテ、リカルド・クッチョーラ、ミロ・オーシャ、シリル・キューザック、ロザンナ・フラテッロ
1971年/イタリア/ドラマ/原題:SACCO E VANZETTI/125分/カラー/ビスタサイズ/DCP/英語モノラル
(C)UNIDIS JOLLY FILM
『ラ・カリファ』
監督・脚本:アルベルト・ベヴィラクア 撮影:ロベルト・ジェラルディ 音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ロミー・シュナイダー、ウーゴ・トニャッツィ、マリーナ・ベルティ、マッシモ・ファネッリ、ロベルト・ビサッコ
1970年/イタリア・フランス/ドラマ/原題:LA CALIFFA/91分/カラー/ビスタサイズ/DCP/イタリア語モノラル
(C)1970 RTI