キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノン)は2月13日、都内で会見を開き、同社の社内で起業した「ichikara Lab」がコンセプトを企画、昨年末、クラウドファンディングサイト・Makuakeにて先行販売し、見事目標を達成した装着型減音デバイス「Privacy Talk」を、4月下旬より一般発売すると発表した。価格はオープンで、同社直販サイト価格は¥23,650(税込)。

 Privacy Talkは、写真を見て分かる通り、マスク型のデバイスで、内部にイヤホン・マイク・ファンを搭載した製品(バッテリーも内蔵する)。コロナ禍を経て、働き方が多様化し、オンラインコミュニケーションが増加した現在の状況に合わせ、社内だけでなく、屋外・公共施設などでオンライン会議(リモート会議)を行なう際に、自分の話声を周囲に漏らしたくない、機密情報を周囲に聞かれないようにしたい、周囲の雑音を低減したい、そもそもオンライン会議をするために会議室を使用するのが面倒……などのニーズに応えるべく開発された製品となる。

マウスパッド内の上と下にある円形のスリットは、空気循環用のもの。上のスリットの下にあるのが音声取得用のマイク

 製品としては、ファブリックのマスクの内部(下)に、マウスパッド(シリコン製のマスク)があり、そこに通話用のマイク、換気用のファン、BTチップ、バッテリーなどが内蔵されている。マウスパッドの内部にマイクが設置されていて、小さな声でも通話相手に充分に声が伝わるようになっているし、マウスパッドの外に声が漏れにくくなっているので(-20dBの減衰とか)、周囲の人に会話を聞かれにくくなっている、ということになる。完全ワイヤレスイヤホンのようなノイキャン機能はないが、マウスパッド内にファンの騒音を拾うマイクがあり、その騒音を低減してくれる仕組みとなっている。加えて、マウスパッドの正面内部には、外からの騒音を低減する仕組み=AMG社の減音技術「音声メタマテリアル」を適用した迷路型の構造を採用しているそうだ。

マウスパッド前面に、この迷路構造を取り入れることで、会話用のマイクに入り込む周囲の騒音を減衰させているそうだ

 使い方としては、USB Type-Cケーブルを持つので、パソコン(Win/Mac)との有線接続、Bluetoothでの無線接続(サポートコーデックは、SBC、aptX、aptX HD。AACは不明)の2ウェイの使い方が可能。バッテリーの持続時間は約3時間。充電時間は約1.5時間という。

 会見ではデモも行なわれていたが、デバイスのあり・なしで、発話の聞こえ方がかなり変わる(装着すると、ほとんど声が聞こえてこない)のが体験できた。

 なお、製品としては昨年7月にコンセプトモデルを発表、同年10月にクラウドファンディングサイト・Makuakeで先行販売開始。プロジェクト締めの11月29日までの結果としては、金額は約1,100万円を達成、購入者(サポーター)は468名。プロジェクトではB to Cだったが、企業からの要望(購入)もあり、最終的に目標としていた500台の販売目標をほぼクリアした(490台とか)、ということだ。

 さて、会の後半では、なぜクラウドファンディングサイトを使ったのか、その結果どのような有用性があったのか、などについて、Makuakeの共同創業者・木内氏と、ichikara Labの吉武室長の二人が登壇してのトークショーも行なわれた。

 概要を簡潔に記すと、量産前の製品をユーザーに届けることができる、Makuake側の用語では「0次流通」を通すことで、メーカーとしてはテストマーケティングができる、売り上げの早期獲得ができる、製品の認知拡大ができるなど、ユーザーとしては新しい商品に出会える楽しさがある、などのメリットが語られていた。結果としてメーカーでは、自社の強みを生かした製品、未開拓のマーケットの調査ができるといったメリットを享受できることに加え、Makuakeでは月に500件ほどの新規プロジェクトを担当しているそうで、そうしたデータを元にした新商品開発・創出への支援が受けられるという、相乗効果を生み出す利点についても語られていた。

持ち運び用のポーチも同梱される