TVS REGZAから、2024年春の新製品3シリーズ11モデルが発表された。有機EL、Mini LEDバックライト液晶、倍速液晶テレビの3種類で、それぞれの型番と価格、発売日は以下の通り。

●4K有機ELテレビ
65X8900N 市場想定価格¥440,000前後(税込、4月12日発売)
55X8900N 市場想定価格¥330,000前後(税込、4月12日発売)
48X8900N 市場想定価格¥264,000前後(税込、4月12日発売)

●4K Mini LED液晶テレビ
75Z870N 市場想定価格¥528,000前後(税込、5月31日発売)
65Z870N 市場想定価格¥396,000前後(税込、5月31日発売)
55Z870N 市場想定価格¥308,000前後(税込、5月31日発売)

●4K液晶テレビ
75Z670N 市場想定価格¥374,000前後(税込、5月17日発売)
65Z670N 市場想定価格¥286,000前後(税込、5月17日発売)
55Z670N 市場想定価格¥242,000前後(税込、5月17日発売)
50Z670N 市場想定価格¥187,000前後(税込、5月17日発売)
43Z670N 市場想定価格¥165,000前後(税込、5月17日発売)

 新製品発表会に登壇した、TVS REGZA株式会社 副社長R&Dセンター長の石橋泰博さんは、2023年度のレグザについて総括してくれた。

 石橋さんによると、同社製品は2023年度も売上が好調だったという。その要因としては、どの価格帯のユーザーにも対応できるラインナップを準備したことや、Mini LEDバックライトを搭載した液晶モデルのハイエンドシリーズの売上が伸びたことも大きかったそうだ。これを受け、2024年度のレグザは有機ELとMiniLED液晶のどちらにも“本気”で取り組むとのことだ。

 続いてお馴染み、レグザブランド統括マネージャー 本村裕史さんが、その新製品について解説してくれた。

TVS REGZA株式会社 副社長R&Dセンター長の石橋泰博さん(左)と、レグザブランド統括マネージャー 本村裕史さん(右)が新製品のバックボーンを解説してくれた

 石橋さんの話にあった通り、特に近年は量販店などでのMini LED液晶テレビの動きが活発化しているそうだ。もちろん価格がこなれてきたことも大きいが、画質面での進歩も見逃せないと本村さんは分析していた。リビングのように比較的明るい環境で使われる場合は、Mini LED液晶テレビは、明るさや画質、価格のバランスがいいということだろう。

 今回の新製品では、「Z870N」シリーズがMini LEDバックライト搭載モデルで、“Mini LED液晶テレビの、手が届くハイエンド”を目指したラインナップという。本村さん曰く「ベンツのEクラスのような位置づけです」とのことだ。

2024年版のレグザエンジンZR.写真中央が処理を受け持つICで、こちらも昨年モデルから変更されている

 さらに「同時発売の有機ELテレビ『X8900N』シリーズはリビングで使える有機ELテレビの最有力モデルとして、『Z670N』シリーズはシンプルな倍速液晶モデルですが、こちらも便利機能を満載していますので、たいへんお買い得です」と3シリーズの特長をわかりやすく紹介してくれた。

 その3シリーズ共通の特長は、2024年仕様の「レグザエンジンZR」が搭載されたことだろう。同社では昨年から映像エンジンの呼称を変えないようにしている。そのため、レグザエンジンZRという名称も昨年モデルの「Z870M」と同じだが、中身は2024年版に進化している。

 映像処理を受け持つチップ自体も2023年版のレグザエンジンZRとは異なるそうで、より世代の新しいICに進化したアルゴリズムを盛り込んでいる。

「ネット動画ビューティ」のデモ映像(左がオンで右がオフ)。右のオフの状態では青いバックに等高線状のバンディングノイズがはっきりあらわれているが、左ではなめらかに補正されている

 そのひとつが「ネット動画ビューティ」の進化で、これはネット動画の特性に合わせて精細感やコントラストの向上、色階調の改善などを実現している。加えて「ネット動画バンディングスムーサー」機能も追加されている。これはネット動画で散見される圧縮ノイズやバンディングを抑制、大画面でもなめらかで自然な画質で再現するものだ。

 昨年登場した「Z970M」シリーズなどに「ネット動画ビューティPRO」として同様の機能が搭載され好評を博していたが、それが弟モデルにも採用されたわけで、このあたりの画質へのこだわりが“中身はハイエンド”ということにつながるのだろう。

 もちろんレグザとして地デジ放送の画質改善にも積極的に取り組んでおり、「地デジAIビューティ」や、番組に応じて最適画質に自動調整する「クラウドAI高画質テクノロジー」といった独自技術も3シリーズすべてで継承されている。部屋の環境や明るさに合わせて画質を自動調整する「おまかせAIピクチャー」も搭載済み。

 パネルデバイスについては、Z870Nシリーズは上記の通りMini LEDバックライトと広色域量子ドットフィルターを搭載した新開発パネルモジュールを採用。Z870Mシリーズ比でバックライトの輝度が1.3倍に向上、より高コントラストで、色鮮やかな映像を獲得した。

 Mini LEDバックライトのエリアコントロールも2024年版レグザエンジンZRで処理され、いっそう緻密な制御を実現したそうだ。上記の量子ドットフィルターも新開発されたもので、緑や赤のピーク輝度や色純度がいっそう改善されたという。

 X8900Nシリーズには、新開発の低反射ハーフグレアタイプで、輝度再現が向上した明るい有機ELパネルが使われている。映り込みを抑え、引き締まった黒と明るく鮮やかな映像を再現する。

 サウンド面では3シリーズとも立体音響のドルビーアトモスに対応、入力信号をデコードし、内蔵スピーカーに合わせてバーチャライズ処理を加えて再生する。Z870NとZ670Nシリーズはトップスピーカーやサブウーファーを加えた7ユニット(75Z670Nは9ユニット)、X8900Nは2ウェイ3スピーカーをL/Rに使った6ユニットを搭載している。

左から「Z870N」「X8900N」「Z670N」の付属リモコン。Z870Nシリーズはタイムシフトマシン機能も備えているので「過去番組表」ボタンが搭載されている。3モデルともBluetoothでの操作も可能だ

 また今回、コンテンツ別サウンドメニューに「スポーツ」が追加されている。スタジアムの臨場感をリアルに再現し、実況も聴き取りやすいモードだそうだ。なお、リモコンに内蔵されたマイクを使って部屋の音響特性を測定、最適な補正を行うオーディオキャリブレーション機能も全モデルで搭載する。

 ネット動画への対応もぬかりはない。プライムビデオやネットフリックスはもちろん、U-NEXTやNHK+など12個のダイレクトボタンをリモコンに装備した。同社によると、近年テレビ離れが喧伝されているが、視聴ソースはテレビ放送からネット動画などに変わっているだけで、家庭でのテレビ視聴時間はさほど変わっていないという。レグザではネット動画もモアチャンネルとして捉え、利便性に配慮しているわけだ。なお今回からネット動画コンテンツに「バンダイチャンネル」が追加され、往年のアニメ作品なども手軽に視聴できるようになった。

「番組こねくと」のイメージ。視聴中のコンテンツに関連した番組が放送、ネット動画をまたいで紹介されるというものだ。写真の白枠で囲まれている部分でソースの種類を切り替え可能

 とはいえ放送の中にもユーザーが見たいコンテンツはあるわけで、好みのジャンルやアーティスト名を登録するだけで自動的に録画してくれる「おまかせ録画」機能も3モデルとも搭載した。Z870Nシリーズは、「タイムシフトマシン」機能も備えている(両機能とも外付けUSB HDDが必要)。

 新たな便利機能の「番組こねくと」も要チェックだ。これは放送とネットを横断してユーザーがきになる番組を表示してくれるもので、例えば途中から見始めたドラマにはまってしまい、見逃し配信でさかのぼって確認したいと言った場合に、同じ画面上にどのサービスで配信されているかを表示してくれる(現在はふたつの動画サービスに対応)。これも、放送とネットをシームレスに楽しめる新提案として注目したい。

 ゲームコンテンツを再生している場合に活用できる「ゲーミングメニュー」も進化した。ポップアップメニューに現在のフレームレートやHDR、VRRのモードが表示され、さらに画質の微調整もここからダイレクトに行える。加えて画面上の起点を示す「照準表示機能」も新搭載されている。これにより規準点が常に認識できるので、ゲーム酔いなどを避けられるそうだ。照準の形や色も好みに応じて選択可能。

「ゲーミングメニュー」の左側には、現在表示しているソースのフレームレートやHDR、VRRなどの詳細情報が表示される

 液晶テレビのZ870N(55Z870Nは除く)とZ670Nシリーズについては、144Hz対応のフレームレートも再生可能。対戦型ゲームなどで求められる低遅延とスムーズな表示を可能にした。

 もうひとつ、付属リモコンがBluetooth対応(赤外線との切替え式)となり、ペアリングしておくことで本体側に向けなくても操作できるようになった。さらにネット動画ダイレクトボタンやチャンネルアップダウンボタンなどを押すだけで電源がオンになるといった簡便操作にも対応している。

 X8900NとZ670N(75Z670Nは除く)シリーズの付属スタンドは、取り付け時に2段階から高さを選べるようになっている。本体との間の取り付けな金具の向きを変えるだけで5cmほど本体を高く設置できるので、サウンドバーを組み合わせたい場合などに有用だろう。なお今回の3シリーズは75インチモデルを除いてすべて回転式スタンドが付属しており、15度の範囲で向きの調整も可能だ。

X8900NとZ670N(75Z670Nは除く)シリーズの付属スタンド。スタンドと本体の間に挟むパネルの向きを変えることで、テレビの高さを数センチ上げることができる。左がハイポジションで、右がローポジション