体験型ゲーム「マーダーミステリー」をベースにしたドラマ「マーダー★ミステリー 探偵・班目瑞男の事件簿」が、テレビシリーズを経ていよいよ劇場版としてスクリーンに登場する。俳優陣に与えられているのは、キャラクター設定と行動指示のみで、シーンにおけるセリフはほぼアドリブという、出演者にとっても、観客にとっても先の読めない展開に、ドキドキ・ワクワクさせられること間違いなしの注目の作品。ここでは、展開のキーパーソンともなる七尾優子を演じた北原里英に話を聞いた。

――よろしくお願いします。まずは、出演が決まった時の感想をお願いします。
 実は、「マーダーミステリー」自体は、プライベートではやったことはなかったのですが、コロナ禍のオンライン演劇や、テレビ番組で何回か経験させていただいていたので、(出演が決まって)縁を感じるなぁと思いました。遂に劇場版まで製作されましたので、もっともっといろいろなメディアに展開されていくんじゃないかって感じています。

――全編アドリブというのはいかがでしたか?
 (マーダーミステリーを)やったことがあるという面では、経験者の余裕みたいなものは感じましたけど、今回は映画になるわけですから、作品の完成度は私たち(出演者)に委ねられている。つまり、きちんと楽しんでもらえるものにできるのかというプレッシャーはありました。ただ、キャストには、本当に個性的で、実力を備えた方々が揃っていたので、そこはある意味安心して、お任せして、私は乗っからせていただいたところはあります。

――アドリブというと、キス我慢選手権を思い出しました。
 そうそう、私、大好きなんですよ。今回、(劇団)ひとりさんと一緒にアドリブができるなんてもう、ファン冥利に尽きます。

――拝見していて、結構、笑いを堪えているのかなぁと感じるところもありました。
 やはり、笑いそうになっちゃいますよ。でも、笑ってはいけない状況ですから、現場では、笑いを堪えるのが大変でした。面白い瞬間もたくさんありましたけど、完成した本編を観た感想としては、結構コメディ味を抑えて、かなり本格的ミステリー作品になっていると感じましたので、ミステリーファンの方にも満足していただける映画ができたのではないかと思っています。

――撮影では、誰かが失敗(NG)したりして、カットがかかることはなかったのですか?
 台本がないので、まず、失敗した! がないんです。(撮影)スタッフさんも何も言わないし、本当にそのまま流れていくんです。こうしないといけないがないので、逆に言えば、何をしても正解なんです。NGになりそうな雰囲気があったとしても、やはりそれこそがアドリブ劇の面白さだと思いますし、役者さんたちの新しい顔が見られる映画になっていると思いました。私自身も、素を出さないように、お芝居との絶妙なバランスをずっと保つように頑張りました。

――撮影は、どのように進んでいったのでしょう?
 私たちの撮影は2日間で、初日は事件後からの完全にアドリブパート(話し合い)から始まって、解決、アフタートークまで。2日目に、その手前の芝居パートとか、回想シーン、密談シーンなどを撮りました。

――順番が逆なんですね。
 そうなんです。アドリブパートに挟まれる芝居(回想・密談)部分は、後(2日目)に撮っているので、(初日の)現場では、スタッフさんがなるべくキャスト同士を合わせないように必死でした。というか接触禁止でした。だから、スタッフさんたちもかなり緊張していたと思います。どこかで誰かが何か(証拠品など)を見てしまったり、聞いてしまったら、アドリブが成り立たなくなってしまいますから。

――ところで、結末は知らされているのですか?
 いえ、あれもアドリブです。というか、全部アドリブです。最後のシーンも、これ本当にアドリブ? 台本ないの! って思うぐらい凄かったです。もう、皆さん大尊敬しました!! しかも、一応の結末を迎えた後も、全然カットがかからなくて! いつ、どこで、どう終わらせるの? って、全員で大落ちを作るのに必死でした。

――アフタートークはそのまま撮影?
 そうです。マーダーミステリーって、やはりアフタートークまでが作品だと思うので、エンドロールでの(アフター)トークも楽しんでほしいです。皆さん言いたいことがあるから、結構、長い時間話していましたけど、時間の都合上、かなり短めになっていたので、今後、ソフトが出る際には、アフタートークを全編収録して欲しいです。そして、(ソフトを)買われた方には、最後まで見ていただきたいです。

――元々アドリブは得意なんでしたっけ?
 苦手意識はありませんけど、得意かと聞かれたら、得意ではないですね。

――以前、『としまえん』で取材させていただいた時、受けの芝居を大事にしてと話されていましたけど、今回は受けているだけでなく、素早く反応しないと、どんどん犯人扱いされてしまいます。
 そうなんですよ。すぐに、反論しないといけないので、現場ではもう、一所懸命喋っていました。それに、自分が話題の中心に上がると、本当に心臓がバクバクしてきて、頭も回らなくなってくるんです。そんな状態なのに、台本がないので、自分でセリフを作らなくてはいけませんから、なかなかうまい反論が出てこない……。もう、自分は下手くそだと思いながら必死にやっていました。

 普段は、先が分かっていて、その展開の準備をしながらお芝居をしていますけど、今回は、そもそも次に何が飛び出るか分からない中でお芝居をしていましたから、ある意味、リアルな反応になっていたと思います。

 完成した映像を見た時には、すごくリアルというか、今までの自分の芝居では見たことがない表情をしていたし、新しい発見もあったので、今後の芝居に活かせそうな気がして、とてもいい勉強になりました。

――すると、アドリブパート撮影の時には、そもそも誰がどんな証拠を持っているのかも知らなかった。
 はい。アドリブ部分にはいくつかパートがあって、パートの撮影が終わると、待機場所として、キャスト一人に車が一台割り当てられていて、他のキャストさんと絶対会わないようになっているんです。そこで、あなたが見つけた証拠品はコレですと渡されて、次のパートの撮影に向かうんです。

 二日目の芝居パートの撮影も、こちらに来てくださいと呼ばれて行くと、いきなり●●●な状況になっていて……。本当にびっくりの連続でしたし、しかも、その状態で芝居をしないといけないわけですから……。あとで聞くと、●●●になっていたご本人も、その状況を知らされないで連れてこられたと仰ってました(笑)。

――少し、話を戻しますが、演じられた七尾優子について教えてください。
 プロフィールとしては、劇中の自己紹介でも話している程度で、鬼灯村の出身ではなく外部の人間で、元看護師で、色々と嫌なことがあってこの村に移住してきた。そして文音さん演じる一乗寺初乃の友達です。ただ、そもそも一乗寺家とも、他の人ともほとんど交流がないのに、ここ(一乗寺家)に呼ばれているのは理由が薄くて、逆に怪しいですよね。

――事件後の初の集まりでは、まず自己紹介から始まりました。それは決まっていた?
 そこは、観て下さる人に、ある程度の人物像を知っていただかないといけませんから、自己紹介を最初にするという流れは、何となく決まっていたと思います。ただ、話す順番とか、どこまで自分のことを話すのかについては、自分次第でした。

――他の人のプロフィール(バックボーン)は、聞いていない(知らない)。
 はい。でも、自分がその人のことをどう思っているのかについては、聞いています。

――秘密の設定みたいなものはありますか?
 少しはあります。

――劇中では、話を転換するネタがありましたが、それを出すタイミングは?
 それは自分で決めています。けど、出さなすぎても(話が)進まないので、よきところでという感じですね。ただ、今だと思って出しても、逆に返り討ちにあってしまうこともありました。

――少しネタバレしますが、自己紹介のあとは、劇団ひとりさんが集中砲火を浴びていました。
 そうですよね、まず、ここにいるのがおかしいだろうっていう人ですから。そういう時は、それ(責める方)に乗っかった方が楽というか、まずは誰かを責めないと、マーダーミステリーが始まりませんから。でも、思ったよりも、(自分が)窮地に陥ることが多かったように思います……。

――結構、乗り越えているように見えました。
 あっ、本当ですか? よかったです。

――その話し合いも、後半になるにつれて、皆さん口数が多くなっていきました。
 やはり、慣れてきますから、そうなりますよね。最初の話し合いではもう、誰から行く? どうやって行く? みたいな感じで、お互いに探り合っている雰囲気もありましたけど、それが段々と強気で責めるようになってからは、どんどん面白くなっていく感じはありました。

――話が二転三転四転して(笑)、観ているこちらも、どういう結末になるんだろうと思いました。
 出ている方も結末は知りませんから(笑)。なので、ラストでのあの展開は、私もビックリしましたし、これは観て下さる方も、絶対にビックリすると思います。加えて、終盤に近づくにつれて、いろいろな秘密が解除されていきますから、観てくださる人も、私たちと一緒に推理して欲しいです。

――八嶋智人さんも、劇団ひとりさんも凄かったのですが、高橋克典さんはズバ抜けていました。
 いや~凄かったですよ、もう。独白にすごく引き込まれて聞き入っていましたけど、ふと我に返ると、えっ! これ本当に台本ないの? って疑いましたから。他の人は台本(セリフ)が用意されているんじゃないの? って思うぐらい素晴らしかったです。

――でも、高橋さんはアドリブが大の苦手と仰っていました。
 ご本人は本当に苦手らしくて、撮影に入る前に一度、テストプレイがあったのですが、“俺はアドリブは嫌いだ”ってずっと仰っていました。それにしては、本編ではだいぶかましていましたよね。まったく、(アドリブが)嫌いな人に見えなかったです。本当に、プロの技をたくさん見せていただきましたし、全編にもそれがみなぎる映画になっていると思います。

 そして最後の最後、すべての謎が明らかになってからもう一度観ていただくと、もう一度楽しめると思います。それが、マーダーミステリーの楽しみ方ですし、絶対に、納得感が深まるはずです。

――少し話を戻しますが、結末を迎えて、カットがかかった時の心境は?
 いやもう本当に、“遅いよ!”っていう感じでしたけど、同時に、思考の経緯を話したくて話したくて――あそこではこうだったんだよ、ああいう風に考えていたんだよって――しようがなかったです。先ほどもお話しましたけど、最後の最後の展開も、本当にアドリブとは思えないものでしたから!

――ご自身で、完成した映像を観ていかがでしたか。
 現場では、みんなが必死に笑いを堪らえていることも多かったので、もっとコメディ寄りに仕上がっているのかなと思っていましたけど、きちんとミステリー作になっていたので、嬉しかったです。なので、可能であれば、面白バージョンのディレクターズカットも見てみたいと思いました。

 あとは、今後また、マーダーミステリーをやる機会があったとしたら、次はやっぱり仕掛ける側の人間になって――自分が犯人でも、犯人じゃなくても――仕掛けてみたいと思います。

映画『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』

2024年2月16日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー

<ストーリー>
嘘と秘密が渦巻く……閉ざされた村の長い一夜。
劇場版の舞台は『一夜のうちに3人の生贄の血を滴らせると死者が蘇生する』という不気味な伝承が残る鬼灯村(ほおずきむら)。
その伝承をもとに「三つ首祭り」という奇妙な鬼祭が行われていた夜、村の長を務める一乗寺家当主の遺体が発見される。
しかし、その日、村へと続く一本道で土砂崩れが発生、警察が到着する迄にはかなりの時間を要する。
当時、屋敷にいたのは8人。それぞれ人には言えない秘密を抱えており、全員が殺害の動機をもっていた。
事件の真相に迫るべく、登場人物を演じるキャストによるアドリブ推理が予測不能な結末へと導かれていく!

【出演】
劇団ひとり 剛力彩芽
木村了 犬飼貴丈 文音 北原里英 松村沙友理 堀田眞三 / 八嶋智人 高橋克典

【スタッフ】
監督:光岡麦(ドラマシリーズ総合演出) シナリオ構成:渡邊仁 配給:アイエス・フィールド 配給協力:ショウゲート
2024年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/103分
(C)2024 劇場版「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ

劇場版「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血」劇場予告編(2024年2月16日公開)

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北原里英SNS
https://twitter.com/Rie_Kitahara3

スタイリスト:山田梨乃
ヘアメイク:熊谷美奈子
衣装:ブラウス/スカート musubore・ブーツ AIC.
  《問い合わせ先》株式会社 アンティローザ https://auntierosa.com