何度も「へえー」と心の声をあげながら見た。

 コロナ禍真っ只中の2021年初頭に、アメリカの金融マーケットで実際に発生した”ゲームストップ株騒動”(ゲームソフトの小売り企業である同社の株を集中的に買い、空売りしていたヘッジファンドに損害を与えた)を脚色した映画であるという。主役はアメリカの、主に地方都市に住む若手の投資家たちだ。彼らが、遠くニューヨーク・マンハッタンにあるウォール街を跋扈するエリートたちに一矢を報いる、そんな気持ちよさがある。

 SNSを駆使しながら、その場所にいながらにして、投資していく。その姿はまるで呼吸するかのようにナチュラルだが、いっぽうで、興じているスポーツが勢いづいたときに生き生きした表情を見せる。口をついて出る単語の数々は、教科書に載っているものなどよりもずっと、おそらく現在の「生きている英語」であろう。私は投資をしたこともないし経済界のこともよくわからない。が、劇中の彼らは疑いなく投資に夢中になっているし、ウォール街の連中と(ヴァーチャルとはいえ)戦っている気なのだ。その「精気」は多くの人々にアピールするだろうし、カーディ・B feat.メーガン・ザ・スタリオンの大ヒット曲「WAP」など、挿入楽曲にもオヤッと思わせる新鮮さがある。

 主人公と言える“ローリング・キティ”ことキース・ギルにはポール・ダノが扮し、ほかピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタンなど、さまざまなルーツを持つ役者が顔を揃えているのも、いかにも移民の国・アメリカである。監督はクレイグ・ギレスピー。

映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

2月2日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

監督:クレイグ・ギレスピー 原作:ベン・メズリック 脚本:ローレン・シューカー・ブラム&レベッカ・アンジェロ

出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタン、シャイリーン・ウッドリー and セス・ローゲン

2023/アメリカ/英語/105分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/スコープ/原題:DUMB MONEY/字幕翻訳:橋本裕充
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ