Bowers & Wilkinsから、スピーカーシステムの現行「700 S3シリーズ」の中の、「702 S3」、「705 S3」、「HTM71 S3」の3モデルに対して、サウンドクオリティとデザインに大幅なアップグレードを加えた特別バージョン「Signature」シリーズが追加される。3月29日発売。ラインナップと価格は下記の通り。

「702 S3 Signature」 ¥1,438,800(ペア、税込)
「705 S3 Signature」 ¥719,400(ペア、税込)
「HTM71 S3 Signature」 ¥519,200(1台、税込)

705 S3 Signature用スピーカースタンド
「FS-700 S3」 ¥125,400(ペア、税込) ※現行「705 S3」用と共通

 700のSignatureシリーズというと、2020年に登場したS2に対するモデルが思い出されるが、それはクロスオーバーの変更と外装違いが主な変更点となっていたのに対し、今回は内部パーツにまで手が入っており、音質面でのアップデートもされているのが特徴となる。加えて、Signatureの初代モデル(1991年/創業25周年モデル)にまで遡る伝統を基盤として開発されているのも、注目点だ。さらに、今回はセンタースピーカーもラインナップされており、新Signatureシリーズでのサラウンドシステムの構築も可能になっている。

 もちろん外装についても特別塗装が施されており、深い光沢を感じられるミッドナイトブルー・メタリック、あるいはダトク・グロスの突板仕上げの2種類から選べるようになっている。

 さて、702 S3 Signatureから紹介していくと、702 S3をベースに各所にアップデートが施されたモデルとなり、第一の特徴としては、天面に独立して搭載されているトゥイーターが変更された。見た目の区別は難しいが、そのグリルメッシュには、昨年発売の「800 Series Signature」用に新開発されたものが採用されている。これはかなり効果が大きく、開口率がアップしたことと合わせ、音場感の再現の拡大に大きく寄与しているのが分かった。

写真は705のものだが、トゥイーターグリルの形状が変わっているのが分かる。左がSignatureモデル

 ミッドレンジ・ドライブユニットは、既に高い評価を獲得しているバイオミメティック・サスペンションを搭載しており、ドライブユニットの背後にあるサスペンション(ダンパー)から発せられる不要なサウンドによるカラレーションの低減に大きく寄与している。ここは702 S3同様。

 ウーファーについては、165mmのAerofoilプロファイル・バス・ドライバーを3基搭載しているが、低音域の明瞭度を向上させる、アップグレードされたサスペンションが新採用されている。

左が新型のダンパー。含侵される成分の変更でしなやかになっている。右とは色が違うが、これ(右)は経年変化によるもの

 加えて、これまでのSignatureモデルと同様に、クロスオーバー・ネットワークには入念なアップグレードが施されており、ムンドルフの高音質コンデンサーや800シリーズに匹敵するクォリティのインダクター(空芯コイル)の採用、バイパス・コンデンサーのレイアウトの見直しなど、透明性のさらなる向上を目指した仕様変更(改良)が行なわれている。

新クロスオーバーネットワーク

右が今回のSignature用

 さらにさらに、スピーカーへの信号の流れをよりクリーンなものにするため、スピーカーターミナルには、高品質の真鍮コアを採用した新型が搭載されている。

 2ウェイのブックシェルフタイプの705 S3 Signatureは、702 S3 Signature同様に、新トゥイーター・グリルメッシュの採用、アップグレードされたクロスオーバー・ネットワーク(新しいコンデンサーとインダクターの採用、およびバイパス・コンデンサーのレイアウト変更)の搭載、165mmミッド/バス・ドライブユニット用の新しいサスペンションの搭載、新スピーカーターミナルの採用、といったフィーチャーを備える。

 今回ラインナップされたセンター用のHTM71 S3 Signatureにおいても、702/705同様の、トゥイーター・オン・トップ・アセンブリを搭載。サラウンドシステムを構築した際の高いサウンドマッチングを実現している。

 その他、ミッドレンジ・ドライブユニットには、デカップリングとバイオミメティック・サスペンションを、クロスオーバー・ネットワークとスピーカーターミナルの両方においても、同様のアップグレードが施されている。

 短い時間ながら、702 S3 Signatureと705 S3 Signatureについて試聴できたので、そのインプレションを簡潔に紹介する。トゥイーターの新グリルメッシュの効果は大きく、音場が上方向へ拡大するのが如実に感じられるサウンドに変貌していた。もちろん、左右方向の音場も広くなっているし、一音一音の分離感も向上していて、細かい音もよく聴こえるようになった。左右スピーカー間の音の密度感(情報量)の再現性も格段にアップしていた。

 価格は、ベースモデルに対して25%ほどのアップとなるが、音質にはそれ以上の効果をもたらしているようだ。通期モデルとしてラインナップされることもあり、これから購入を検討しているユーザーにとっては、悩ましい選択になりそうだ。

 なお、今回のSignatureモデルについては、Bowers & Wilkinsのポートフォリオにおけるその格式を明確に示すため、リアパネルにはSignatureロゴプレートが取り付けられている。

リアパネルには「Signature」と表記されている。スピーカーターミナルの心棒の材質が変更されている

 ちなみに、冒頭にも記したミッドナイトブルー・メタリック塗装は、Bowers & Wilkinsの象徴であるオリジナルNautilusに由来するものだそうで、800 Series Signatureと同じ仕上げとなっているそうだ。

 加えて、新しい700 S3 Signatureモデルは、ドライブユニットとトゥイーター・ハウジングに鮮やかなゴールドのトリムベゼルがあしらわれているのも、特別(Signature)モデルであることを体現している。

702 S3 Signatureの主な仕様
型式:3ウェイ・バスレフ型
使用ドライバー:25mmデカップリング・カーボンドーム・トゥイーター×1、150mmコンティニュアム・コーンFSTミッドレンジ×1、165mmエアロフォイル・プロファイル・バス×3
周波数レンジ:28Hz~33kHz(-6dB)
周波数レスポンス(基準値に対し+/-3dB):46Hz~28kHz(±3dB)
感度:90dB/2.83V/m
高調波歪率:2次および3次高調波(90dB、軸上 1m)1%未満(86Hz~28kHz)、0.5%未満(110Hz~20kHz)
公称インピーダンス:8Ω(最小3.1Ω)
推奨アンプ出力:30W~300W(8Ω、クリップしていない音源で)
最大推奨ケーブルインピーダンス:0.1Ω
寸法:H1,010mm×W192mm×D354mm(キャビネットのみ)
質量:35.3kg
仕上げ:【キャビネット】ダトク・グロス、ミッドナイトブルー・メタリック、【グリル】ブラック